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INTERVIEW

「質の高い濃密な時間が成長を左右する」PEファンド出身・プロ経営者のキャリアに迫る

26歳からPEファンドで経験を積み、20代にして複数の企業の取締役を経験。数々の事業の業績で成果を残したあと、NYへ留学。そして個人で会社を買って社長に―。
Goodfind Collegeの「成長企業の社員に学ぶ就活」シリーズでは、これまで様々な社会人のキャリアにフォーカスを当ててきました。今回も個性溢れる経歴の方を探していると、なんと成長企業の社長がインタビューに応じてくれることになりました。第5弾となる本記事では、異色の経歴を歩んできた生駒恭明氏のキャリア変遷や価値観を深掘りしながら、キャリア形成に必要なマインドや若手からビジネスパーソンとして活躍するためのヒントを紐解きます。

SPONSORED BY 株式会社リンケージ

話し手

生駒 恭明

生駒 恭明

株式会社リンケージ
代表取締役社長

SECTION 1/5

6年間で13社のM&Aと2社の新規事業立ち上げを成功に導く

──すごい経歴ですよね。まず気になったのがNKリレーションズ社でのご経験です。6年間で13社の取締役を務めたということですが、その時のことについて教えてください。

NKリレーションズ(以下、NK)は、もともと写真処理機器事業を営んでいたノーリツ鋼機という会社が業界のデジタルシフトを受け存亡の危機に瀕していた時に、時流に即した事業へと方向転換するために設立された社内PE投資会社(注1)です。

そこでは戦略コンサルやPEファンド、ベンチャーキャピタル出身といったプロ経営者たちが集まり、既存事業のリストラクチャリングや、ヘルスケアや高齢者市場といった伸びる領域に特化した新規事業のポートフォリオ創出を進めていました。

2009年の創立時に同社へジョインした私は、6年間で13社のM&Aの実行と2社の新規事業立ち上げを経験しました。特に印象に残っているのはドクターネットの事業変革です。「株主から派遣されてきた現場を知らない29歳の若い人」という立場から一緒に働く方々のマインドを変えて、揃えて、組織を動かし、事業を加速させていきました。すごく大変でしたが、かけがえのない経験でしたね。

結果として携わった事業のほぼ全てにおいて業績を伸ばし続けるという、誇ることのできる成果を挙げることができました。

(注1)PE(プライベートエクイティ)投資会社:成長ポテンシャルのある企業に投資をし、企業価値を高めてからIPOや他社への売却をすることで高い収益を獲得することを目的とした投資会社のこと。

SECTION 2/5

ハイスピード・ハイクオリティの仕事と若手に任せる環境

──M&Aも新規事業も簡単に成功できるものではないと思います。成果を出せた要因をどのように考えていますか?

うまくいった要因のひとつは、NKの前に勤めていたMKSパートナーズ(以下、MKS)で培った仕事経験を活かせたことです。MKSは当時PE御三家と呼ばれていたファンドで、現在の日本のビジネス界の第一線で活躍されているような優秀な方々と一緒に仕事ができました。

特に圧倒されたのはスピードで、皆さん手も早いし頭の回転も速いし、求められる時間軸も非常に短い。例えば、ある日の朝にTOB(注2)に関する本を渡され論点整理をするように言われ、3時間後には「この本を書いている弁護士が隣のビルにいるから、今からXX社のMBO(注3)について法的論点をつぶしに行こう」と言われます。その日の夕方には弁護士とディスカッション。夜にはXX社へのMBO提案資料を作るというスピード感で仕事をする集団でした。

今思えばこの時の経験が自分の限界を高めてくれたと思います。偉大な先輩方や同期についていくために必死にやっていたら、自然とプロフェッショナルとしての仕事の仕方、スキル、心構え、視座を身に着けられました。

また、才能のある若手に一定の裁量を渡して見守ったことも、事業成功の鍵でした。投資子会社には、将来的に事業会社の経営者を目指しているような高い志と熱意を持つ方々にジョインしてもらい、作成した事業計画書にコミットしてもらいました。

そして私自身も、当時のノーリツ鋼機の社長からかなりの裁量を与えてもらいました。まだ私が20代だったことを考えると、社長にとって決して簡単な意思決定ではなかったはずです。だからこそ「任せてもらえたぶん必ず期待に応えたい」という気持ちで毎日必死に取り組んだことも、成果を出せた要因だと考えています。

(注2)TOB:株式公開買付を指す。買付期間・価格・株式数などを公表したうえで、証券取引所を通さずに既存株主から買い付けることで、M&Aの手法のひとつ。
(注3)MBO(マネジメント・バイアウト):経営陣による株式買収を指す。企業の経営陣が既存株主から自社の株式を取得し、オーナー経営者となること。

SECTION 3/5

計画性は無かった?山あり谷ありのキャリアから分かること

──華々しい成功譚ですが、そもそもどのようにしてこのチャンスを掴みとったのかが気になります。これまでのキャリアの変遷についてもう少し詳しく教えてください。

実は、学生の頃は今のようなキャリアを全く想定していなかったんです。成長意欲が特段高いというわけでもなく、サッカーとアルバイトに明け暮れる日々を過ごしていました。法学部で勉強し法曹を志していた時期もありましたが、旧司法試験には2度落ちてしまいました。結局、就職活動は殆どせず実家が不動産業を営んでいることもあり、1社目では不動産系の会社に入りました。

その後、戦略コンサル/外資系投資銀行出身でもなく、MBAホルダーでもない私が、26歳で第二新卒としてMKSに入社できたのはすごく幸運でしたね。リーマンショックにより、MKSは残念ながら解散してしまったのですが、その時の先輩のご縁があり、NKにジョインしました。その後、ノーリツ鋼機の再生に目途がつき、フェーズが変わった2015年のタイミングで、全役職を退任しニューヨークにアート留学に行きました。

──全役職を退任し留学を選ぶとは、大胆なご決断ですよね。しかもなぜ、ビジネスや経営ではなく「アート」だったのでしょう?

なぜアートかというと、すごく俯瞰して世の中をみたときに、「これから人類はアートに時間とお金を投資するようになるのではないか」と考えたからです。AIやロボットが普及して人の仕事が楽になれば、余暇の時間が増えるでしょう。また技術の発展によってモノの値段は昔より下がっているため、少ないお金でも豊かな生活を送れます。そうすれば、戦争の起こらなかった時期のローマ時代の貴族のように、時間とお金をアートに使う人が増えるのではないか、と。そんな考えから世界経済の中心地であり、且つ現代アートの中心地でもあるニューヨークを留学先に選びました。

帰国後、現職に就いたのはNK時代のご縁がきっかけです。私がNKメディコの社長だった頃、自社のサービスに関するコンサルティング業務をリンケージの創業者に委託しており、その繋がりから週末に彼のビジネスの相談に乗っていました。その後、彼はリンケージの株式を他社に売却したのですが、久々に再会した際にスポンサーを変えたいという相談を受け、2018年6月に私が個人で株式を引き受けることになりました。

──思い通りにいかないことや、運や縁で道が拓けることが沢山あったのですね。キャリアプランを綿密に立てようとする人は多いですが、何が起こるか分からないことを前提に、生駒さんのようにその時々で目の前のことに必死に取り組む姿勢が重要であると言えそうです。

SECTION 4/5

「2040年の日本をハッピーに」現在の仕事に懸ける想いとは

ある日のリンケージオフィスにて。

──生駒さんが現在社長を務めるリンケージは、どのような会社なのでしょうか。

リンケージは「テクノロジーとつながりで健康意識の温度を上げる」というミッションを掲げているヘルステックベンチャーです。現在は主に、禁煙・特定保健指導・糖尿病重症化予防・女性の健康の4つ領域でサービスを展開していますが、これらは成長市場と言われるヘルスケア業界の中でも、比較的新しくポテンシャルの大きな領域です。

長期的には、ヘルスケアサービスを通じて来るべき2040年をハッピーな時代として迎えることに寄与していきたいと考えています。よく日本の社会構造上の問題として2025年問題(注4)が取り上げられていますが、今から実施可能な打ち手は少ないと見ています。従って当社は2040年問題(注5)に焦点をあて、日本の労働人口減を回避する「80歳まで働ける心身の維持」「女性が活躍しつづける社会の創造」「子供を産みたいと思える社会環境の実現」の3つに資するプロダクトを創っていく予定です。

私が経営に参画してからの約2年間で、一緒に働くメンバーは5倍以上に増えました。仲間の拡充と共に事業も拡大し続けており、この2年間だけでも5つの新しいサービスやプロダクトをローンチしています。今後も、ベンチャー企業らしからぬ堅実さを持ちながらも攻めの姿勢を忘れずに、今まで以上のペースで進んでいきたいと考えています。

(注4)団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となることにより、介護・医療費などの急増が懸念されている問題
(注5)日本の総人口が1.1億人になり、現役世代1.5人で高齢者1人を支えることで、深刻な労働力不足と社会保障費の増大が懸念されている問題

──短期間で非常に順調に成長しているんですね。組織運営という点にもなにか秘密があるんでしょうか?

チカラのある個性的なメンバーが集まっていることも当社の魅力のひとつです。私はリンケージで働くメンバーにはプロフェッショナルとギフト(自分らしさ)の両立を求めています。

プロフェッショナルとして仕事をするのは基本ですが、プライベートでアーティストと触れ合うことの多い私としては、常に「自分らしさを出す」こともまた非常に重要であると考えています。異なる色が混ざって、また新しい色が生まれるように、社員ひとりひとりの個性が新たな価値を生み出す源泉になるはずです。

社風においても、メンバーがそれぞれの個性を発揮できるよう多様性を重視しています。これは日本でビジネスだけをしていた頃の自分にはあまりなかった考え方なのですが、様々なバックグラウンドを持つ人が集まるニューヨークで2年間過ごしたことが影響し、留学後は会社経営においても多様性を尊重し、受け入れることを大事にするようになりました。雰囲気としては、仕事のクオリティは常に高いものをもとめながらも、笑いの絶えない状態が理想ですね。

「笑いの絶えない雰囲気が理想」という生駒氏。取材中もカメラマンを笑わせようとしてくれた。

SECTION 5/5

質の高い濃密な時間が成長を左右する

──生駒さんのように若いうちから活躍するにはどうすればいいのでしょう?

ビジネスパーソンが育つうえで重要なことは、質の高い濃密な時間を過ごす期間を持てるかどうかです。私自身は天才ではないですが、過去を振り返ると環境に適応するために自分なりに必死にやっていたらいつの間にかできることが多くなったという経験があります。

確率論的には急成長ベンチャー、戦略コンサルや外資系投資銀行、PEファンド出身の方は鍛えられている方が多いように思います。これらに共通するのは、ヒリヒリしたプレッシャーの中で裁量をもちながら、しっかりとした結果を求められることです。自分の限界を高めてくれるような環境に身を置くことは早くから成長する一つの手でしょう。

──最後に学生に向けてメッセージをお願いします。

私のキャリアはよく再現性がないと言われますし、適切なアドバイスができるかわかりません。ただ、ひとつ自信を持って言えるのは「社会人になってから死ぬほど働いてきた」ということです。

あまり流行りの考え方ではないのかもしれませんが、私は「量が質を凌駕する世界はある」と思います。周りで活躍しているビジネスパーソンたちも、私と同じように水中でぐっと息を止めてしんどい期間を過ごし、やっと水面から顔を出して息をして周りを見渡すと、違うステージにきていたという経験を持っている方が多いのではないかと推察します。

高い目標を持ち、苦しい時があっても目の前のことに必死に取り組むというスタンスを忘れないでください。そして、成長できる環境で頭と背中に汗をかきながら頑張りたいという方は是非当社の選考にお越しください。

編集:

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