EVENT REPORT

成長の先にユートピアはあるか?未来の社会と生き方・働き方を考える

皆さんはキャリア設計をするなかで、前提として知っておくべき社会動向や、「働く」より上段にある「生き方」「幸せ」について腰を据えて考えられているでしょうか?新卒就活という人生における大事な意思決定のタイミングだからこそ、広い視野で物事を見て、自分にとっての最適な選択肢を考えぬいてほしい──。そんな想いから開催されたキャリアセッションのレポートをお送りします。就活バズワードともいえる「成長」を切り口に、考えを深めていきましょう。

SPONSORED BY 株式会社ネットプロテクションズ

話し手

赤木 俊介

赤木 俊介

株式会社ネットプロテクションズ atoneグループ兼採用リーダー

河西 遼

河西 遼

株式会社ネットプロテクションズ ビジネスアーキテクトグループ

佐野 雄図

佐野 雄図

スローガン株式会社 COO室

SECTION 1/7

「成長したい」って本当ですか?

「成長」は企業説明会や自己PRなどあらゆる場で使われており、就活生にとってはお馴染みのフレーズでしょう。一方でふと立ち止まってみると、成長したくないわけではないものの、「皆が一様に成長を語ること」や、「成長したいと言わなければ評価されないような雰囲気」に違和感を覚えたことはありませんか?

今回はそんなモヤモヤを出発点にしたキャリアセッションの様子をお届けします。お話を伺ったのは「つぎのアタリマエをつくる」をミッションに掲げる株式会社ネットプロテクションズの採用担当と、Goodfindを運営するスローガン株式会社でキャリア教育事業を手掛ける事業責任者です。

皆さんが就職するであろう少し先の未来の社会についてイメージを膨らませながら、成長を追い求めた先に理想の社会はあるのか?持続可能な成長と経済成長は両立するのか?そこにおける個人の成長の在るべき姿とは?といった問いについて、登壇者独自の視点から議論をしていただきました。

左:ネットプロテクションズ 河西氏、中央:ネットプロテクションズ 赤木氏、右:スローガン 佐野

赤木 俊介 (あかぎ しゅんすけ)氏

ネットプロテクションズ atoneグループ兼採用リーダー

2013年新卒入社。サービス設計や、新規事業の立ち上げ、オフィス移転の責任者など幅広い領域を経験した後、現在は採用責任者を務める。社内のSDGs・ESGに関するプロジェクトにも積極的に携わっている。思考を抽象化させて様々な領域のものを繋ぎながら哲学的なことを考えるのが好き。

河西 遼 (かさい りょう)氏

ネットプロテクションズ ビジネスアーキテクトグループ

2013年新卒入社。入社後の3年で新規事業の立ち上げ責任者を務めたあと人事に異動。人事企画に3年携わった後、ビジネスアーキテクトグループに移り、開発・組織作り・プロダクトマネジメントなどに従事する。「人の感情のメカニズムや、最大幸福のための社会設計」について日々考えを巡らせている。

佐野 雄図(さの ゆうと)

スローガン COO室

「自分らしく必死に生きる人を支援したい」という価値観のもと、2018年にスローガンに新卒入社。1年目から部門責任者を複数経験する傍ら、Goodfindのセミナー講師も務める。現在は第二新卒及びキャリア教育事業の責任者として新規事業を立ち上げ中。学生時代は理学専攻で、人工細胞の研究をしていた。

SECTION 2/7

テクノロジーが人の生活を変えていく。その先にユートピアはある?

──まずは少し先の未来の社会の解像度をあげていきましょう。これからの社会動向をどのように捉えているのかを教えてください。

河西:テクノロジーの進化に伴う社会発展が今後も劇的なスピードで続いていくと思います。これまでのIT技術の活用は仮想世界における情報処理が大半を占めていました。しかし今後はAI、IoT、ロボティクス、ブロックチェーン、ビッグデータといったあらゆる先端技術の組み合せで人の仕事が置き換わるなど、テクノロジーが現実世界に及ぼす影響が大きくなっていくでしょう。

また、技術の発展により物質的なニーズが満たされてきたことで、人々の関心事は感情価値に移り変わってきました。更に、物質価値や感情価値といった個人の便益からスコープが広がり、社会全体としての持続性にも目が向けられるようになっています。このような人の価値基準のシフトが社会変化と共に加速していくのではないでしょうか。

佐野:河西さんの言うような価値基準のシフトによって、個人の行動も、単に資本を追い求めることから、自分自身の幸せを再定義し、やりがいを追い求める流れに変わっていきそうですよね。

オムロンの創業者が提唱した未来予測理論である『SINIC(サイニック)理論』でも、現代は物質的な豊かさが重視されてきたところから、心の豊かさが価値になる社会へとパラダイムシフトが起きている最中だと言われています。

赤木:技術発展によって生産性が上がり、限界費用が下がっていくと言われていますよね。生活に必要なコストが減っていき、ベーシックインカムといった制度の具体的な検討が進めば、働かなくても良いという未来が訪れるのかもしれません。

そこで私が問題提起したいのは、もし働かなくても生活できるようになってしまうと、その生活を幸福として満足してしまう人と、幸福を最大化しようとする人の間に格差が広がるのではないかということです。

ある種、社会によって満足度がコントロールされ、今以上頑張りたくない人が増えるシナリオがあり得るとすると、果たしてそれは良い社会なのでしょうか?そう考えた時に、どのようなプロセスを踏めばディストピアにならずに済むのでしょうか?

SECTION 3/7

変わる幸せ。変わらない幸せ。選べる幸せ。

──赤木さんから社会設計の在り方について問題提起をいただきましたが、皆さんはどうお考えですか?

佐野:人間は本能的に「なにも考えずにご飯が食べられて、お金が入れば幸せである」という状態を望んでいないので、心配する必要はないと考えています。例えば私が専攻していた理学の世界でも、雑談がてら「人間全員に幸せホルモンを注入すれば幸福になれるのか」といった議論がなされることがあるのですが、それが幸せな状態であるとは一般の感覚では思わないですよね。

SFや漫画の世界でもそうした風景がディストピアな世界観として描かれているのは、そもそも人間が変化し続けることや動的な何かによって幸せを定義している、ということの証明だと思うのです。

赤木:佐野さんのおっしゃることには賛同するものの、「自分は変わり続けたい」と、全員が本質に立ち返ることができるのかどうかはすごく疑問です。確かに、人間は本来的に変化への欲求を持っていると思います。人間を含めた生物の細胞は常に入れ替わっており、生まれた瞬間から壊れることに向かうのが自然の摂理です。しかし人間が築いてきたシステムは劣化しません。

一度享受してしまったシステマティックな恩恵を人間は捨てられるのでしょうか。捨てることが出来る人と出来ない人の間で格差や搾取の仕組みが生まれる可能性を危惧してしまいますね。そこに社会全体で抗うにはどういう仕組みがあり得るのか、まだ答えが出ないポイントですが、考え続けたいと思っています。

河西:私はシンプルに、個人が自由に選択できる状態がユートピアであり、社会発展が誰かにとっての自由を疎外するのであれば、その社会はディストピアに近づくと考えています。

佐野さんの幸せホルモンの例を借りると、「注入することで人類みんなが幸せになる」という考え方もあると思いますが、打つか打たないかの選択は個人に委ねられていて、且つその選択は外から与えられるものではなく、自由意志によって選べる状態にあることが重要です。自由意志による個人の選択を広げられるよう、テクノロジーが活用されていくことが望ましいですよね。

SECTION 4/7

持続可能性と社会の発展はどう両立するのか?

──人類みんなの幸せ、というとSDGsが最近注目されていますよね。人類全体や地球全体の幸福という範囲に目線を広げると、必要な社会設計は変わってくるのでしょうか。

河西:SDGsの登場によって世の中の価値基準が多様化した事実から言えることは、経済成長が人の幸福と完全に相関しているわけではないということです。

これまでの社会では、GDPは一つの社会発展のKPIとして合意され、指標として機能していました。しかし社会が一定の発展レベルを超えた時、その合意基準がよりメタレベルにあがって、人の物質的な幸福を満たす段階から、「人類全体や地球のために。100年後の未来のために。」という段階にまで目が向けられているのが現状だと考えています。

ただ、それは社会発展のKPIが一つ増えただけです。社会の進行方向に対して個人が自分の欲求をどうバランスさせるかの戦略は人によって違いますし、どんな価値観に自我を乗せたいかということに当然自由があっていいと思います。

ドイツのユクスキュルという哲学者が提唱した『環世界』の考え方に基づくと、全ての生物は自分の意識や自我の範囲内でしか全ての世界を認識できません。皆が同じ世界を見えているようにみえて、見ている世界が同じかどうか分からない中で、重要なのはあくまで1人ひとりの自我や意識が最大限尊重される社会であると思いますね。

赤木:私はそもそも持続可能性を意識することすらなく、個々人が人類全体や地球全体としてのバランスを保つための行動ができるような状態が理想だなと思います。

ここで生物学者の福岡伸一氏の動的平衡に関するある実験についてお話ししたいと思います。チーズの原子にマーカーを付けて、それをネズミに食べさせます。その後ネズミの体内を調べると、元々ネズミの体内にあった原子が抜け落ちて、チーズだった原子が皮膚や脳やしっぽなどネズミの身体全体に散らばっていることが分かりました。

この話を聞いて、私は「遡っていくとチーズを構成するものが、もともとは土や雨だったかもしれない。生物も無生物も分子レベルでみると切り分けて考える必要がないかもしれない」と思うようになりました。例えばよく言われるLGBTQの問題も、細かく切り分けるのではなく「性差」という大きな括りとして受け取ってしまえば、許容できる範囲が広がるのではないでしょうか。

このように考え方を変えていけば、社会の全員が地球全体と自分をバランスさせた行動をしていくようになると思います。それを実現するには意識改革を進めるための戦略と、意識変革についていけない人たちを受け入れられるような度量や社会システムが必要になるでしょう。

SECTION 5/7

成長ではなく「成熟」が未来を担う人材のキーワード

──未来の社会について話を広げてきましたが、そろそろ個人の生き方やキャリアの話も気になるところです。こうした社会において、個人の在るべき姿をどのようにお考えですか?

赤木:キャリアではよく「成長」という言葉が使われますが、私は「成熟」を目指すことがこれからの時代に適していると考えています。発達心理学の分野でよく言われますが、人間は生まれた瞬間には世界と自分の境界線がありません。赤ちゃんは一番最初に自分の手を見ることで、自分という存在を世界と分離させます。そこから徐々に言葉を覚えていき、世界を正しく切り分けた先に大人になっていきます。

分かるの語源は「分けることができる」であるように、理解することは区別するということです。科学的な「分ける」を追求していくと、『超ひも理論』においては、世の中は9次元まで区別することができるそうです。しかし、さすがにそこまで分けると、4次元までしか理解できない私には逆に分からない世界です(笑)

そこで無限に切り分けていくのではなく、どこかのタイミングで、「分けることはできるけど、分けずに、融合する」という選択肢を自分でとることが人間としての成熟・進化だと思います。

私がこう考えるようになったのは、作家の平野啓一郎氏が提唱する『分人主義』という考え方に出会ったからです。平野氏曰く、自分の人格は本当の自分という一つの存在なのではなく、多層的に構成されています。多層的な自分を認めて、複数の異なるコミュニティとうまく調和しながら、自分自身をなにかひとつに共依存し過ぎない環境をつくることが、今後の個人の幸せの在り方だと思います。

佐野:私はこれからの社会で活躍するのは、共創型リーダーシップをもった人材であると考えています。人間はこれまでの文明活動の中であらゆる課題解決をして、今の豊かな生活を手に入れました。世界をみるとまだ課題は山積していますが、一つ言えることは、人類が今後解くべき課題はより複雑化したものであるということです。

複雑な課題解決には、多様な強みをもった人材がオーケストラのように協調して価値を発揮する必要があります。求められるのはその指揮者として、多様なステークホルダーを巻き込みプロジェクトを動かしていけるような人材です。

そして、多様な人を動かすためには、まず自らが自律し、内面的に成熟していることが不可欠です。赤木さんの仰る「成熟さ」は個人の幸せの点だけでなく、社会に求められる人物像という点でも重要だと思いますね。

SECTION 6/7

自分を知り、社会を知り、考え続ける

──読者の就活生がキャリア設計をしていくために、重要なことは何でしょう?

河西:個人の幸せの形は千差万別であり、「この力を磨くといいよ」ということは一概には言えません。ただ、必ず必要になるコンパスという意味でいうと、「自分を知ること・社会を知ること」に尽きると思います。

自分がどういう状態であれば幸せなのか、社会ではどんなことが起こっているのかを考え続けていれば、自分にとって適切な人生戦略が設計できるようになっていくでしょう。就職活動の今のタイミングがちょうどいいですし、それをきっかけに一生考え続けてほしいですね。

佐野:河西さんの仰ることに同感です。私は現在第二新卒向けのキャリアサービスを提供しており、就活生の3~4年先の未来の方々とお会いしています。その中で感じるのが、現状に良い意味で疑問を持ち、自分や社会の在り方について考え続けている人の方が社会で活躍しているのではないか、ということです。

問いを持つと、葛藤が生まれたり悩んだりすることも多いのですが、そこに逃げずに向き合うことで、その次の未来の幸せが大きくなっていることが多いと思います。逆に入社した会社で変化がなく現状の自分を当たり前と認識していると、自らが幸せか不幸せかどうかを感じにくくなってしまうとさえ思います。

SECTION 7/7

自己対話を通じて、自責の意思決定をしよう

──今回の対談の発起人である赤木さんからも、学生へのメッセージを踏まえてお話しください。

赤木:議論の最初の問いに戻り、就活市場における「成長」という話をすると、私は採用面接で多くの学生に会う中で「この会社を日本一にして、日本の経済成長に貢献したいです」という言葉を耳にすることがあります。皆さんのその言葉の裏には「社会がそう言うから、経済成長は絶対的に重要である」という前提がないでしょうか?

確かに経済成長はひとつの社会の成長指標としては存在します。一方で、少し前に東京大学名誉教授の上野千鶴子氏が「みんなで貧しくなろう」というメッセージを出したことに賛否両論の声があり、話題になりました。「成長しない」というものさしだってあるのです。

だからこそ、なにか新しい刺激を受けたときに、一歩引いて、自分がそれを選択するかを吟味する余地を持ちましょう。なんなら、今回私たちからお伝えしたメッセージを捨てることも重要です。「これがいいと言われているから、こうあらねばならない」と、他者にものさしを依存してしまうのは、他者に搾取されることと同じです。

私自身、所属するネットプロテクションズのことを良い会社であると思う一方で、常に「悪いところはないのかな?」「Googleに出来てなぜネットプロテクションズにできないのだろう」という問いかけをしていますし、それを考えるのはすごく楽しいです。

社会人になると否応なく選択を迫られる機会が沢山あります。その時々に、誰かの言説を無批判に受け入れて他責に選択をするのも、自己対話を通して自ら決定するのも自分次第です。「幸せ」は自分で掴みとれるものなので、ぜひ自分との対話を楽しんで欲しいですね。

──「成長」というテーマに様々な視点から語っていただきました。最後に、今回の話をより深めていただくために登壇者がおすすめする書籍をご紹介します。ぜひ自ら調べて考えていただき、人生設計の糧にしてください。

◆登壇者おすすめの書籍◆
  1. 安宅 和人『シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成』(NewsPicksパブリッシング,2020)
  2. 渡邊 格『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』(講談社,2013)
  3. ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド『FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』(日経BP,2019)

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