COLUMN
就活の罠に陥らないために。正解のない時代に幸せなキャリアを歩む思考法

順調に選考を通過し、目標にしていた複数内定も見えている。なのに、なぜか虚無感やモヤモヤが消えない⸺。それはこれまで努力して成果を出してきた学生ほど陥りがちな「就活の罠」にハマっているサインかもしれません。見栄やプライドなど、誰もが抱える感情を受け入れたうえで、自分が本当に納得できる人生に向けて舵を切るための思考法を、Goodfind講師・川西が解説します。
【謝礼あり】読後アンケートご協力のお願い(計6問・所要時間1〜2分)
公開日:
話し手
川西幸紀
スローガン株式会社
Goodfindセミナー講師・関西エリア責任者
SECTION 1/6
あなたは何のために就活をしていますか?
⸺ Goodfindセミナー講師、関西エリア担当の川西さんは普段から多くの就活生と接していると思いますが、学生はどのような悩みを抱えていることが多いですか?
川西:複数の内定獲得も目前で、周囲からは順調に就活を進めているように見える学生が、実は言葉にならないモヤモヤや虚無感などを抱えているケースは少なくありません。
多くの学生を見ていて感じるのは、就活は本来幸せになるための手段であるにもかかわらず、選考が進むにつれて内定をもらうこと自体が目的になってしまっているのではないか、ということです。

その背景にあると考えられるのが、これまでの成功体験です。受験や部活などで高い目標を設定し、ルールをハックして努力し成果を残してきた実績のある学生ほど、就活を攻略すべきゲームと捉えてしまいがちです。
⸺ 就活を攻略すべきゲームと捉えると、具体的にどのような状態に陥ってしまうのでしょうか。
川西:例えば自分の人生を幸せに生きるという目的に立ち返れば、企業選びの軸は「挑戦してみたいことがある」「こういった生き方をしたい」といった自分の本音が判断基準になるはずです。しかしゲームをハックすることに長けている学生ほど、自分の本音を無意識に押し殺し、企業ごとに最適化した綺麗ごとの就活軸を作ることに注力してしまいます。
こうして有名難関企業の内定を取るというゲームに熱中するあまり、内定獲得がゴールとなり、「その企業に入って、自分はどう生きていきたいのか」というもっとも重要な点が置き去りになってしまうのです。こうした中長期的で本質的な視点が抜け落ちていることが、虚無感やモヤモヤの背景にあるといえます。

さらに、現代においてはキャリアの考え方が大きく変化しています。そもそも他者が作った評価基準に対して満点を取りに行くようなやり方では、人は幸せに生きられないということがわかってきたのです。
SECTION 2/6
現代の幸福度にもっとも影響を与えるもの
⸺キャリアの考え方の変化について、詳しく教えてください。
川西:まず高度経済成長期から1990年代までの「キャリア1.0」は、組織が高い価値を持っていました。終身雇用や年功序列が前提にあり、大企業という強固な組織に人生を預ければ、幸せになれた時代だといえるでしょう。
続く2010年代までの「キャリア2.0」は個人の時代です。バブル崩壊やリーマンショックといった経済の変動、インターネットの普及を背景に、大企業神話が崩壊し、成果主義が導入されました。だからこそ就活生はポータブルスキルを磨くことを目的にファーストキャリアを選ぶなど、自身の市場価値を高めることを最優先にしていたのです。
⸺現在にあたる「キャリア3.0」は、どのような時代ですか?
川西:「キャリア3.0」は、意味や価値観が重視される時代です。 この時代のキャリアにおいて大切なのは、「自分はどう生きたいか」という問いに向き合い、そのうえで自分の軸で意思決定していく、自己決定感です。
現代はAIの急速な進化により、スキルのコモディティ化が進んでいます。またSNSの普及やコロナ禍による価値観の多様化で、幸福の尺度も変わりました。物質的な豊かさや、年収や肩書といった外側の条件だけでは人は幸福を感じられないことが広く知られるようになり、人生の選択を自分で行うことが、幸福度にもっとも強い影響を与えることが明らかになっています。

安定した業界やスキルを見通すことが難しく、所得や学歴などの共通の尺度で測れる画一的な正解がない時代だからこそ、自分はどう生きたいかという主観的な納得感が幸福なキャリアを築くための絶対的な基準になるのです。
そして、キャリア2.0でもっとも重視されていた市場価値は、現在ではあくまで選択の自由を守るための手段にすぎません。
こうした大きな時代の変化にもかかわらず、就活生の多くは短絡的に知名度の高い企業を目指したり、市場価値だけに固執してしまうなど、古い価値観に囚われて、自己決定感の重要性を見落としているのが現状です。
SECTION 3/6
優秀であるほど陥りやすい2つの罠
⸺自己決定感が重要な時代において、努力して成果を出してきた学生ほど陥りやすい就活の罠があるそうですね。具体的にどのようなものなのでしょうか。
川西:学生が陥りがちな罠として、「サンクコストの呪縛」と「志望企業から逆算した偽りの就活軸」の2つが挙げられます。
まずサンクコストの呪縛とは、これまで受験勉強や大学の講義・研究に費やしてきた膨大な時間や努力を「無駄にしたくない、損失として確定させたくない」という心理から、自らの選択肢を狭めてしまう現象です。
根底には得る喜びよりも失う苦痛を約2倍も強く感じる心理特性があり、そこからさらに2つのバイアスへと連鎖していきます。
まずは「A大学なら、B業界に行くのが順当」という慣習や偏見に基づくレールから外れることを、脳は大きな損失と認知し、これまでのコミュニティの標準に留まろうとしてしまいます。また、過酷な受験を乗り越えてこの大学に入ったのだから、誰もが羨む企業に行くべきだと自分にいい聞かせ、単なる過去への執着を論理的で正しい判断だと錯覚して正当化してしまうのです。
これらの心理が複雑に交錯した結果、多くの選択肢があるにもかかわらず、応募先の候補を大学の先輩たちがいる企業だけに絞るなど、キャリアの選択肢の幅を狭めることに繋がります。

⸺2つ目の「志望企業から逆算した偽りの軸」についても教えてください。
川西:志望企業に受かるために、外発的欲求を隠すような「綺麗でロジカルな後付けの軸」を逆算して作ってしまうことです。
私自身も就活生時代を思い返すと、ステータスや年収といった本音を隠し、企業ウケする理由を必死で作っていました。でもどれだけ面接を通過しても、心が置いてけぼりになる感覚がありました。
これは自分で決めているようで、実は企業側の評価基準に人生の選択を委ねてしまっており、自己決定感の喪失にも繋がる危険な罠だといえます。
川西が企画する就活イベントはこちら
SECTION 4/6
「べき論」から逃れる批判的思考力
⸺そうした罠から脱して、自己決定感を得られるキャリアを歩むために必要な力は何ですか。
川西:就活生に身につけてほしい力が2つあります。まずは、批判的思考力です。
就活市場には、「ファーストキャリアは大手に行くべき」「成長したいなら、若いうちから裁量を持てるベンチャーに行くべき」「これからはグローバルやITのスキルを身につけるべき」といった無数の「べき論」があふれています。しかし、現代において全員に共通する絶対的な正解が存在しないことはお伝えした通りです。
こうした「べき論」に遭遇した際には、自分自身の現在地と理想の生き方を起点に、批判的に捉えてみることが重要です。
⸺現在地と理想の生き方を起点にした批判的思考とはどういうことでしょうか。
川西:キャリアの選択は、自身の「As is」と「To be」という2つの変数によって180度変わります。
「As is」とは、自分の強みやストレス耐性、そして内発的・外発的を含むモチベーションの源泉などの現在の状態を指します。「To be」とはなりたい姿や理想の生き方など将来の目標のことです。両方を的確に言語化できれば、自分に最適化された手段の仮説が見えてくるはずです。

大学受験を例に考えてみましょう。各科目の実力はどの程度か、どのような合格水準の大学を受けるのかといった個別の事例によって、今どのような勉強をするべきかというアドバイスは変わってきます。一般論的な「〇〇すべき」という言葉はすべて、発信者の「As is」と「To be」に基づいた単なるポジショントークであり、部分最適な経験則に過ぎないのです。
注意したいのは、他人の現在地や目標をベースに作られた「べき論」を、全員の正解であるかのように錯覚し、自分の「As is」「To be」を無視して無理やり適合させてしまうことです。その結果、面接を通過しても心が置いてけぼりになるような違和感が生まれます。
唯一、就活生全員に当てはまる「べき論」があるとするならば、それは自分にとっての幸せを突き詰めて考えるべきということだけだと思います。
SECTION 5/6
外発的欲求を受け入れ、バイアスを外すステップ
⸺就活の罠から抜け出すために必要なもう一つの力は何ですか。
川西:自分の感情や思考を客観視するメタ認知力です。「お金を稼ぎたい」「友達や親に自慢したい」といった外発的な欲求に振り回されることは、自己決定を大きく阻害する要因になり得るからです。
ただし、こうした欲求は決して悪いことではなく、誰にでもある自然なことです。まずは自分の中にある見栄や欲を素直に認めることから始めましょう。無理に隠す必要はありません。その上で、内発的な視点を加えていくことが重要です。
⸺外発的欲求にとらわれている中で、客観的に自分を見つめるのはとても難しそうです。実践的なアクションがあれば教えてください。
川西:メタ認知をうまく使うには、3つのステップで自己対話を実践することをおすすめします。

初めのステップは、欲求をありのまま受け入れることです。例えば「誰もが知る有名企業から内定をもらって、SNSで報告して周りにすごいといわれたいな」という思いがあったとします。まずは「今の自分は周囲からの承認欲求や、学歴のサンクコストを回収したいプライドが強く働いているな」と、感情を否定せず、実況中継するようなつもりで客観的に捉えてみましょう。
次に、欲求の因数分解です。客観視できた欲求に対して、「自分は誰から、何を承認されたいのだろう?」と問いかけてみましょう。
認められたいのは親なのか、大学の友人なのか。あるいは優秀だと思われたいのか、高い年収を稼ぐ力があると思われたいのか、やりたいことに真っすぐに取り組んでいる人だと思われたいのか。欲求を要素ごとに分解して言葉にしてみることで、自分を無意識に縛っていた漠然としたものの正体が、はっきりと輪郭を持つようになるのです。
最後に、内発的視点を加えます。因数分解して明確になった外発的欲求を満たす選択肢を並べた上で、「より自分らしくいられる、日々やっていて飽きない、心地よい環境はどこか」という内発的な問いを重ねて、自分らしさを拡張していきます。
このように段階を追ってメタ認知的な自己分析を重ねて視野を広げていくことで、外発的欲求をうまく受け入れ、自分にとって本当に幸せな環境選びができるようになります。
SECTION 6/6
自分が納得できる人生をデザインするために
⸺批判的思考とメタ認知によって、外発的欲求をコントロールできるようになったとしても、やりたいことや自分にとって大切な価値観がすぐに見つかる学生ばかりではないように思います。
川西:就活で重要なのは、具体的なやりたいこと(What)を見つけることではなく、何のために働くのかという価値観(Why)を言語化することです。
もちろん、やりたいことが見つかるに越したことはありません。ただ実際に社会に出て働かない限り、本当にやりたいことを見つけるのは、非常に難しいからです。

大学のサークルや部活選びを例に考えてみましょう。新入生のころ、具体的に「〇〇というサークルで、イベントの企画運営という業務をやりたい」と考えていましたか?
きっと「一生モノの仲間と全力で駆け抜けたい」「穏やかに知的好奇心を満たしたい」など、「大学生活を、何のために過ごすのか」といった目的がぼんやりとでも先にあり、それを実現できそうな環境を探したはずです。
就活も、その規模が大きく、時間軸が長くなったものと捉えてみてください。「何のために働くのか」という価値観が先にあり、そのためにはどんな環境で働くのが良いのかを考えることが本来の就活の軸であり、キャリア3.0時代における就活の本質です。
「Why」のヒントは、過去にあります。これまでどんな瞬間に幸せを感じ、何を大事にして生きてきたのか。どんなときに強いストレスを感じたのか。自分の過去の経験とその解釈を丁寧に紐解いていけば、自分が大事にしたい価値観が見えてくるはずです。
⸺最後に、これから自分の足でキャリアを歩み始める就活生へメッセージをお願いします。
川西:内定をもらうことは決して就活のゴールではなく、不確実なキャリア3.0の時代を生き抜くためのスタートラインに過ぎません。
世間にあふれる「べき論」や、自分の中にうごめく承認欲求といったノイズをコントロールし、自分らしく生きるためにはどんな環境が必要かという問いに、泥臭く、愚直に向き合い続けてほしいのです。
みなさんはこれまで、他人が作った評価基準で満点を取る能力をもう十分に証明してきたはずです。これからは、その高い思考力を他者から称賛されるためではなく、自分が本当に納得できる人生をデザインするために使ってください。
川西が企画する就活イベントはこちら
編集:





