EVENT REPORT

未来のCFOや経営人材に必要なこと【成長企業CxOが語る・後編】

監査法人、VC、投資銀行。全く異なる道からCFOになった3人の対談。前編では、三者三様のCFOへの歩みや、スタートアップのCFOのトレンドの背景にある日本経済と資本市場のマクロ的な変遷について語った3人。後編では、ファイナンスのキャリアで得られる成長や、CFOという仕事の魅力、今後のCFOの役割、市場価値の高い人材とは? 未来をつくる皆さん一人一人に骨太なメッセージをお届けします。

話し手

北川 裕憲

北川 裕憲

スローガン株式会社
取締役執行役員CFO 公認会計士

矢野 方樹

矢野 方樹

株式会社REAPRA
CFO

千葉 大輔

千葉 大輔

株式会社ユーザベース
執行役員CFO

SECTION 1/4

CFOはCEOと未来をつくる

──ファイナンスのキャリアだからこそ得られる成長は何ですか?

REAPRA 矢野:ファイナンスと一言で言ってもすごく広いユニバースです。その中で「こんな癖がついた」という観点でお話しますと、金融畑出身の私は「未来の予想屋さん」なんですね。常に予想の思考をまわしていて未来を予想する癖がついてます。一方で、スタートアップは「未来をつくっていく」仕事です。予想屋と未来をつくる人とでは脳の使い方が全然違うんです。

スローガン 北川:前職の監査法人での私は「過去の証明屋さん」として、過去がいかに正しいかの証明をずっとしてきました。一方で、現在はCFOとして未来をつくっていかないといけないんです。過去から学びつつ、未来をつくっています。CFOをやっていると、過去に経験していないことばっかり起きて、最初は抵抗感がありました。

つい最近まで過去の経験や固定概念にとらわれ、自分の敷いたレールにいろんなことをはめ込もうとしていましたが、それだと未来はつくれない。イノベーティブ、クリエイティブな考え方が必要だなと、スローガンで働くなかで初めて気がつきました。

左:ユーザベース千葉氏、中央:リープラ矢野氏、右:スローガン北川氏

ユーザベース 千葉:「未来をつくる仕事」は、誰(どんなCEO)と働くかで変わると思います。CFOの仕事はほとんどがCEOとのやりとりなので。経営トップであるCEOとともにどう未来を描いていくか。CFOがCEOと同じレベルで考えていないと議論にならないんです。

CEOとの仕事で最初一番きついのが「で、どう思う? 君が社長ならどうしたい? 」と聞かれることです。おそらく最初の3ヶ月は答えられないです。インターンでもアルバイトでも聞かれます。大体「ルールはこうなってます」と言いがちですが求められているのはそういう回答ではないので。自分が社長だったらどうしたいかという思考回路が必要です。

VCでは投資先スタートアップが立てた事業計画のDD(デューデリジェンス)※1 をしていましたが、事業を見るためのパラメータをVC側が増やすことはあまりないんです。やるとしても、投資先が100で出してきたものを「80じゃない?」とツッコむ程度です。パラメータを付加したり、ゼロから事業計画をつくったりはVCはしないんです。それは社外取締役として外から関わるVCと、社内のCFOの大きな違いだと思います。

※1 DDとは  Due Diligence(デューデリジェンス)の略で、適正評価手続きのこと。投資を行うにあたって、投資対象となる企業や投資先の価値やリスクなどを適正に把握するために事前におこなう多面的な調査。

SECTION 2/4

CFOはなくなる? 役割は企業価値を上げること全て

──ファイナンスで会社を支えるCFOの仕事の魅力は何でしょうか?また、会社におけるCFOの役割や存在意義はどのように捉えていますか?

REAPRA 矢野:皆さんが自分の中の「ファイナンスはこうだ」という固定概念の中で「ファイナンスの業務はこの範囲まで」と捉えてしまうと、学生時代の私のように「ファイナンスはつまらない」と感じると思います。

私がモルガン・スタンレーでECM※2(クライアント企業の株式発行によるIPO前後の資金調達支援)という仕事で行き詰まりを感じたのも、「ECMってこういう業務だよね」と自分で固定概念を持ってしまっていたから、広がりがなかったんですね、今振り返ると。

※2 ECMとは Equity Capital Marketsの略、株式資本市場部門とも言う。株式の発行を担うプロダクトチームで、新規株式公開(IPO)などを担う。ECMの収益源は株式や転換社債などの引受手数料で、投資銀行にとって大きな収入源の一つになっている。

REAPRA 矢野:僕がこれから10年20年単位でやっていきたいのは、全然違う形のファイナンスの歩みを進めること。次世代のよりよいファイナンスってどういう姿があり得るのだろう?と考えています。

例えば「ファイナンスはCFOの領域、人材育成や人にまつわることはHRの領域だ」という固定概念を持っているとイノベーションが生まれにくいですが、あえて少し離れた領域と掛け合わせることで新たなファイナンスが生まれるんじゃないか、と思います。

千葉さんのお話にあったように、CFOの在り方も進化しています。例えば「企業価値を生み出していく戦略的CFOが当然だよね」とか。同じようにCFOの在り方、ファイナンスの在り方はどんどん変わり得ると思うので、僕はそこを追い求めていきたいです。

今の概念にとらわれて自分で線引きをしなければ、CFOの仕事範囲は、広報IRやマーケティングの人とも関われますし、そうやって異業種の人と交流することで新たなものができて、広がっていくんじゃないかなと思います。

ユーザベース 千葉:CFOは経営者の1人だと思っています。責任範囲のメインはファイナンスですが、定義も日々変わりますし、いろんなCFOがいていいし、それが面白いと思っています。

矢野さんのおっしゃるように、今後CFOの定義がすごく広がっていくと思っています。僕は「CFOはなくなる」とすら思っています。最近ではCSO3やCMO※4など様々なCxOが出てきていますが、お金を集めることと使うことは表裏一体なので、CFOが使い道を説明して集めるのなら、自分で集めたお金を自分で使えばいいし、戦略を描くこととお金集めるのこともセットなはずなので。自分がどこまでをやるのか、やりたいのか次第だと思います。

※3 CSOとは  Chief Strategy Officerの略で、最高戦略責任者。
※4 CMOとは Chief Marketing Officerの略で、マーケティング最高責任者。

ユーザベース 千葉:僕がCFOになりたくてなったのは2013年です。その背景には2つあって。1つは、それまでクックパッドで経営企画室長だったので経営会議には出ていたのですが、投票権を持ってない悔しさがあり、経営責任とは何なのか経験したいと思いました。もう1つはCFOになった際に見える景色を一度見てみたいなと思っていました。

売上や利益をあげることを直接やる訳ではないCFOをやってみて感じたのは、売上10億円あげることと、10億円の資金を集めることでは「どっちが大事で、会社のためになり、利益率が高いか」です。スタートアップは”Cash is King”と言われるくらいキャッシュが全てで、お金を持っていればどんなに赤字でも潰れないんですよ。

なので会社を生かすことや事業を推進する上でお金を集めることは、一つのファンクションとして事業行為だなと考えました。また「キャッシュが全て」という概念からすると、お金を集めることも一つの営業だなと割り切って、僕自身CFOをやっていた時もありました。

クックパッドにいた当時は自分のやっていた内容・精度がショボかったの含めて「経営企画はあまり意味がない」と思っていましたが、実はその考えは変わりました。今では経営企画の定義をどう考えるか、どこまで深くやるかによって価値は変わるかなと思っています。

例えば、現場の人は想いを持って事業をやっているので撤退のジャッジができないことが多いんですが、経営企画だからこそ第三者目線でジャッジできたり介在できたりする。キャピタルアロケーションすなわち「どうお金を回すのか」まで、深くやれれば経営企画の仕事には価値があります。

ユーザベースのSPEEDAというプロダクトのお客様はまさに経営企画の人達ですが、お客様のことを聞いても、そもそも経営企画やファイナンスの定義を旧態依然としたものから各社・各担当者が「うちはこうなんです」とアップデートしていかないといけない、と感じています。

スローガン 北川:会計・ファイナンスは、ビジネスにおいては言語レベルで重要なテーマです。企業価値の創造に向けて、会計・ファイナンスを軸にCEOとともに歩むパートナーがCFOだと考えています。

会社経営においては、お互いの役割がどこか必ず重なり合って進んでいくので「君はここまで、私はここまで」と区切った瞬間に広がりがなくなって世界が閉ざされ、会社が前に進まなくなります。なので、区切らずにファジーな部分も残しながら、互いの役割を重ねて深めながら進めることが必要です。お二人がおっしゃるように、CFOの役割として固定化された定義はないように感じます。

私が監査法人にいた時に感じたのは、監査自体は社会に必要な役割・機能として重要なので、その点において意義はありますが、自分がやるかと考えたときに、自分が担いたい役割とは何か違うと感じてスローガンに戻ってきました。

自分で事業・お金を生み出していくことにいかに深く関わっていくか。データを引っ張ってくれば予算など数字の計画を引くことはできますが、その裏側にある人と人の相性や組織の特性、事業、数字の裏側にある背景を読めるかが、CFOの重要な役割だと思います。また、私は事業責任者やCOOといった売上をつくる事業側をやったことはないのですが、実はいつかやりたいテーマではあります。

スローガン 北川:私が今CFOとして意識しているのは、まずは事業責任者と一緒に数字をつくっていく上で、彼らと同じ目線で各事業の背景や中身を徹底的に深掘りすること。一方で、事業家では見出せない新たな観点や視座・示唆を、事業責任者に提供する役割に注力していて、そこに魅力を感じています。事業家とCFO、両方の役割があって重なり合っているからこそ、うまくいくのだと思います。

REAPRA 矢野:「お金を生む・生まない」ということの定義もアップデートしていきたいですね。会計的な利益のみではなくて。競争力の源泉、無形資産などもそうですが、世の中の競争環境も変わってきているので、お金を生むよりも「価値を生むものは何か」を考えると、ファイナンスの立場でできることはめちゃくちゃあるんじゃないかなと。そのような視点でやりがいを見出していくと、ファイナンスはかなり創造的な仕事に変わるんじゃないかと思います。

ユーザベース 千葉:企業価値=株主価値ではない、という話もあります。例えばソフトバンクとしてソフトバンクホークス(プロ野球チーム)のオーナーをなぜやっているのか。ホークスには地域貢献の側面や利益を生むこととは違う価値もあるんだと思います。ベンチャーがどんどんJリーグチームのオーナーやスポンサーになっているのも同様の目的で、ただめちゃめちゃ儲けるためにやっているわけではなくて。利益を生んだり株価を上げる以外の「企業価値を上げる手法」という意味があるのかなと見ています。そう考えると「企業価値を上げる」ということをまるっと担えるのがCFOの魅力の一つかもしれません。

SECTION 3/4

市場価値を高めるには?軸を持ち、自分だけの価値を追求する

──市場価値の高いCFOや、今後の社会で必要とされる力とは何でしょうか?また、その力はどうしたら身につけられるのでしょうか?

スローガン 北川:会社のフェーズによって必要とされる能力は異なると思いますが、「社会」という括りで考えると、より複雑性・不確実性が高くなる社会においては、外部環境の変化に合わせて「考え抜く力」「柔軟な思考力」が必要ではないか? と思います。これはCFOに限らず多くのビジネスパーソンに必要とされる力と考えています。

スローガン 北川:今後の社会では、旧来型の管理体制や過去の経験が活かせない、経験したことのない外部環境の変化が待ち受けています。そんな社会においても成長を遂げていく会社経営への貢献ができるか。そのためには、創造性や柔軟性と確実性をバランスよく備えたCFOが必要ではないかと思います。

REAPRA 矢野:求められているのは、イノベーションを生める存在、ではないでしょうか。REAPRAでは「社会と共創するマスタリー」※5 と呼んでいますが、既存のものをコピペするのではなく、社会を少しでも進歩させていけるような新たな試みに取り組みたいと考えています。そのためには一つの軸を持ちながら学び続け、唯一無二の存在を目指すことが大事だと思います。

※5 社会と共創するマスタリーとは REAPRAが掲げる概念で「社会から求められ続ける領域で、熟達に向けて学習し続ける生き様」のこと。「マスタリー」は特定の領域における熟達者・達人を指す。

ユーザベース 千葉:CFOに何が必要とされるかは、経営チーム、企業ステージ、会社、事業が目指す方向次第で様々かと思います。CFOの市場価値については、まだ定義が固まっていない領域だと思いますが、自分の軸を持ち、自分にしかない価値を追求することで、代替不可能な存在であれたらいいのではないでしょうか。最近の私のテーマですが、会社、仕事を一切抜きにして「自分は〇〇をし、□□を実現する」と本気で言える人は強いなと思います。

SECTION 4/4

過去の経験を活かした自分だけの介在価値とは

──自分だからこその存在意義はありますか? 言い換えると、過去の経験やメンタリティーをどのように今の会社に価値提供していますか?またCFOとして独自のこだわりはありますか?

ユーザベース 千葉:僕がユーザベースを選んだ理由の一つですが、ダイバーシティ(多様性)を大切にしています。ユーザベースのCFOとして唯一僕が出せるバリューは「この会社以外のスタートアップにいた」ことです。ユーザベースの経営メンバーの特徴としてプロファーム※6 出身者が多くて、レシピサイトやファッションアプリのスタートアップにいたのは僕くらいです。

過去を今にどう活かしているかで言うと、前の会社(VASILY)をZOZOに売却するまでの2年間は、本当にしんどい経験をしました。当時なんでうまくいかなかったか。それは多様性が足りなかったのと、チームをつくれなかったからなんです。

企業が成長する過程で必要なのは「みんなが同じ優秀さ」ではないんです。全員数学100点がよいわけではなくて、この人は数学50点だけど国語100点です、体育100点です、というように、スタートアップではいろんな人が集まっていかに有機的につながるかが肝なので、僕はサッカーチームの監督やGMのようなことをしています。どういうフォーメーションで誰をどう配置するのか。そして「一人一人の個性をどう引き出すか」ということを考えています。

現在ユーザベースではチームを柔軟につくるために、サッカーのフォーメーションのように、状況に応じてポジションや役割を入れ替えています。社内にこれだけ多様な才能が溢れていて、僕には想像できないアイデアがどんどん出てくる度に「それいいね、どうやってやろうか」と議論しています。

ちなみに、社内にCFOをできる人材は僕以外に3~4人います。またユーザベースの場合、CFOが一人じゃなくてもよくて、Co-CFOで何人かいてもいいと思っています。そもそも一般的に管理部門と言われる範囲を管掌している役員が2人いますし。「こうだろう」という固定のフォーメーションの概念はなくて、サッカーで例えるなら「FWって要るんだっけ?メッシがいるならゼロトップでよくない?」みたいな(笑)。僕自身も「CFOの後任を見つけてきたら辞めてもいいよ」と言われているくらいがちょうどいいと思っています。

※6 プロファームとは プロフェッショナルファームの略で、コンサルティング会社、金融機関(投資銀行、M&Aアドバイザリー等)、監査法人、会計事務所、弁護士事務所、投資会社などを指す。多くの有資格者で構成されており、専門的なサービスを提供する組織。プロジェクトごとにチームを組むが、個々人の専門的な知識・スキルや成果物によって利益を上げている。

REAPRA 矢野:私がREAPRAにジョインした理由は、それまで金融畑の面白みは感じてきた一方で、投資銀行で資金調達に関わるうちに「事業のつくり方」へ関心を持つようになり、事業づくりへの関わりにおいて満たされない部分が湧いてきたからです。REAPRAでは、これまでのキャリアを活かしながらも事業創造に関わることができて、自分のWILLと会社のミッションが近いと感じます。

またREAPRA発祥の地はシンガポールで、海外の拠点やオペレーションがあってグローバルに活動しているので、その視点を持つことができるのも魅力です。私自身が中高アメリカに住んでいた帰国子女で、それとファイナンスのバックグラウンドとを活かしながら現在の仕事をしています。

自ら何かを生み出すのであれば「今の常識では想定してないこと」を獲りにいきたいですね。私が言うのもなんですが、そういったことをやるには癖がついていない、若い人の方がやりやすいです。もちろん「人はいつでも変われる」と思いながら常に支援していますが、若い人の方が変化率は高かったり、新しいことへ取り組むハードルは低いのではないかと思います。

スローガン 北川:私の場合は、学生時代にスローガンでインターンしていたからこそ、会計士になった後に戻るという選択に繋がりました。インターンをするなかで1円を生み出すことの重みを知ることができたので、監査法人という立場での仕事も両方知った結果、やっぱり事業会社が楽しいと思えました。

目の前で会社が成長していくこと、すべてを自分の責任として捉えていくのは大変なことも多いですが、そういう環境が好きなんだと思います。前提として、スローガンのミッションや人が好きですし、そんな中で、今の社長に「一緒にやろう」と誘ってもらえたことがきっかけになっています。

スローガン 北川:CFOを目指す人に限らず、未来をつくる皆さん一人一人に伝えたいのは、固定概念や過去に囚われずに前に進むことです。常に「本当にそうなんだっけ?」という視点を持って、未来を切り拓いていきたいですね。

今回の企画は「次世代のCFOをどのように発掘し育成するのか」というテーマの中で、私自身が長期インターンを学生時代に経験したことが、今の自分に大きな影響を与えていることから「学生向けに対談イベントをやってそこから採用できないか? 」と考え、実現しました。

私自身も半人前ではありますが、次世代の経営人材(CFO)を発掘し、育成することも、今の私のミッションであると考えています。一人でも多くの優秀なCFOを生み出すことが、企業の事業成長、ひいては日本の経済成長につながると信じており、今回イベントにご参加いただいた皆様はもちろん、この記事を読んでいただいた皆様にとって何か一つでも得るものがあったなら、とても嬉しく思います。

※本記事は、2020年2月に開催したイベント『成長企業のCFOが語る、会計・ファイナンスで経営に関わるキャリアとは? 』~ Exective Career Session ~の内容をもとに作成しています。

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