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COLUMN

転職市場から逆算したファーストキャリアの選び方

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Written by 白鳥 陽太郎

Edited by はざまはとり

「就活当時、想像していたキャリアと違う」「それなりに経験を積んだはずなのに、いざ転職しようと思ったらうまくいかない」──希望を胸に新しい世界に踏み出したはずが、数年後にその選択を後悔する人が世の中には想像以上にいます。今回は、新卒・転職市場の双方をみてきたキャリアアドバイザーが登場。就活生に知っておいてほしい新卒・中途の違いと会社に依存しないキャリアを歩むためのコツをお伝えします。

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人生の主導権を握り続ける

自分の人生の主導権を握り続けるためには、選択肢は残されていたほうがいい。「そんなの当たり前じゃん」──そう言わずに、もう少しお付き合いいただきたい。私は日頃、転職市場というものに深く関わるキャリアアドバイザーの仕事をしています。日々、人々のキャリアの悩みに耳を傾けていると、そんな当たり前なことにも関わらず、どこかで人生の主導権を失いかけている方が多いことに気づきます。その理由は、就職活動におけるルールと、転職活動におけるルールとが混同されてしまい、その違いに気づかないまま、会社に依存したキャリアを歩んでしまうことが多いからです。では、そのルールとはなんでしょうか。

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アビリティとケイパビリティの違い

就職活動における評価軸の一つは、その学生の「アビリティ」です。ここでいうアビリティとは、SPIテストなどによって計測されるような言語・非言語の能力のことです。もちろん、エンジニア採用のような例外もありますが、多くのビジネス総合職においては、アビリティによって評価されます。一方、転職活動においては、アビリティではなく「ケイパビリティ」、つまりは専門的な職能によって評価されます。なぜなら転職市場においては、新卒市場とは異なり、「特定のポジションを補充する」という前提があるからです。

例えば、あなたが野球チームの監督だとしましょう。まったく野球をやったことがない未経験者だけでチームをつくるには、足が速くて、肩の強い人を選ぶかもしれません。しかし、それがプロ野球チームの場合、ピッチャーが怪我をしてしまって、新しい選手を補充したいときに必要なのは、ピッチャーとしての優秀さです。もちろん、身体能力が高いことは必要でしょう。ただ、身体能力の高い陸上選手を連れてきても、プロの試合には勝てません。

新卒市場と転職市場では、採用前提が違うため評価基準も異なる

この違いを知らなかったがために招かれる悲劇が、転職市場ではよくみられます。ひとつ、事例を紹介しましょう。Aさんは、有名私立大学を卒業後、晴れて某メガバンクの総合職に入社します。調べればわかるように、メガバンクの総合職の年収は20代の後半には700万円前後にまで上がっていきます。入社後4〜5年の間に彼が経験した業務は、1年間の研修の後に支店での窓口業務を2年。その後、法人営業を1年。そして、そこでの成果が認められ、本部でのミドルオフィス業務に異動になりました。ただ、法人営業経験のなかで、中小企業の経営者たちと出会い、「より直接的に売上に貢献したい」という気持ちが芽生えたAさんは、マーケティング職としてのキャリアチェンジを目指します。さて、どうなるでしょうか。

先に書いた通り、転職市場では、「ケイパビリティ」により評価されます。Aさんの職歴で、いきなり事業会社のマーケティングポジションに転職できる可能性は低いでしょう。また、マーケティングを支援する広告代理店の営業、もしくはマーケティングツールを提供する会社のセールスポジションでも、評価されるのは1年間の法人営業だけです。しかも年収は700万円。ほぼ未経験なら、年収は400〜500万円にまで下がるでしょう。さて、あなただったらそこまでして、キャリアチェンジしたいと思えるでしょうか。ファーストキャリアを選ぶときに、自分が何屋になるのか、仕事を通じて獲得できるケイパビリティを理解しておくことは重要です。

これまでの経験で得た実務能力(=ケイパビリティ)がすべて評価されるとは限らない

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ケイパビリティのトレンドを読み解く

では、どのようなケイパビリティを選べばいいのでしょうか。まずは分かりやすいところからいきましょう。シリコンバレーにあるビジネスに特化したSNSを提供するLinkedIn社では、企業が求めるスキルを毎年発表しています。

企業が求めるハードスキルTop10(2020年度)

  1. ブロックチェーン
  2. クラウドコンピューティング
  3. 分析的推論(アナリティカル・リーズニング)
  4. AI
  5. UXデザイン
  6. ビジネス分析
  7. アフィリエイト・マーケティング
  8. 営業
  9. サイエンティフィック・コンピューティング
  10. 動画制作
参照:The Most In-Demand Hard and Soft Skills of 2020

なるほど、ブロックチェーンか。じゃあブロックチェーン企業に。ではなく、もう少し掘り下げて見てみましょう。例えば、ランキングを過去数年分並べて、傾向を見てみてはどうでしょうか。ランキングとはオリコンのヒットチャートのようなもので、流行り廃りがあります。数年の傾向を見ると、もう少し大きなトレンドが見えてくるはずです。それはビジネスのトレンドそのものと言えるでしょう。

参照:企業が求めるスキルランキング2020,2019,2018,2017

例えば、カスタマーサクセスという職種が、近年その重要性を増しています。その背景には、近年SaaS業界が活気づいており、医療×SaaS、HR×SaaSと特定の産業領域に特化したビジネスが多く登場していることが挙げられるでしょう。また、マーケティング活動(を中心に企業活動全体)がデジタル化しテクノロジーの要素が多くなったことで、ビジネス職にも簡単なプログラミングスキルや、数理能力が求められるようになっています。

ランキングの傾向からビジネストレンドを読み解けば、ケイパビリティトレンドがみえてくる

もう一歩踏み込んで考えてみると、業界や産業を超えた、真にアップトレンドなケイパビリティが見えてきます。

先程紹介したようなビジネストレンドは、さらに大きなマクロトレンドの影響を受けているはずです。例えば、人口動態というのは、簡単には変わらない大きな時代の流れです。現在の日本の人口は約1億2000万人。およそ30年後の2053年には1億人を切るというのが政府の発表です※1。働く人は減っていくけど、経済成長は止めるわけにはいかない。であれば、一人あたりの生産性を上げるしかない。しかも、働き方改革という労働時間が減っていく流れの中で。

そうなると、大きな方向性としては、自動化や効率化といったテーマに焦点があたってきます。それを支えるのがAIやRPAといったテクノロジーです。もちろん、業界や産業ごとに緊急度や難易度も異なるはずです。人手不足が深刻なのに、まだテクノロジーが入り込んでいない業界はどこでしょうか。そこに次のイノベーションのフィールドがあるはずです。そして、そこには新たなビジネスのチャンスがあります。

アップトレンドなケイパビリティはマクロ/ビジネストレンドからつながっている

このように、いまの流行りではなくより大きなトレンドを読み解きましょう。そうすれば、アップトレンドなケイパビリティが見えてくるはずです。くれぐれも、「いま」流行っているものではありません。ダウントレンドのケイパビリティにはご注意あれ。

※1 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」

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汎用性が高いキャリアに働きがいはあるのか

さて、ここまで新卒市場と転職市場の違いから、「ケイパビリティ」(職能)の重要性とその評価の仕方について書いてきました。ここでちゃぶ台を返すようですが、このような汎用性の高い(=幅広いケイパビリティを獲得できる)キャリアのなかに、はたして働きがいはあるのでしょうか。もちろん、自分でキャリアを選べるということは、より良いキャリア人生を歩む上で大切なことです。ただ、「転職可能性=良いキャリア」というのも言い過ぎでしょう。

ここで一つのレポート※2を紹介します。マッキンゼーに勤めていたニール・ドシとリンゼイ・マクレガーは、とあることに興味をもちます。それは、「従業員のパフォーマンスを決定する要因は何か」という問いです。そして、彼らは、直接的動機(楽しさ・目的・可能性)と、間接的動機(感情的圧力・経済的圧力・惰性)とに動機の種類を分類し、直接的動機が強い社員のほうがパフォーマンスが高いと結論づけました(ちなみに経済的な報酬はマイナス要因)。上記に述べたケイパビリティとは、ここでは直接的動機の「可能性」にあたります。さらに、人がもっともパフォーマンスを発揮するのは、「楽しさ」による動機づけであるとも言及しています。

つまり、そのミッションや社会的意義に共感できる会社に入ること(目的)、自らの選択肢を増やすケイパビリティを獲得できること(可能性)と同時に、その仕事自体を楽しめるかということが、より良いキャリアには不可欠なのです。

※2 ニール・ドシ, リンゼイ・マクレガー, 野中 香方子(訳)『マッキンゼー流 最高の社風のつくり方』(日経BP,2016)

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自立した人生を歩もう

「楽しむ」ことの重要性を示す良い例があります。とある戦略コンサルティングファームに勤める男性が、30代前半にしてパートナーの一つ手前まで昇進しました。同期ではぶっちぎりです。さて、彼の働く目的とはなんでしょうか。とても印象的だったのは、「コンサルティングが楽しいから」という話でした。その後のキャリアに有利だから、高給だから、モテるからという理由ではなく、コンサルティング業務そのものが楽しいから仕事を続けていると言うのです。日々、顧客・企業のためにラーニングを繰り返し、顧客・企業のために知恵を絞って提案する行為そのものが好き。だからやってるという訳です。

まさに、「好きに勝るものなし」です。スポーツだって、音楽だって、なんだってそうだったはずです。練習が終わって帰る人と、好きだから、という理由で休みの日も家に帰ってからも、練習し続ける人。達人とは行為そのものを愛せる人です。

きっと、あなたにもなにかあるはずです。寝食を忘れて没頭してしまうものが。書店に行くと、自然と足を運んでしまうコーナーが。就職活動という僅かな期間で、自分自身を理解するということは、あまりに難しいかもしれません。ただ、自分が好きになれるか・なれなさそうか、くらいはわかるはずです。もちろん、食わず嫌いはよくありません。天職を掴むためには、好奇心が大切です。せっかくですから、新しい機会があれば飛び込んでみましょう。そして、少しでも心に触れるものがあったならば、好きか嫌いかを確かめるために、本の一冊でも読んでみてもバチは当たらないはずです。その際、その仕事に没頭すると、どんなケイパビリティが獲得できそうかを確認することもお忘れなく。

長くなりましたが、映画「ニュー・シネマ・パラダイス」からの引用で終わります。

自立したキャリア人生を歩むためにも、選ぶ仕事を愛することです。

Writer

白鳥 陽太郎

白鳥 陽太郎

スローガンアドバイザリー株式会社
2013年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、スローガンに入社。ベンチャー企業に向けた新卒採用支援、Goodfind Magazine編集長を務めたのち、2016年よりスローガンアドバイザリーに立ち上げメンバーとして参画。社会人向け人材紹介事業の法人営業やキャリアアドバイザー、webマーケティング、経営管理などに従事。2019年よりスローガンアドバイザリーの取締役に就任。

Editor

はざまはとり

はざまはとり

Goodfind College 編集部
北海道大学工学部卒。周りに進学をすすめられるも自由を求めて渡仏。1年弱のゆるやかな留学を終え帰国後、就活を始める。早々にスローガンと出会い入社。Goodfindメディア編集長を経験して今に至る。