INTERVIEW
東大生がGoodfind創業者に聞いてみた。「成長」って何ですか?
「成長したい」「優秀な人になりたい」という思いは、誰しもが持っているものでしょう。しかし、成長する上での自分のビジョンや方向性がきちんと見えている学生は、実はあまり多くないのではないでしょうか。 今回は就活始めたての23卒東大生が、就活する東大生の半数以上が登録するGoodfindの創業者にインタビューを実施。「成長」や「優秀さ」をテーマに、素朴な疑問をぶつけていきます。みなさんのお悩みと重ねながらお読みください。
話し手
伊藤 豊
スローガン株式会社
創業者
穗原 充
東京大学大学院
総合文化研究科地域文化研究専攻 博士課程在籍
SECTION 1/4
企業が求める「成長」と学生がしたい「成長」
穗原: 伊藤さん、今日は就活生が思い悩みがちな「成長」についてお聞かせいただければと思います。
就活をやってみて思うんですが、就活サービスも企業も、ものすごく成長を煽っているように見えるんですよね。「圧倒的成長こそ正義!」みたいな(笑)。なので、就活サービスの当事者である伊藤さんにいろいろお伺いしたいなと。
伊藤: あ、成長を煽っているように見えるのはどちらかというと、学生が持っている成長意欲を、マッチングのために企業側が強調して提示した、という側面のほうが大きいのではないかと思っています。
多くの学生は「事をなせる人になりたい」「誰かの期待に応えたい」といった本能的な向上心や、「仕事ができない側に回りたくない」という損失回避の意識を持っています。そういった意識からこそ生じる自分を高めたいという思いが、「成長意欲」の正体だと思うのです。そこに企業も合わせに行って、お互い「成長」と言い合ってる、みたいな感じだと思っています(笑)。
穗原:なるほど。仰る通りだと思うのですが、企業・社会が僕ら学生に対して言っている「成長」って、学生がしたい「成長」以上に型にはまっているようにも思うんです。「ああ、コミュ力高くてロジカルシンキングできる人になってほしいのね?」というふうに感じることが多くて。
高校までは「受験に受かること=成長」として意欲を掻き立てられてきたのが、大学生になって「成長」とは必ずしも画一的なものではないと知ったからこそ、そう感じるのかもしれません。
そう感じ始めると、一体何をモチベーションにして、「成長していこう!」という向上心を持てば良いのかがわからなくなってきているのですが、伊藤さんはどう思いますか?
伊藤:そうですね。山に籠もって誰とも関わらず暮らしたりするのでない限り、人は自己実現のためにも何らかの形で社会や会社とコラボレーションする必要があるんじゃないかと思います。
そしてそのためには、基礎的なスキルや能力・経験を身に付けて、企業・社会の中で自分をコラボする価値のある相手として認めてもらう必要がありますよね。
もちろん穗原さんが言うように、「成長」の方向性や意義は一つではないでしょう。ただ、就活の中で企業が学生に求めてくるスキルは、社会の中で評価されるためのベースだと思うので、それらを新卒で身に付けるためだと捉えると良いのではないか、というのが答えです。
穗原:なるほど……確かにコラボしてくれる存在は必要ですし、そう思うと一種の通過儀礼として、必要なスキルを身に付けていきたいなと思います。
SECTION 2/4
「有能」≠「優秀」。本当に優秀な人の特徴とは?
穗原:「成長」をどう捉えればよいのか、という部分は理解できました。しかしまだその、「コミュ力高くてロジカルシンキングができること=成長」みたいに言われる風潮には納得いかないというか、つまんないなあと感じています。
伊藤:確かに就活の時点ではその観点が重視されているように思えるかもしれないですが、そもそも社会でコラボされる優秀な人になるためのキーってそれだけじゃないですよ。私は『有能さ×信頼性×面白さ』の3つの掛け合わせだと思っています。
「有能さ」は今言っていたような論理的思考力・メタ認知力・コミュニケーション能力、「信頼性」は自己中心的でない姿勢・相手への敬意・誠実さ、「面白さ」は希少性・他人と違う選択をする勇気・人に手を差し伸べてもらえる可愛げといったものですね。
穗原:それで言うと「有能さ」ばかりに気を取られていたんですかね。「信頼性」や「面白さ」まで意識できている学生はあまり多くないだろうなと思いました。
伊藤:そうなんですよ。多くの人が「優秀さ」=「有能さ」であると捉えているように思います。就活生は特に、地頭の良さ、論理的思考力、コミュニケーションといった部分にのみ注目してしまう。いわば「プレゼンが上手くて、すらすら論理的に説得力のある話ができる人」だけを優秀と思うわけです。だから、コンサル内定者=優秀の代名詞みたいになって、こぞってコンサル思考とか学ぶでしょ。
学生を評価する企業側も「有能さ」に偏って評価している面があって、穗原さんが画一的でつまらないと思う原因はここにあると思います。
ただ、「有能だけど、信頼できないし面白くもない」という人と一緒に働くのはきついですよね。本当に優秀だな、と思うのはこの3つのバランスが整っている人です。
穗原:あー、この話が聞きたかったんですよ。なんだかもやもやしていたことがわかってスッキリしました。
一方で「信頼性」や「面白さ」は、学生からするとなかなか就活対策しにくいですし、意識して高めるのも難しいものだと感じています。この2つを高めて、有能なだけじゃない、優秀な人に成長するにはどうすればいいんですかね?
SECTION 3/4
「面白さ」を上げるには、「迷ったら少数派を選べ」
伊藤:「信頼性」というのは自己中心的ではなく他者にフォーカスしているか、相手への敬意を払っているかということや、誠実さ、謙虚さ、あとはマナーもそうですよね。一朝一夕に身に付くものではないかもしれませんが、意識すると良いと思います。
「面白さ」の部分でいうと、社内でもよく言うのですが、「迷ったら、少数派を選ぶ」。何か決断を下す際、よーく考えても迷うような選択肢って大抵どちらも同じくらい良いんですよ。だったら他の人が選ばない方を選んだほうが、面白い人生歩めるんじゃないか、ということです。
穗原:あ、それ、前伊藤さんに言われたことあります。そういえば、僕その言葉を信じて進振り決めたんですよ。
伊藤:え、そうなの?
穗原:はい。僕もともと文一で東大に入ったのですが、400人が行く法学部に進むか、2人しか選ばないロシア研究に進むか迷ったんですよね。その時にたまたまインターン生の研修で伊藤さんの「迷ったら少数派を選べ」という言葉を聞いて、ちょっと感銘を受けて、ロシア研究を選びました。
伊藤:なるほど。
穗原:大学受験までは「潰しが効くから」といった理由でいろんな選択をしてきて、大学生になって初めてこの言葉に感銘を受けて、少数派の選択をしてきたんですね。
自分としてはそれで良かったと思うことが多々あって、後悔していません。しかし就活を始めてみると、社会や企業が求める人材とはギャップがあるんじゃないかと思ってもいます。
少数派を選ぶということは、他人が知らない世界に踏み込むことなんですよね。それが人間としての「面白さ」を高めてくれるのではないかとは思っているのですが、このまま何も考えずに、ロシア研究を突き詰めすぎると、ちょっとやばいんじゃないか、と。(笑)
伊藤:さっきも言ったんですが、『有能さ×信頼性×面白さ』はバランスが大事です。「面白さ」というのは扱いが難しくて、ノックアウト・ファクターになりやすい。要は変な奴だと思われて、相性が悪いと認定されちゃうリスクがあるわけです。
そういう意味では、少数派を選びつつ、社会との接続点を探しに行くことや、自分の「面白さ」を社会に合わせてチューニングすることが必要かもしれないですね。
穗原:社会に認めてもらうことを意識せよ、ということですよね。でもそれってともすると自分のやりたいことを妥協して迎合しろと言われているような気もして、何だかなあ、って思うんですよ、最近。
伊藤:うーん、でもそう思っているときって、自分の考えをチューニングするチャンスだとも言えると思います。
穗原さんがそうとは言わないけど、今「これをやりたい」と思っていることを、ダイレクトに行える会社・組織が無い、起業してもビジネスモデルが無い、といった場合は、妥協というより世の中に対してかなり独りよがりな可能性があるんですよね。
そういう意味では、就職とは独りよがりを修正しにいくことであり、経験することで「自分がしたいことは実はこっちなのではないか」と気づけることも多いものなんじゃないでしょうか。
SECTION 4/4
未だ周りが気づいていない波に乗るには
穗原:独りよがりかあ……。要は、どう世の中に役立てていくのかを考える必要があるってことですよね。
でも伊藤さん、独りよがりにならない「面白さ」の追求って難しいですよ。逆に、社会との接続点を意識しながらも少数派を選ぶ方法ってないんですかねえ。
伊藤:これは良い質問ですね。実は最近、本を出しました!そこに答えが書いてあります。だから本を読んでください。
穗原:えっ、おお、PRきた!笑。本を出されたのは知っていますよ?でもここまで来たら、最後まで教えてくださいよ~。
伊藤:え?穗原さん、まだ読んでないの?笑。個人的には早く読んでほしいんだけど、一言で言うなら「時間軸」という発想が鍵になります。
穗原:時間軸、ですか?
伊藤:そうです。少数派にも、今後も少数派であるものと、今はたまたまその価値が認められてないから少数派で、今後メジャーになるであろうものという2つの種類があります。後者のような、地殻変動が起きてこれから来る「少数派」だと自分では思えていて、周りからはやめておけと言われる、こういう少数派はめちゃくちゃ良いですよね。賭けるに値すると思います。
穗原:まだみんなが気づいていない波の始まりに乗ろう、ということですか?
伊藤:そういうことです。他人が選ばないような方を選ぶから面白いよね、という側面はあるのですが、先見の明があったなと言われる部分が欲しいのであれば、そのモメンタムを時間軸で見つけなくてはいけないと思います。
穗原:うーんなるほど……ロシア研究でもそういう領域を意識して探してみたいですね。それで、本には何が書いてあるんですか?
伊藤:今した時間軸思考や意思決定の仕方の話を書きました。時間軸思考を通じて時代の流れを掴み、新しい産業を創っている人たちの話も書いています。僕はそのような人たちのことをShaper(カタチ作る人)と呼んでいますが、Shaperの話を読んで、自分の意思決定にも活かしてもらえたら嬉しいです。
あと、時間軸思考についてはGoodfind Collegeの記事にもなっているので、そちらも読んでもらえたらと。
▼【Goodfind代表】就活生必読。「時間軸思考」のススメ
穗原:バラエティ番組並の宣伝っぷりですね……!でも、伊藤さんがそこまで言うなら読んでみようと思います。
<穗原の後日談>穗原の後日談>
例の本を読んでみました。本書には時間軸で物事を見てモメンタムを掴むためのヒントが散りばめられており、自分なりに解釈を深めることができました。
作中、起業家ピーター・ティールの「賛成する人がほとんどいない、大切な真実は何だろう」という問いが紹介されています。この問いに対する答えを探すことが、時間軸思考の第一歩であると僕は思います。
そして、伊藤さんもさることながら、各方面のShaperと呼ばれる方々は各々自分の中で確固とした未来予測を持っているのにも気づきました。
また同時に、未来予測を社会にぶつけて検証しブラッシュアップしてきた方が、最終的にやりたかったことを実現できるのだということにも気づかされました。
未来を予測し、世間に認められていない大事なことを探す。そしてそれを証明するために手を動かす。これが僕らに必要な「これからの成長」なのだと信じ、自己を研鑽していこうと思います。
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