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僕らがCFOになった理由【成長企業CxOが語る・前編】

皆さんは「CFO(Chief Financial Officer=最高財務責任者)」にどんなイメージがありますか? 資金調達や上場を担う経営の要? 会社のNo.2? 会計やファイナンスを学ぶ人の中には「将来CFOになりたい」人もいるでしょう。今回は成長企業3社のCFO対談(前編・後編)をお届け。前編ではそれぞれ異なる道からなぜCFOになったのか。投資銀行からCFOになる人が増えている背景とは。経営者を目指す人のヒントとなれば幸いです。

話し手

北川 裕憲

北川 裕憲

スローガン株式会社
取締役執行役員CFO 公認会計士

矢野 方樹

矢野 方樹

株式会社REAPRA
CFO

千葉 大輔

千葉 大輔

株式会社ユーザベース
執行役員CFO

SECTION 1/5

会計士試験と長期インターン、監査法人を経て、古巣のCFOに

北川 裕憲
スローガン株式会社
取締役執行役員CFO 公認会計士

  • 2008年~2011年 スローガン
    • Goodfindを運営。人を軸にした新産業ビルダー
    • 大学在学中より長期インターン
    • 創業3期目にジョイン
    • 学生インターンながら、財務・経理を中心とした経営管理業務に従事
  • 2011年〜2015年 新創監査法人
    • 上場企業の法定監査
    • IPO支援等の各種コンサルティング業務
    • 2015年公認会計士登録
  • 2015年〜 スローガン
    • 新しい何かを形づくる人たちのコミュニティを基軸にした新産業ビルダー
    • 2017年から取締役執行役員CFO

──学生時代の就活から現在のキャリアに至る道のりについて教えてください。

スローガン 北川:大学4年の時、当時3期目のスローガンに長期インターンとして入りました。将来父の会社を手伝うことを目標に会計士の勉強をしていましたが、なかなか試験に合格できない日々でした。

そんな中、スローガンに新卒1号入社した友人から「経理やらない?」と誘われて、そこから約3年半に渡りバックオフィス全般を担当しました。

もう10年以上前の話ですが、当時管理部に正社員はいなくてインターンの自分だけでほぼ業務を回していました。大変な時だと、日中は大学院と専門学校で勉強、夜10時にスローガンに出社して仕事、終電で帰るかオフィスに泊まって翌朝また学校という生活でした。

学生の昼休みってみんなでご飯に行ったりすると思うのですが、私の場合は昼休み=早稲田のマックでひたすら仕事タイム(笑)。勉強の合間は貴重なワークタイムでした。決算はもちろん、社員の給与計算や振込など責任ある仕事を任せてもらっていました。

他にも、インターン入社直後ですが、会社の資金繰りの関係で銀行からの借入交渉を一人でしていたというのも、今考えるとすごい経験させてもらってたなと思いますね。めちゃくちゃ大変でしたが、それ以上に楽しかったですし、「1円を生み出すことの重み」を肌で感じれたことが一番の学びでした。

左:REAPRA矢野氏、右:スローガン北川氏

卒業後の進路は、元々は「BIG4」と言われる大手監査法人に行こうとしていたものの、スローガンでのインターンを通して「無思考にBIG4を目指すことへの疑問」を抱くようになりました。そこで、一気に凝縮した経験を求めて、監査法人の中でもかなり小規模でより大変そうな環境を選択しました。そこで3年半会計士として働き、2015年にスローガンに戻ってきました。お世話になった古巣の成長にコミットしたいと思ったからです。

スローガンという会社は、自分たちのことを「新産業ビルダー」と呼んでいます。産業が生まれたり企業が成長していくには「人」がドライバーになるので、成長領域に身を置く学生・若手を増やしたい。人を通じて産業を生み出し、支援したい。

そんな思いから、大学生向けのサービスでInternStreet、Goodfind、FactLogic、中途領域のGoodfindCareer、ビジネスメディアFastGrow、1on1の仕組みづくりのTeamUpなど、人を軸に複数の事業を展開しています。今日のようなイベントも数多くやっていて、未来を担う皆さんにキャリアやビジネスの学びの機会を提供しています。

SECTION 2/5

VCからスタートアップ3社。経営企画、IPO、売却を経験

千葉 大輔
株式会社ユーザベース
執行役員CFO

  • 2003年〜2008年 ジャフコ
    • ベンチャーキャピタリストとして投資活動、ファンド募集活動を経験
    • IPO、M&A Exitともに経験
  • 2008年〜2013年 クックパッド
    • レシピサイト運営会社
    • 社員が30名程度の時期に入社。経営企画として、IPO準備、IR、予算統制、M&A、市場変更などを経験
    • 新規事業を担当、全国の農家が野菜を販売することが出来るプラットフォームを運営
  • 2013年〜2017年 VASILY(現ZOZOテクノロジーズ)
    • コーディネイトアプリ運営会社
    • 社員10名、シリーズB後に入社、資金調達、管理部門の立ち上げ、IPO準備を担当
    • 2017年10月にスタートトゥデイ(現ZOZO)に100%買収
  • 2018年〜 ユーザベース
    • 経済情報プラットフォーム「SPEEDA」やソーシャル経済メディア「NewsPicks」など運営
    • 2019年から執行役員CFO

ユーザベース 千葉:僕のキャリアは荒れてまして(笑)。新卒でジャフコというベンチャーキャピタル(以下、VC)に入りました。学生時代は、京都の大学だったのですが、京都に面白い会社が多い理由を知りたくて京都の経営者が話す講義を受けていました。そこで京都銀行が重要な役割を果たしたと聞き、間接金融と直接金融があることを知り、たまたまジャフコの説明会に参加しました。

それまでVCは知らなかったですし、ジャフコに決めたのは最初に内定をもらったからです。最終選考中だった証券会社、コンサル会社はジャフコから内定をもらった時に全てお断りをしました。

ジャフコではベンチャーキャピタリストとして楽しく働いていましたが、5年目で人事部に異動になりました。キャピタリストとして投資が出来なくなり、体調を大きく崩したこともあり、これまでの人生色々と考えた時にVCは黒子であり外野だと感じて、投資先のようなスタートアップ側に行こうと考えました。

左:ユーザベース千葉氏

どこに行こうか迷った時に、ミッションが明確で、会った中でもっとも変人だった佐野さんが社長をやっているクックパッドを選択しました。リーマンショックで世の中がバタバタしている2008年にクックパッドにジョインして、そこから私の「スタートアップ大好き経歴」がはじまりました。

クックパッドでは経営企画室長として5年間に渡ってIPO※1、IR、予算統制、東証一部への市場変更、買収など色々やって、最後は新規事業で農家をまわるという仕事もやりましたが、全然ファイナンスでピカピカのキャリアではなかったです。そして経営企画として経営会議に出席しているうちに「経営陣の1人」になってみたくなり、CFOになれる会社を探して転職しました。

そんな経緯で2013年から約4年間、ファッションコーディネートアプリの会社、VASILY(ヴァシリー、現ZOZOテクノロジーズ)のCFOを務めたのが、僕の最初のCFOキャリアです。VASILYには10人目の社員で入って、最大80人に広がった一方で事業縮小のためリストラやオフィス縮小などをしました。最後IPOではなく、スタートトゥデイ(現ZOZO)に会社を売却するという決断をしました。最初2年間上がり調子で、後半2年間がすごくしんどかったです。

その後、縁あって2018年にユーザベースに入社して2019年からCFOをしています。ユーザベースの事業で学生の皆さんと接点があるのは恐らくNewsPicksですね。創業事業はSPEEDAなんですが、SPEEDAは日本初の企業情報のデータベースで、経済情報の収集・分析ができるプラットフォームです。SPEEDAで稼いだ収益をソーシャル経済メディアであるNewsPicksに投資して次の成長事業を立ち上げ、上場しました。最近では米国の経済メディアQuartzを買収したり、グローバルに事業を展開しています。

※1 IPOとは Initial Public Offeringの略。新規株式公開とも言われ、初めての上場を指す。少数株主に限定されている未上場会社の株式を証券取引所(株式市場)に上場し、株主数を拡大させて、株式市場での売買を可能にする。上場した企業は株式市場からの資金調達が可能になり、会社の知名度向上によって、優秀な人材の確保が可能になるなどのメリットがある。一方で、投資家保護の観点から定期的な企業情報の開示(ディスクロージャー)が義務付けられる。

SECTION 3/5

投資銀行とPEを経て、投資先と産業創造するCFOに

矢野 方樹
株式会社REAPRA
CFO

  • 1999年〜2002年 モルガン・スタンレー(日本)
    • 投資銀行部門にて、株式や社債の発行を通じた企業の資金調達業務に従事
  • 2002年〜2004年 アドバンテッジパートナーズ
    • プライベートエクイティ(PE)ファーム
    • 未公開企業へのハンズオン経営支援に従事
  • 2004年〜2018年 モルガン・スタンレー(日本)
    • Equity Capital MarketsのHead / Managing Director
    • 様々な産業領域、企業規模に対して、クロスボーダーでのIPO前後の資金調達にまつわる業務に従事
  • 2018年〜 REAPRA
    • 研究と実践を通じて、再現可能な産業創出を目指す投資会社
    • 一般的なVCとは異なり、有望な産業領域を起業家とともにリサーチし、共同創業によって新規に企業を設立するベンチャービルダー
    • CFOおよび投資先のハンズオン支援も担当

REAPRA 矢野:新卒でモルガン・スタンレーに入社しました。学生時代はゼミもインターンもマーケティングで、OBも広告代理店の華やかな人が多い環境でした。そのため、就職活動を始めた当初はファイナンスや銀行はつまらないイメージがあり「金融だけには行くまい」と思っていました。ただ、せっかくの機会なので幅広く見て回ったところ、投資銀行はつぶしが効きそうで、給料もいいし、その後の選択肢も広そうだったので入社しました。皆さんに比べると相当意識が低かったように思います。

REAPRA矢野氏

モルガン・スタンレーでは20年近いキャリアを歩み、株式や社債の発行を通じて様々な企業の資金調達にまつわる仕事をしてきました。途中で2年間だけ、アドバンテッジパートナーズという未公開企業に投資をしているプライベートエクイティ※2の会社に行き、投資先のハンズオン支援※3をしていました。そして2年前からREAPRA(リープラ)でCFOをしています。

REAPRAはResearch&Practice(研究と実践)の造語で、ベンチャー投資をしている会社です。東南アジア・日本の各地に拠点を持ち、13ヵ国で約60社のベンチャー企業へ投資事業を展開しています。

特徴は、単にリターンを得る金融投資ではなく、投資先と一緒に産業創造に取り組んでいる点です。また社内に専任のリサーチチームがあって、アカデミアと共同で「産業創造」の方法論を研究しています。「事業をつくるってどういうことだろう、産業をつくるってどういうことだろう」というノウハウを自分たちも学び続けて、投資先と一緒に事業や産業を紡ぎ出しています。

※2 プライベートエクイティとは 広義には未上場企業の株式を意味する。通常は、立上げ期のベンチャー企業への小規模な投資をベンチャー・キャピタル投資と呼び、プライベート・エクイティ投資は成長・成熟期の企業に対し比較的大規模な資金を提供する、または株主に売却機会を提供する投資手法のことを表す。

※3 ハンズオン支援とは “hands on”=「実践の、手を触れる」から転じて、VC・事業再生ファンドやコンサルティングファームなどが企業買収や投資を行う際に、投資先やコンサルティングを行う企業の経営に直接参画あるいは深く関与することを表す。

SECTION 4/5

CFOのトレンドの裏にある、マクロ的な背景

──なぜ投資銀行から、投資会社のREAPRAへ転職されたのですか?

REAPRA 矢野:投資銀行での仕事もやればやるほど深さはあって、知れば知るほど「より良い仕事をしたい」という意欲も出てくる一方で「本当に価値を生み出しているところに関わりたい。そこに自分の時間を使いたい」という渇望が出てきました。

また海外と接点があるフィールドで仕事をし続けたい気持ちもあり、REAPRAとの縁につながりました。転職して2年ですが、想像よりも環境は激変して、めちゃめちゃ学びの多い日々を過ごせています。

転職のきっかけとしては、投資銀行として資金調達の提案を行う業務を通じて、スタートアップと多く触れたことが挙げられます。私がモルガン・スタンレーにいた最後2年間は、ECM<※4といって株式の引き受け・IPOの値付けなどをする部署にいましたが、そこではメルカリ、ラクスルなど名だたるスタートアップとの仕事が増えていました。

彼らと触れて感じたのは、20年前と今の時代背景の違いです。かつて私が投資銀行入社時に期待していたものが、最近ではスタートアップにあるように思います。スピードが速い、いる人が優秀、生まれたものを育てられる、といった点です。

実際にREAPRAに転職して感じるのは「スタートアップ」と一言に言っても様々だということ。REAPRA自身もスタートアップですし、投資先スタートアップにもそれぞれ違いや特徴があります。

求められたり鍛えられる力の違いとしては、投資銀行に限らずやり方が決まっている旧来型の職場では、いかに効率よくミスを少なく推進する能力が重視されますが、REAPRAや投資先スタートアップでは「答えがない中で突き進む」ことが求められるので、頭の使い方が全然違いますし、投資銀行とスタートアップでは世界観も相当に違うなと感じます。

※4 ECMとは Equity Capital Marketsの略、株式資本市場部門とも言う。株式の発行を担うプロダクトチームで、新規株式公開(IPO)などを担う。ECMの収益源は株式や転換社債などの引受手数料で、投資銀行にとって大きな収入源の一つになっている。

──VCからCFOになる流れはありますか?

ユーザベース 千葉:VCからCFOになっている人は意外と少ないです。僕は投資銀行にいたことはないですが、VCで投資をしてきて今もスタートアップ界隈をずっと見ている立場から思うのは、CFOになる人のトレンドには「マクロ的な背景」が大きく影響しているということです。

──スタートアップのCFOのトレンドの裏にある「マクロ的な背景」とは、どういったことでしょうか?

ユーザベース 千葉:特に投資銀行の人がスタートアップのCFOになるトレンドの背景なのですが。私がいたクックパッドが上場した2009年頃はマーケットがデフレだったので資金調達が難しかったんです。今みたいに資金調達額が10億20億50億みたいなことはなくて、2~3億調達できたら「すごいね、あの会社」という時代でした。

そういう時にはみんなディフェンシブに考えるので、IPOを着実にできる会計士CFOがモテた時代でした。2003年から2010年くらいですね。ちなみに、なぜIPOを目指す時に会計士が求められるかというと、上場審査をクリアするためには会計士の専門分野が多いからです。

そもそも日本に“CFO”が浸透したのはここ20年くらいです。それ以前は、管理担当役員、財務担当役員と呼ばれていました。また「スタートアップ」という言葉が浸透したのは2013年頃で、スタートアップの資金調達額が増え、人材の流動化が進んできたからです。お金が増えてくると人に投資ができるようになる。基本的に投資銀行の人は給与が高いので、資本市場が谷の時には人を採りたくても採れない。

このように、優秀な人材に正しくお金を払って入社してもらえるコンディションが揃ったというのがマクロ的な背景だと考えています。さらには、スタートアップにお金が流れるようになったことで、お金を集め、成長させるためのエクイティストーリー※5を描いて自らお金を引っ張って事業をドライブする、CFOという人達が脚光を浴びるようになりました。

なのでメルカリ、ラクスル、Sansanなどを見ているとわかるように、投資銀行出身のCFOがいるスタートアップの資金調達額はほぼ比例的に高いです。彼らが集めるのが先か、それともお金が集まったから彼らが入ったのかの順番はわかりませんが、投資家との対話、お金を活用して事業をドライブさせる力が必要であるため、そのような人材の入社と調達金額やその後の成長軌道には相関関係があるように思います。

また上場すると投資家とコミュニケーションを取らないといけないので、そのために必要な金融知識のある人達がCFOになることが多いのかなと思います。ただ「投資銀行に行けばスタートアップのCFOになれるのか」と言われると、必ずしもそうではない、と思います。

※5 エクイティストーリーとは 「コーポレートストーリー」とも呼ばれる。投資家や株主に向けて会社の強みや特長、成長戦略などをわかりやすく伝えるためのストーリーをまとめたもので、エクイティファイナンスを実施する際に、調達完了後の資金使途や事業戦略、成長戦略を投資家に説明し、円滑な資金調達のカギとなるもの。

──監査法人出身のCFOについては、いかがですか?

スローガン 北川:監査法人出身者のCFOは減ってきた気がします。会計士が得意ないわゆる管理領域は会社としてできてあたりまえで、今求められているのは、必要とされる管理レベルを前提として、ベンチャー・スタートアップの成長にいかに貢献できるかだと思っています。すなわちCFOに求められる役割が変わってきていると感じます。

実際に今、監査法人時代の監査スキルはほぼ使っていないので、会計士と名乗るのは恥ずかしいくらいです(笑)。それくらい、会計士時代と今とではやることは変わっています。管理はもちろんですが、会社を成長させるために必要なことを考える機会の方が多いです。

私の場合、会計士時代に身についたスキルで今一番使っているのは忍耐力でしょうか(笑)。もちろん監査法人での経験は強みになりますし、経営において会計は重要なので、優秀な会計士が今よりもっとベンチャー、スタートアップで活躍すると嬉しいですね。

REAPRA 矢野:REAPRAにも会計士出身の吉田というメンバーがいますが、彼は「会計士のイメージを変えたい」と言っています。「会計士は地味」という偏見がありますが、会計は経営においてものすごく重要です。そして私も金融やファイナンスのイメージを変えたいんです。グローバル金融危機以降「金融は諸悪の根源だ、金融に関わるのはろくな奴がいない」というイメージがあるかもしれませんが、金融に関わる人の「理由」を変えていくと、社会が良くなるんじゃないかと僕は思っています。

SECTION 5/5

経営企画より農家開拓?! 経営に活きる事業経験

──自己紹介で「農家をまわっていた」とのお話がありました。クックパッドではIPOや経営企画を経験されてますが、その時になぜ農家開拓をすることになったのですか?

ユーザベース 千葉:「経営企画」って響きはかっこいいですが、クックパッドで仕事を始めた当初の若造だった僕は、マーケットリサーチして「ここが伸びます」と予測したり計画をつくったりしているだけで、実行するのは現場の人たちでした。

IRの業務でも投資家に自社を売り込みはするものの、自分が提示した計画が未達の場合、どこかで現場のせいにしている自分が嫌でした。自分で売上を一つも創っていないことにモヤモヤしているうちに「だったら自分も事業をやってみよう」と思いました。

そんな経緯で、新規事業の立ち上げに参加しました。農家に新鮮な旬の野菜をボックスに詰めてもらってユーザーに直接届ける、というサービスで、47都道府県のうち、僕が40都道府県をレンタカーでまわって全国の農家と契約してもらいました。

新規事業の最初の壁は「農家のデータベースがないので農家開拓ができない」というものでした。そこで大田市場に行って野菜のダンボールを写メしまくって調べたり、知り合いに紹介をお願いしたり、ネットで調べては電話をかけて1軒ずつ訪問して、さらに農家さんから農家さんを紹介してもらって、農家のデータベースをつくるのに半年かかりました。

当時、農家のお父さんは誰もクックパッドを知りませんでしたが、奥さんや娘さんは100%知っていたので「出荷を手伝うんで」と言って門戸を開きました(笑)。こうして、お母さんか娘さんに会うとほぼ100%受注できました。

この事業での経験を通じて産業構造のゆがみを身に染みて学びました。農家を新規に始めるのってこんなに大変なのか。農家で外国人就労できないのはなぜ?補助金をどう使う?規模の経済が効かない、インターネットをわかってなさすぎる、など挙げればきりがないですが、実業に深く深く入っていくと、そういう課題に一つ一つ向き合う楽しみがあると気づきました。

スローガン 北川:実業に入り込んだゆえの学びですね。

ユーザベース 千葉:そうですね。この時の事業経験から、現場の課題や事業側の視点を重視する姿勢がインストールされて、その後CFOとして経営を担うなかで、活きていると思いますし、今でも事業をやりたいと常に思っています。

一方で、先程の経営企画と同様に、ファイナンスの仕事も会社の売上には直接は繋がっていないという考え方もあります。果たしてファイナンスで会社を支えるCFOのやりがいや得られる成長とは?後編に続きます。

編集:

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