INTERVIEW

大学の研究とは別物?変化に挑む研究開発職の魅力とは

日々実験と論文と課題に追われる理系学生の皆さん、大学院卒業後について、どのような進路を考えていますか?研究開発職?ビジネス職?博士課程進学?
教授には、研究に邁進することで自ずと進路は拓けると言われているかもしれませんが、「今の研究をこの先もずっと続けるのか?」「そもそも研究開発職ではなくビジネス職のほうが向いているのではないか?」と、疑問を抱いている人も多いのではないでしょうか。
本記事では、学生時代の専攻に囚われすぎず、就職後も新しい領域にチャレンジする人が多いJTにて、「香料」と「フィルター」の研究開発を行っている2人のお話を元に、企業で研究開発することの魅力を紐解いていきます。研究開発の現場にいるお二人のキャリアや考え方を知ることで、少しでも将来を考えるヒントになれば幸いです。

SPONSORED BY 日本たばこ産業株式会社

話し手

本溜 哲也

本溜 哲也

日本たばこ産業株式会社
たばこ事業本部 R&Dグループ 製品開発センター

一野 陽希

一野 陽希

日本たばこ産業株式会社
たばこ事業本部 R&Dグループ 製品開発センター

SECTION 1/6

「自分の専門性を活かさなければならない」は本当か?

本溜 哲也(もとだまり てつや)

日本たばこ産業株式会社
たばこ事業本部 R&Dグループ 製品開発センター

2005年、JTに新卒入社。入社後はフィルターの基礎研究に携わり、2008年より新規フィルターの開発やフィルターの生産技術開発を担当。その後はドイツへの赴任、たばこ製品に関わる材料品の規格を統括する業務を経験し、現在は高温加熱型たばこのフィルター開発に従事。大学では機械工学を専攻。

一野 陽希(いちの はるき)

日本たばこ産業株式会社
たばこ事業本部 R&Dグループ 製品開発センター

2019年、JTに新卒入社。製品開発センターに配属され、約4か月の研修ののち、現在までの約1年半、加熱式たばこや電子たばこの香料開発を担当。大学では高分子科学を専攻。

──お二方のプロフィールを拝見すると、現在開発されているものと、学生時代の専攻とは分野が大きく異なっているように見受けられます。なぜJTに入社しようと思われたのでしょうか?

一野:そもそも私は、学生時代の専攻を活かすことを就活の軸にしていませんでした。研究自体はとても好きだったのですが、真理を突き詰めるというよりは、より直接的に社会に貢献できるような領域に行きたいと考えていました。JTには就活を進めていく中で偶然出会い、たばこが自分にとって身近なプロダクトだったこともあり、興味を持ちました。選考に進む中で、プロダクトの面白さだけでなく、社会に貢献することへの考え方や人の雰囲気が自分に合っていると感じ、入社を決めました。

本溜:私の場合は、もともとは専攻である機械工学を生かした職業に就きたいと考え、幅広い業種を受けていました。JTに興味を持った理由は、当時、JTにはたばこを1分間に16000本製造できる機械があり、目にも止まらぬスピードで製造していく様子に感動し、この開発をしたいと考えたからです。しかし、入社してからは一度も機械の開発には携わっていません(笑)。ずっとフィルター関連の研究開発ですが、とても楽しく働いています。

本溜 哲也 氏

──「自分の強みはここ数年専念していた研究なのだから、これを活かさなければならない」と考えている学生の方も多くいます。それまでの専門とは別のことに携わることへの戸惑いはなかったのでしょうか?

本溜:私も機械工学専攻からフィルターの開発にコンバートしましたが、何かを突き詰めて考える面白さはどのような研究開発にも共通している実感していますし、不安になるようなことはあまりなかったように思います。

学生の皆さんは、これまで努力して培った自分の専門性を活かさないともったいない、と考えてしまうのかもしれませんね。しかし、仮説を立て、それを実験で検証して結果につなげるプロセスや思考法は、例え題材が変わったとしても活かすことができます。入社後も長く働いていくことを考えると、入社後に勉強させてもらえるような懐の深い会社で、新領域に挑戦していくのも良いのではないでしょうか。

これまで携わったことのない領域に取り組むとなると、その内容に自分が興味を持てるのかがわからず不安に思う方もいると思いますが、プロダクトへの興味と知的好奇心を持っていれば、題材に関わらず研究開発を楽しめると思いますよ。

一野 陽希 氏

SECTION 2/6

企業と大学で大きく異なる研究のやりがい

──大学での専攻にこだわらないとすると、どのように企業を選ぶのが良いのでしょうか?選択肢が広がるのは良いことである一方、一気に進路を考えるのが難しくなるように思います。

本溜:そうですよね。企業の選び方、すなわち自分の就活の軸を考えるためには、まずは「企業での研究開発と大学での研究の違い」について考えてみるのが良いのではないでしょうか。

一野:一番大きく異なるのは「やりがい」だと思います。大学では、実社会での応用からは遠くとも、真理の追求や、先進的な発見にやりがいを感じている人が多いと思います。一方、企業で行われる研究開発では、製品という形でお客様に成果を届けることができるので、自らの介在価値をやりがいとして感じることができます。

私は香料の研究開発をしていますが、自分が携わった商品が発売された際には、お客様の反応を確認しています。「これはおいしい」といったご意見をいただいたときはガッツポーズするくらい嬉しいですし、厳しいご意見をいただいた際には真摯に受け止めて、より良い製品を創るモチベーションへと変えています。

また、JTに入社後は「品質」「コスト」「納期」の3つを強く意識して開発を進めていますが、大学の研究ではあまり考えないですよね。このような意識も、学生の研究との差分だと思います。

一野氏が語る、企業での研究開発と学生時代の研究の差分

企業の研究開発ではお客様に届ける製品を創るので、一つひとつのアウトプットにおいて常に最高の「品質」を追求する必要があります。そのためには、「正確なデータ」と「味」の両面をしっかりと担保しなければなりません。また、開発した製品を売るというビジネスに携わっているので、新しいアイデアを形にしたいときにも、それにいくらかかるのかという「コスト」を算出しなければいけません。加えて、大学とは比べ物にならないくらい多くの人と一丸となって製品化を進めるために、「納期」などスケジュールの共有がとても重要です。

考えなければならない観点が増え、最初は戸惑うこともありましたが、これらを意識することによって、学生時代以上にこだわりを持って開発を進められるようになりました。

本溜:今の一野の話を聞いていると、「やりがいや意義を感じられる、自分にとって面白いプロダクトかどうか」「協業する仲間はどんな人か」「さまざまなプロセスや意識しなければならないことがある中でも過度なストレスなく研究開発を楽しめる環境か」という3つの観点は、企業を選ぶ上で考えるべきことなのではないかと思います。

SECTION 3/6

評価指標は「人」の感性。開発の難しさと面白さとは

──では、お二人が携わっているたばこというプロダクトには、どのような面白さがあると感じていますか?

一野:味や香りといった人間の感覚や官能にその成否が委ねられているのが、たばこの開発の非常におもしろい特徴だと思います。大学での研究は、良くも悪くも数値にモノを言わせた成果を出すことが多かったので、入社した当初はとても新鮮でしたね。

私が所属している香料の開発チームでは、例えば「仕事帰りに一本吸ってリフレッシュできるような味・香りを作ってください」といった抽象的なオーダーを受け、それを香りの面から具現化する仕事をしています。どういった素材を組み合わせれば、吸ったときに思い描いていた通りの味・香り、そして気分をイメージしてもらえるかを考えて、少しずつ配合や成分を変えて試しながら作っていきます。

調香のレシピは定量データですし、香料は化学構造が明確な化学物質でもあるのでサイエンスの側面もありますが、最終的にはプロジェクトメンバーの喫味評価によって製品の方向性を決めていきます。サイエンスと感覚や感性を掛け合わせて、両方を駆使して作り上げるプロセスがとても面白いな、と思っています。

本溜:開発難度が高く、皆さんが思われている以上に繊細なプロダクトであることが、私がたばこを創る上でワクワクするポイントです。

私はフィルターの開発に携わっていますが、特に紙巻たばこのフィルターは大変センシティブで、フィルターの材料を構成する原材料をほんの少し変えただけでもたばこの味・香りが変わってしまいます。「材料を変えると、煙のこの成分が変わる」というデータがあるので、おおよその味・香りの変化は予想できますが、人間の嗅覚や味覚の感度には未だ及びません。データと人の感覚の関係性を見つけるのがとても難しいのです。

フィルター開発の中でも特に思い入れがあるのが、カプセルフィルターの開発です。そもそもフィルターは、煙をろ過してタールやニコチンを減らし味をまろやかにする役割を持っていますが、「フィルターでもお客様に楽しんでもらうにはどうすればよいか?」を考えて開発を進めました。

ただでさえ割れやすいカプセルをフィルターの中に入れこむのがとても難しく、さまざまな素材のカプセルを試しながら試行錯誤を繰り返しました。やっと良い素材を開発できた!と思っても、カプセルの皮膜のちょっとした素材でたばこの味が変わってしまうことや、中々良いプチっという絶妙な触感を生み出せなかったこともあり、最終的にどうバランスを取るのかが本当にむずかしく、やりがいがありましたね。

一野:また、当社では、たばこ製品の開発のほぼすべてを自社にて行っています。実は、たばこに限らずさまざまな領域のメーカーでは、開発を外部に委託していることも少なくありません。当社は自社開発をしているからこそ、自分たちでコントロールできない領域が少なく、多くの部署と連携してスピード感を持って進めることができます。

私たちは、たばこ製品の中核である味・香りにこだわりをもって、お客様に満足していただける製品を、自らの手で創っています。私たち自身がこだわりを持ってスピーディに開発することができ、自由度高くアイデアを実現できることが、この仕事の面白さにつながっていると考えています。

SECTION 4/6

変化の大きな業界で研究開発に取り組む醍醐味

──人の感性に紐付いた開発は面白そうだと感じる一方、たばこは法規制など外部からの制限が多く、自由な開発が難しいのではないかと感じています。実際はどうなのでしょうか?

本溜:確かに様々な規制がたばこ業界や社会に変化をもたらしていますが、むしろこの変化によって、さらに良いものを世に生み出すチャンスが与えられたと感じています。例えば、当社がたばこのにおいを低減した製品を創り、規制を遵守しつつ吸う人にも吸わない人にも受け入れられるような製品開発を行うことは一つのチャレンジです。そういった課題があるからこそ、JT R&Dグループはサイエンスとテクノロジーの力を駆使して解決していこうと、モチベーション高く励んでいます。

長い間変わらぬ形態でお客様に受け入れられていたたばこですが、RRPと私たちが呼んでいる電子たばこや加熱式たばこの台頭によって、ここ数年で状況が一変しています。今後は世界中のお客様のニーズをかなえる製品を開発することを通じ、たばこ製品のさらなる進化や新しい価値を考えて、創造していく開発に携わることができるでしょう。

※RPP(Reduced-Risk Products):喫煙に伴う健康へのリスクを低減させる可能性のある製品のこと。

一野:私は、大変革が起きているからこそ、もう一度たばこの価値を見つめ直さなければならないと考えています。もちろん、においや健康へのリスクの低減といったことも求められていますが、たばこを通じてお客様が得たい感覚や価値をもう一度俯瞰して、それにたどり着くための最適解は本当に今あるたばこの形で良いのか?という検証から取り組むべきであり、それが可能なタイミングだと捉えています。

規制や世論の変化もある中で、価値を提供し続けるためには大きな変化を受け入れて行く必要があると思っています。開発を進める中でも、たばこのあり方について何が良いのかを一回立ち止まって考える、という機会が多くあります。変化を求められている領域で、新しいアイデアを出し合いながら、自分たちで変化を起こし進化していく。これこそが、当社の研究開発の醍醐味だと言えるのではないでしょうか。

SECTION 5/6

「研究開発員を放牧する」自由な環境で研究に取り組む

──次に、その企業で「協業する仲間はどんな人か」「さまざまなプロセスや意識しなければならないことがある中でも過度なストレスなく研究開発を楽しめる環境か」といったことを考える上でのアドバイスをお願いします。

一野:自由でフラットに意見できる環境であることが、良いものを生み出す上では重要なのではないかと思います。先ほどもお伝えした通り、JTでは新しいアイデアが求められているので、若手も意見を主張できる文化があります。

先日もふらっと歩いてきた所長に話しかけられて、ある開発についての意見を聞かれました。特に自分のことを試しているわけではなく、純粋に意見が聞きたかったようなので思ったことを素直に話したのですが、他社の友人の話を聞いていると、自分の意見を上司や上の立場の人にここまではっきりと伝えられる会社は珍しいようです。

──人事の方から、「R&Dグループでは、研究開発員を放牧しているみたいなものです」と聞きました(笑)。それくらい自由な雰囲気があるからこそ、業務に取り組みやすいということですよね。

本溜:「固い雰囲気でnot to do で縛られるような組織では、メンバーの思考も固まってしまう」という考えの会社なので、「トップスピードで走れるくらいの環境は用意するから、あとは自由にやってくれ」という意図なのだと思います。

また、多くの部分を自社開発していることもあり、「研究開発にはひとりの天才が必要なのではなく、チームワークで乗り越えることが重要である」という考え方が強くあります。チームワークを良くするのであれば、やはり人と人との関係性が大切ですし、関係性を良くしようと考えると、一人ひとりが窮屈さやフラストレーションを抱えず、仕事を楽しみ、やりがいを感じられるようにすることが重要です。だからこそ、このような風土が深く浸透しているのだと思います。

JTのみならず、研究開発を行うチームには、さまざまな意見を出し合い、共有して、新しいアイデアを芽生えさせる創造力が必要です。したがって、社風や、その企業に集まる人から、そのような力が発揮されやすい環境なのかを見るのが良いのではないでしょうか。

SECTION 6/6

変化する環境を楽しみ、のびのびと研究に打ち込もう

本溜:先入観に囚われずに、視野を広げて物事を捉えてください。例えば、たばこに対して「大変革のタイミングである」というイメージを持っていた学生の方はあまり多くなかったのではないかと思います。一歩踏み込んで中身を知ることで、面白いと思えるような領域で、自分に合った選択ができるのではないでしょうか。

JTはなぜか固い会社だと思われがちなのですが、自分でお客様を見つめて考え、可能性がありそうな施策やアイデアであれば自由にやらせてもらえる、そんな文化の会社です。今は変化のタイミングでもあり、好奇心旺盛で活発に動ける方に、是非興味を持っていただけたら嬉しいです。

一野:当然のことではありますが、皆さんのキャリアは入社してからがスタートです。その時その時で自分が気になることに軸足を置けるような柔軟な会社を選ぶことで、入社後も成長し、新たな道が開けるのではないかと思います。

会社に入って思うのは、変化することがとても重要だということです。この先10年、20年とキャリアを積み上げてもその経験に驕らず、若い人のアイデアを活かせる人でありたいなと考えています。変わることをいとわず、楽しめるかどうか、自分がのびのびできる環境かどうかを重視してキャリアを考えると、良い選択ができると思います。

編集:

注目企業