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INTERVIEW

既存の概念を壊し、デジタル時代にあったインフラと雇用のあり方を再定義する

「就活はたくさんの企業を受けなければならず大変だ」と感じている方は多いでしょう。多くの企業と人材を集めることで、よりよいマッチングを生み出す仕組みで動く採用市場では、どうしても候補者の負荷が高くなってしまいます。それならば、もっと効率よく個人個人に合った企業に出会えるシステムをつくろうと、MyReferを創業したのが鈴木氏です。日本が抱える雇用課題は、既存の雇用の仕組みを変えなければ解決できないと考え、「はたらく」のアップデートを目指して日本におけるリファラル採用の先駆者となった同氏。なぜ日本の雇用課題は生まれたのか、そしてどのように解決を目指しているのか、伺いました。

SPONSORED BY 株式会社MyRefer

話し手

鈴木 貴史

鈴木 貴史

株式会社MyRefer
代表取締役社長

SECTION 1/7

求められる、雇用の新たな仕組みづくり

日本がバブル景気で活況を迎えた1990年から30余年。長らく終身雇用は崩壊すると言われてきましたが、急速に進むデジタル化への対応の遅れなどを危惧し、政府内で日本的雇用慣行からの変化について議論がおこなわれ始めたのは2019年に入ってからのことです。同じ年にトヨタ自動車の豊田章男社長が終身雇用の見直しに言及したのは、皆さんの記憶にあたらしいでしょう。

加えて、全世界のビジネスパーソンを対象に行ったギャラップ社の調査※1では、日本企業におけるエンゲージメントの高い「熱意溢れる社員」の割合はわずか6%に過ぎません。アメリカの33%という数字に比べ大幅に低く、世界平均の15%を下回る結果からも、雇用の新たな仕組みづくりは日本の喫緊の課題だと言えるでしょう。

そんな旧態依然とした日本の雇用慣行や、人材領域における業界のルールに対して早くから疑問を抱き、27歳の若さでMyReferを創業したのが鈴木貴史氏です。ほとんど存在しなかった新たな市場を切り開き、今後もインフラとなるような事業を創り続けることを目指す同氏に、「世の中の変化をどのように捉え事業を創ったのか?」「これから先の未来をどのように見据えているのか?」など、事業づくりや今後の働き方を考える上でのヒントとなるお話を伺いました。

※1 参照: State of Global Workplace 2017(Gallup)

SECTION 2/7

世の中の潮流から読み解いた、市場の変化

──鈴木さんは新卒3年目の時に事業を立ち上げていますが、人材領域に起こる変化をどのように捉えていたのでしょうか。

ここ20年ほどの世の中の潮流として、二つの大きな変化があります。一つは情報のあり方の変化。もう一つは法人から個人へのパワーシフトです。

例えば十数年前までは、飲食店の情報を調べる際に紙媒体を見ることが一般的でした。そこからインターネットでの検索が主流となり、最近ではCGM(コンシューマー ジェネレイテッド メディアの略)と呼ばれる、掲示板やクチコミサイトなどに投稿された一般ユーザーの情報からお店を選ぶことが多いでしょう。さらに、SNSなどを通じてより身近な友達やそのつながりから得られる情報を頼りにする人も増えています。こうして紙からインターネット、インターネットからSNS、SNSから個人のクチコミというように、情報自体がよりリアルなものへと変化してきました。

また、2010年頃からクラウドソーシングの市場が広がりをみせ始め、それまで法人に発注していたWebの受託開発やデザイン制作などの仕事を、個人に発注する流れが生まれました。その結果、徐々に法人から個人へのパワーシフトが起こります。

情報自体がよりリアルなものへと変化し、情報の非対称性が解消されて、法人と個人のパワーバランスが均衡していく。こうした社会の状況を踏まえた時に、当時の私の中には「近いうちに転職市場でも同様の事象が起こるだろう」という予測がありました。

SECTION 3/7

優れた日本の人事システムがもたらした弊害

──この10年くらいで、転職に対する考え方も徐々に変わりつつあるように思いますが、一方で日本では転職をネガティブに捉える傾向が強いのも事実です。なぜそうした風潮は変わらないのでしょう。

新卒一括採用で大企業に入り、決められた枠組みの中で決められた通り働けば、終身雇用で生活が保障される。そうした日本の人事システムは、世界から注目を集めるほど優れたものでした。なぜなら大量生産大量消費の時代に、売上のトップラインを伸ばすためには非常に合理的な仕組みだったからです。しかし日進月歩でテクノロジーが進化し、何が正解なのかもわからないような変化の激しい時代には、そぐわないものになってしまいました。

それでも日本では未だに終身雇用の影響が色濃く、転職をネガティブなものだと捉える人が多いので、生涯平均転職回数は1〜2回に留まっています。そのため組織が膠着化し、出る杭を打ったり、失敗を悪としたりするようなことがしばしば起こります。一方、海外では生涯平均転職回数が10回を超えるとも言われており、新たな環境で前向きにチャレンジする風土があります。転職をキャリアアップのためのポジティブな機会と捉えているからでしょう。

さらに、日本特有の解決が難しい複雑な事象が存在します。総合職として人材を採用し、人に仕事をつける職能型の雇用形態が定着していることもその一つです。また、法律による厳しい規制もあります。例えば職安法では有料職業紹介に関する制限があるため、個人が企業に人材を紹介して対価を得ることはできません。他にも、解雇規制により日本企業が外資系企業のようにUp or Outで人材を解雇することは難しいという実情があります。

SECTION 4/7

なぜ、既存の枠組みでは本質的な課題解決ができないのか?

──日本のこれまでの人事システムによって大きな歪みが生じているんですね。人材領域のビジネスにおいても課題意識をお持ちであれば教えてください。

新卒で入社した人材企業で営業やコンサルティングを経験する中で、日頃から本質的な雇用の最適配置やマッチングが起きていないという課題を感じていました。

例えば、転職サイトはリボン型のビジネスモデルなので、企業の案件数とサービスを利用するユーザー数が増えれば増えるほど、転職サイト自体の価値が高まっていきます。そのため、知名度の高い企業や人気企業には安価でサービスを提供し、採用力のない中小企業などから大きく費用を頂戴するという構造になりがちです。

また人材紹介には良い面もありますが、企業と人材紹介エージェントの間で採用におけるKPIを定めると、そのKPIを達成することが目的化されてしまい、全てが最適なマッチングにならないという懸念があります。

現場でそうした課題に直面し、これまで大手転職サイトや人材紹介エージェントが作ってきた、業界のルールそのものを根本から変えていく必要があると感じました。

──そうすると、人材企業において本質的な雇用の最適配置や流動化を実現することは難しいのでしょうか?

雇用の最適配置と流動化がセットで実現されなければ、本質的な問題解決はできないというのが私の考えです。もちろん人材企業でも、転職に対するネガティブな受け止め方をポジティブなものへと変化させることは可能です。しかし、既存の人材サービスは転職を希望する顕在層にはリーチできても、潜在層にリーチすることはできません。

一方で内心は前向きにチャレンジしたいと思っているにも関わらず、転職をネガティブなものだと捉えているがゆえに、一歩踏み出すことができない人たちは多くいます。そうした転職潜在層の人たちが社内で活路を見出すことができないまま、同じ企業の中でぶら下がり人材として働き続けてしまうというのは案外よくある話です。

そうした現状に対し、これまでなかった新たなアプローチで、人と人との繋がりから最適なマッチングを生み出すことができれば、本質的な雇用の最適配置や流動化を実現することができるのではないかと考え、27歳の時に創業したのがMyReferです。

──新卒で入った人材企業のコーポレートベンチャーとして創業し、そこからスピンアウトしていますが、その背景には何があったのでしょうか?

雇用の「最適配置」と「流動化」を支援し、社会発展に貢献するというミッションを実現するため、というのが一つの理由です。既存のルールやインフラを全く新しいものに塗り替えていく過程では、様々な既得権益の壁にぶつかることがあります。事業会社の中でそれを実行しようとすれば、イノベーションのジレンマに陥りやすいため、スピンアウトという選択に至りました。

SECTION 5/7

「世の中にルールやインフラを生み出す」。起業を目指した背景

──そもそも、鈴木さんはいつ頃から起業を意識されていたのですか。

私の場合は、和歌山県にある600年続く寺で生まれ育ち、幼少期からルールや規制の中で育ったことが少なからず影響しています。もちろん自分の生い立ちやルーツは大事にしていますが、寺や宗教というのはこれまでの歴史でありルールなので、そういう環境で育ったがゆえに、10代の頃から「ルールやインフラを生み出したい」という反骨心のようなものがあったのだと思います。

その後、大学在学中に「ルールやインフラを生み出すとはどういうことか?」を真剣に考えるようになり、いくつかの選択肢が浮かびました。一つは政治家になって法律や仕組みを変える方法。もう一つは、アーティストのように自分の作品を生み出して世の中に新たな価値観を提示する方法。そして最後に、ビジネスを創りそれをルールやインフラとして社会に浸透させるという方法です。その中でビジネスの道を選んだのは、留学先の米国で自分と同じ年齢の学生が開発したFacebookが急速に広まり、若者の間でインフラとなるのを目の当たりにしたからです。その時に、優れたコンテンツさえあれば、20代でも一瞬にして世の中にインフラを生み出すことができることを肌で感じました。

SECTION 6/7

はたらくをアップデートする先に見据える、新たな雇用のあり方

──MyReferが介在することで、人材領域に変化が起きているという手応えはありますか。

当社は「アイデアとテクノロジーで日本のはたらくをアップデートする」というビジョンを掲げています。ゴールを掲げるのではなく、あえて「アップデートする」と表現しているのは、人間の価値観やキャリア観、雇用や転職などにおける理想形は常に変わっていくものだと考えているからです。

とはいえ、創業時はリファラル採用への理解を得ることができず、苦しい時期もありました。例えば、MyReferは企業が自社の社員やその繋がりを通じて仲間集めをしていくサービスですが、当初は「採用は人事がやるものだ」という固定観念が強く、社員を巻き込むことで生じる業務負荷を懸念する声が多かったです。また海外と比べて転職自体がネガティブに捉えられているので、知人や友人を誘うことに責任を感じ、リファラルに抵抗を感じる人も少なくありませんでした。

それでも一つひとつ課題を解消し続けた結果、ローンチから3年足らずで500を超える企業にサービスを利用いただくまでに成長しました。リファラル採用に取り組んだことのある企業の割合も、今では約60%にまで増えています。

──今後さらにリファラル採用が世の中に浸透し、既存の人材ビジネスを塗り替えてインフラとなった先には、どのような変化が起こるのでしょう。

目の前の仕事に成長の余白が感じられないのに現状維持を続けている人たちが、自分のビジョンやwill、そしてキャリアに対してポジティブにチャレンジできる状態を作る。これが私たちの目指すべき姿だと考えています。

転職市場におけるマッチングの負を解消し、本質的な雇用の最適配置と流動化を実現するためには、人材に対する企業の考え方を根本から変えていかなければいけません。そうして法人と個人が対等な関係を築き、なおかつ良好な関係性を保ち続けることが重要です。初めにお話ししたように、人材領域においても急速に法人から個人へのパワーシフトが進み雇用のあり方が大きく変わるでしょう。

SECTION 7/7

ゲームチェンジャーとして、市場をひっくり返すサービスを創り続ける

──鈴木さんのような起業家を目指す人にとっても、事業をグロースさせて新たなマーケットを牽引していきたいと考える人にとっても、MyReferのチャレンジングな環境は魅力ですね。今後の展望についても教えてください。

語弊をおそれずに言えば、起業家やビジネスを生み出す人間は世の中に対してクレーマーであるべきだと考えています。そうして時流に乗っかったサービスで一つの変数を生み出すのではなく、既存の市場をディスラプトしたり、ひっくり返したりするくらいインパクトのある事業しか創らないというのは、私の一つの信念です。

もちろん、その選択が全て正しいとは限りません。しかし、インフラやルールを生み出し続けるようなビジョナリーカンパニーを創るという世界観を掲げている以上、これからもそこに向かって挑み続けます。

具体的には、転職や労働という領域に限らず、生産性やエンゲージメント向上の課題解決にも取り組み始めています。リファラル採用は、社員が企業をお薦めすることで採用につながる仕組みなので、日頃から社員のエンゲージメントをいかに高めるかということも、採用成功のための重要な要素となるからです。

──最後に、自分の将来と向き合う学生に向けて、何か伝えたいことはありますか。

新しい世の中のあり方やイノベーションはいつの時代も若い世代が創っていくものです。また、そのために必要なテクノロジーに触れる機会も多いので、当社では若い人材に新規事業の責任者やコーポレートベンチャーの社長などを任せていきたいと考えています。中途採用で将来経営を任せられるような若く優秀な人材を獲得するのは簡単ではありません。しかし、新卒採用であれば、そうした可能性を秘めた人材と多く出会うことができるというのは、新卒採用に力を入れている一つの理由です。おそらくこの規模のベンチャーでは珍しいでしょうね。

学生のうちに起業する。企業に入って事業責任者となる。事業を経験してから独立するなど、皆さんにはこれから様々な選択肢があります。その中でも自分が本来あるべき姿、ありたい姿に真摯に向き合って就職活動をしてもらいたいですね。信念や哲学を持ち、それを実現しようとすると、その過程で自分のありたい姿が使命へと変わっていくでしょう。その時に、やりたくないことに向き合わなくてはいけないこともあると思いますが、それでも確固たる信念や哲学を貫き通すことができるかどうかが重要です。自分が下す意思決定の裏にある根拠に自信を持ち、大事な選択をしていけば、きっと素晴らしい社会人生活を送れるでしょう。

編集:

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