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COLUMN

織田のキャリア論「会社がつぶれてもキャリアは成功できる」

公開日:

Written by 織田 一彰

Edited by 長嶺 匡晃

「企業名ではなく、何ができるようになるかで選ぶべき」「サマーインターンはあえて興味がない業界もみてみよう」──戦略コンサルタント出身・連続起業家でありながら、アジアのトップ校でキャリア論の講義を手がけるGoodfind講師の織田が登場。キャリア選択における目から鱗のエッセンスをお伝えします。

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「どの会社がつぶれないか、教えてください! 」

「つぶれない会社を教えてほしい」──これはセミナーで学生から最も聞かれる質問の1つです。この答えとしては、「東京電力」や「JR各社」、原子力事業など国策に関わる製品を作る「日立製作所」などがありますが、恐らくこういう回答は期待していたものとは違うのではないでしょうか。

1年から5年後の未来であれば、現状からある程度推測することができますが、10年後や20年後にどこの会社が繁栄しているかなんて誰にも分かりません。それこそ、タイムマシンがない限り不可能です。

しかし一方で良いニュースもあります。そもそも「どの会社がつぶれるか、生き残るかなんて考えなくてもいい」のです。

大事なのは「どこに入るか」ではなく、「何をするか」「何ができるようになるか」です。今回は、自分に合ったキャリアを歩む方法をお伝えします。

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「企業」と「個人」の命運は別物である

「つぶれない会社を知りたい」と思う背景には、おそらく「つぶれない会社に入社すれば、安定したキャリアを手に入れられる」という考えがあるはずです。

しかし、この論理には飛躍があります。より厳密に書くと「つぶれない会社に入社すれば、会社は雇用を保障してくれるため、安定したキャリアを手に入れられる」となりますが、今の時代、会社は必ずしも雇用を保障してくれるとは限りません。

たとえ企業が倒産せず生き残ったとしても、リストラや事業分割という名の強制的な転職により個人が会社から離れざるを得ないケースはいくらでもあるのです。

その理由の1つは、織田のマクロ経済学(2)でも説明したように、日本のGDP成長の鈍化によって、終身雇用というシステムが崩壊しかけていることが挙げられます。

同じ話を繰り返してもつまらないので、今回は商品の流行り廃りから読み解いてみましょう。これを説明するマーケティング理論として、プロダクト・ライフ・サイクル(PLC)があります。

PLCとは製品が市場に投入されてから、成長・衰退するまでの過程を「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の4つの段階に分けて説明したモデルですが、そのサイクルが年々短くなっているのです。

プロダクト・ライフ・サイクル

テレビを例にとって考えてみます。ブラウン管テレビは1970年代に普及後、薄型液晶テレビが登場するまでの約30年間、安定した生産が続きました。しかし、ブラウン管テレビの後継として現れた液晶テレビは2010年にピークを迎えた後、一気に生産量が激減し衰退していったのです。

その背景は皆さんもご存じの通り、スマートフォンや動画投稿サービスの爆発的な普及など、余暇の過ごし方が多様化したためと言えるでしょう。

ブラウン管テレビと液晶テレビの国内出荷台数
ブラウン管テレビは成長・成熟期が約30年間続いたが、液晶テレビは成長から4年程度で衰退した。
JEITA「民生用電子機器国内出荷統計外部リンクアイコン」をもとに作成

テレビに限らず、現在ではグローバル化や連続的な技術革新により、あらゆる製品の流行り廃りが激しさを増しています。たとえ製品が衰退しても、基幹技術やノウハウが他の製品に十分活かせるならまだしも、次の製品の市場規模が小さい、もしくはこれまで培ったノウハウを活かす場面がないのであれば、事業や組織の変化も余儀なくされるでしょう。

例えば近年の日本の電気メーカーの売上はおおむね安定していると言えますが、その売上を構成する事業は、同じ会社とは思えないほど変化しています。ある企業では、2010年の売り上げ構成はテレビやオーディオといったエレクトロニクス事業が6割を占める基幹事業でしたが、2018年には2割台まで減少、それに代わってエンターテインメント事業が売上の多くを占めるようになりました。

この事業構造の変化の中で、テレビやオーディオに従事していた人たちが他の事業に移れなかった場合、事業の縮小・撤退と同時に強制的に退職になってしまうのです。

そのように考えると、今の時代の「安定」とは、1つの事業や組織に依存することではなく、時代を越えて活かせる専門性を持つことだと言えます。それらを身につけるには、「どこに入るか」ではなく「そこで何をするか」。企業名ではなく、「職種」や「何を経験して」「何ができるようになるのか」で選ぶことが重要になります。

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「なれる自分」の先にある「なりたい自分」

とは言うものの、どのように「時代を越えて活かせる」「自分が身につけるべき」専門性を決めればいいのでしょうか。「時代を越えて活かせる」という意味ではこちらの記事でも紹介しているように、新しいテクノロジーや人口動態といったマクロトレンドから、市場が求めている専門性を探す方法もあります。

「自分が身につけるべき」という観点として私がお伝えしたいのは、「自分の強みを把握して、どのような自分になりたいかを探す」方法です。

自己分析を通して「将来像」や「10年後の自分」を考えるうちに「自分にはこの道しかない!」「この会社に入らないとキャリアのステップとして失敗である」というように、「なりたい自分」を実現するには1つのルートしかないと思い込んでしまう人を多く見かけます。

しかし視野を広げてみれば、別の選択肢だってたくさんあるはずです。たとえC・ロナウドのようにスピードとフィジカルの強さでゴールを奪い取ることができなくても、メッシのように戦術眼やボールコントロールを駆使して貢献する方法だってあるはずです。

大事なのは、「正解は幾通りもある」ことを認識すること。その上で、自分の強みを冷静にとらえることです。「なれる自分」から自分に合ったプレースタイルを確立していくことが、才能開花の近道だと私は思います。

自分の強みを認識し、「なれる自分」から「なりたい自分」を目指す

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自分の強みを見つける5つの方法

しかし、「なれる自分」は意外と自覚がないものです。生まれ持った才能がある分野では、それほど努力もせずにできてしまうがために、自分でも大したことではないという印象持ってしまうからでしょう。ここでは、自分の強みを見つける上でおすすめの方法を5つ伝授します。

1. 自分をよく知っている人は「友人」ではなく「親」

自分の適性を知るために、親に聞いてみるのは1つの方法です。親は幼少期から大人になるまでの成長過程を知っているため、自分の根本的な長所、短所を一番知っている存在と言えるでしょう。また、親子は得意・不得意領域も似てくるため、実は自分が気づいていない適性についても理解している場合があります。

ただし注意する点もあります。自分の適性については問題ないですが、親の時代と現代では、優良企業も環境も違うので企業や業界の情報は聞かない方が良いかもしれません。

2. サマーインターンはランダムに受けてみよう

企業の選び方としてもおすすめですが、自分に合った専門性を見つける上でも「サマーインターンをランダムに受ける」のは有効な方法です。自分が興味のある会社に加え、いくつか「あいうえお順」に応募してみるのも面白いでしょう。もちろん、必ずしも自分に合うものばかりにはなりませんが、絶対に選ばなかった企業やそこでの働き方を見ることで視野が広まり、自分の常識が改まるきっかけになるはずです。

3. 社会人の先輩に会いに行こう

社会人、特に10年近く社会にいる先輩に会ってみてはいかがでしょうか。高校やサークルの先輩など、会社の利害関係なしに情報を教えてくれる先輩に話を聞くと、客観的かつ幅広い視点で社会が見えるようになるでしょう。

4. 起業する

もしプログラマーの友人がいる、もしくは自分がプログラマーの場合は、ためしに起業してみるのもおすすめです。法人登記する必要はありませんが、そのくらいのつもりでビジネスをはじめてみましょう。万一うまくいかなくても就職すればよく、その際も起業経験は活きていきます。

5. 休学して世界を回る

最後にお伝えしたいのが世界を見て回ること。視野はなるべく早い時期に広げておくに越したことはありません。1年の投資がその後の40年近くのキャリアにインパクトを与えると考えれば、それに値するだけの時間と言えるでしょう。就職するときの年齢が気になるかもしれませんが、数年遅れたぐらいでその経験を無視する企業など、こちらからお断りを入れた方が良いです。

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流行に乗ると、結局周回遅れになる

毎年多くの学生を見ていると、「過去の業績に連動した人気ランキング」や「尊敬する先輩が入社した会社」といったイメージが、就職活動に大きく影響を与えているように思えます。

しかし、情報は伝達して定着するまでにある程度の時間を要します。そのため、今みなさんが触れている情報は「実は10年前の常識であった」という事態も起こりうるのです。

もしも真剣に将来のことを考えるのであれば、社会の未来を想像して、そこから逆算して考えを進めなければなりません。

問題はタイムマシンがない限り未来が見えないということですが、どの会社が生き残っているのかは分からなくても、人口動態や経済動向といった大きなマクロトレンド、技術進展の具合などは予測することができます。それらを踏まえたうえで、自分の強みを活かせるキャリアに進むことが、みなさんの長い社会人生活を豊かにすることでしょう。

人生の選択は、自分で判断するのが正しい姿です。今後もGoodfind Collegeでは、マクロトレンドや業界についての情報を客観的な視点で伝えることで、みなさんが自分にとって正解と思える一歩を踏み出せるよう、サポートしていきます。

執筆

織田 一彰

織田 一彰

スローガン株式会社 共同創業者・エグゼクティブフェロー ケイ・コンサルティング株式会社 代表取締役 名古屋大学 客員教授 バンドン工科大学 客員講師
名古屋大学博士課程(数学専攻)からアンダーセン・コンサルティング(現・アクセンチュア)にて戦略コンサルタントとして日本と米国で活動。帰国後独立し、シリアルアントレプレナーとなり多くの上場・M&Aを経験。Goodfind立ち上げ後はシンガポール国立大学、インド理科大学院、バンドン工科大学などアジア国のトップ校で多数の起業講座を開催。

編集

長嶺 匡晃

長嶺 匡晃

Goodfind College 編集部
中学・高校と試験管の振り方が校内随一の理系少年だったが、浪人を経て慶應義塾大学経済学部に入学。大学時代は大小様々なインターンを経験し、10社目のスローガンでのインターンを経て新卒で入社。趣味は写真撮影、愛用機はPENTAX K-3とSigma fp。