GoodfindCollege

COLUMN

バイアスに振り回されない、これからの優良企業の見分け方

公開日:

Spoken by 伊藤 豊, 織田 一彰

Written/Edited by 石原 有紗

未曽有の変化を逞しく生き抜くための本質的なキャリア論を展開する「緊急討論ライブ」。第四回は、創業15年目にして初めて、Goodfind代表・伊藤と、共同創業者・織田が揃って登壇。未曾有の状況の中、学生はどのようにキャリアを考えるべきなのか? 今だからこそ見定められる、入るべき企業の特徴を解説します。

Section

1

| 5

Goodfind代表が語る
今入るべき企業を見分ける3つのポイント

──伊藤さんより、今入るべき企業を見分ける3つのポイントを、ズバリ教えてください。

伊藤:キーワードは、

  1. デジタル
  2. アジリティ
  3. パーパス

の3つですね。

デジタルとは、企業のデジタル適応力を見ましょうということです。

コロナウイルスは感染拡大と縮小を繰り返し、最終的に落ち着くまでには2年程度掛かると私は見ています。その間に業務のオンライン化や事業のデジタル化が進み、不要な移動や集合がなくなります。これは、不可逆的な変化となるはずです。

また、今回の新型コロナで、ウイルスの危険性が世に示されてしまい、バイオテロやコロナより怖いウイルスが出現した場合のリスクも想定されるようになりました。企業の危機管理においても、いわゆるBCP※1のアップデートが進むこともあり、ますますデジタル中心の世界となっていくと考えられます。デジタルに適応できていることが、企業が存続するための前提条件となるでしょう。

企業のデジタル適応力を測るためには、「コロナの影響でリモートワークになってから忙しくなったかどうか」を質問してみるといいでしょう。リモートワークを実施していると謳っていても、ほとんど平常時と変わらず業務遂行できている企業もあれば、実質自宅待機という企業もあり、意外と差分が現れているはずです。上記の質問をすることで、デジタル対応力が垣間見えると思います。

次にアジリティについて。日本語だと俊敏性と訳されますが、企業が大胆な変革をどれだけ速く意思決定できるかということです。今、世の中が大きく変化している中で、大胆な変革がどれくらいできているのか、どのような意思決定をしているのか、そしてその実行スピードが速いのかどうか? といった部分からは、すごくわかりやすくアジリティの差分が見えます。

最後のパーパスは、企業の目的、存在意義という意味です。普遍的に重要な観点ではありますが、パーパスが社会の需要とマッチしていて生き残れそうなのか、自分が共感出来て気持ちよく働けるのかどうかは、改めて重視すべきだと思います。

今は様々な産業・業界がデジタルに移行しているタイミングですが、既存の需要が減っていることから景気がダウンしています。その中で、より需要がある、社会にとって必要な事業をやる、という意気込みを持って運営されている会社は当然伸びやすいと考えられます。

また、優秀な人材を集める上で、パーパスの共感度が高い会社の方が魅力的に見えるのはもちろんのこと、リモートワーク状況下でも、共通の意義を分かち合えているという心理的安全性があるほうが、企業の基盤として強いのではないかと思います。

※1 BCP:Business Continuity Planの略で、事業継続計画と訳される。企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のこと。

Section

2

| 5

名物講師織田が語る
今入るべき企業を見分ける3つのポイント

──織田さんからも、今入るべき企業を見分ける3つのポイントを教えてください。

織田:

  1. 個人と企業のベクトルが合っているか?
  2. ヒューマンスキル、EQが高い会社か?
  3. 「やんちゃな人」を採用しているか?

の3つです。

まず、個人と企業のベクトルが合ってるか? これは伊藤さんが仰っていたパーパスに近いものです。最近、「自分が思っていたのと違ったから」という理由で転職する若手が多く見受けられますが、「その会社に行けば勝ち組・かっこいい」という、他人の評価を気にしすぎた価値観で会社を選んだ結果として起きていることです。自分と会社の方向性が合ってるかは、改めて重要な観点だと考えています。

次に、ヒューマンスキルやEQ※2が高い会社か? 過当競争の外部市場や、様々な人々が異なった目的や価値観で働く現代において、人の感情を慮れる良い人であるということが価値の一つになるからこそ、組織全体のヒューマンスキルが高いかどうかは見るべき観点だと考えています。

現在、モノやサービスの価格はWEB上ですぐに把握することができますし、流通も発達しており、世界中のどこにある商品でも届けてもらうことができます。そうなると、経済的・物理的合理性だけでは差別化が難しくなっており、顧客は「誰から買うのか」をより重視するようになります。「この人は裏切らないし、法外な価格で売らない」という信頼を獲得できるのかが、ビジネスを行う上での鍵になるのです。

また、インターネット上には評判が残りやすく、EQが低い人や組織は悪い評価が広まり、淘汰されていくように思います。そう考えると大変有機的な社会が実現されつつありますが、だからこそ、その企業の人材のEQやヒューマンスキルの高さは、選考を受ける中でチェックすべきだと思います。

3つ目、「やんちゃな人」を採用しているか? ここでいう 「やんちゃ」とは「パーパスや価値観は一致しているが手段が逸脱している人」、言い換えると、その会社におけるちょっと変わった人です。「やんちゃな人」を採用していない会社は変化しにくく、これが変化の激しい外部環境への適応ができないリスクになると考えています。

高度経済成長期は市場が伸びていたので、和を乱さず、皆で一律に頑張っていくことが戦略的にも正しい時代でした。しかし、成熟しきった市場も多く、新しいものを生み出す必要がある現在、変化因子となる「やんちゃな人」を採用しないと、ディスラプションできず、どこかで成長が止まってしまいます。

このような人材が企業にいたとしても、選考では中々会えないと思います。会社が「やんちゃな人」を採用しているかを判断するには、「組織の多様性が高く、一定の流動性があるかどうか」を見てみるとよいかもしれません。やんちゃな人”の気質として同じ組織に長く属することが少ないため、起業した人がどれだけいるかなどを、調べてみることをおすすめします。

※2 EQ:Emotional Intelligence Quotientの略で、日本語では心の知能指数、などと訳される。1989年に初めて論文発表された比較的新しい概念であるため、定義が未だはっきりとはしていないが、自己や他者の感情を知覚し、また自分の感情をコントロールする知能を指す。

Section

3

| 5

本質を捉える情報収集のコツとは?

──今入るべき企業を見分けるポイントを教えていただきましたが、企業研究や業界研究においてどのように情報を集めるのが良いのでしょうか?

伊藤:普遍的な深い内容を知りたい場合は書籍を読むのが良いと思いますが、本になる時点で少々遅れた情報だということは認識しておくべきでしょう。また、立場上本には書けないような情報にこそ、コトの本質や真実が存在するというのも事実だと思います。そのような情報は匿名アカウントのツイートとして流れていることもあるので、いいなと思う発信源を見つけておくと良いのではないでしょうか。

織田:私は、その企業や業界に属する人からの一次情報をとても重視していますが、どの情報を扱うにせよ意識すべきなのは、伝える側と受け取る側、それぞれにバイアスがあるということだと思います。

──バイアスとは具体的にはどのようなものなのでしょうか?

織田:伝える側のバイアスとは、以前の討論ライブでもお話した、全ての人間は無意識にポジショントークをしてしまう、ということです。だからこそ聞く側は、複数の情報源からの情報を集めて、統合的に考えることで、確率よく質の高い情報を探し出すことが重要なのです。

受け取る側のバイアスとは、人間は情報を受け取った時点で好き嫌いを判断し、自分に都合の良い情報を残しそれをサポートする理由を探して付け足すという行為をする、というものです。私も重要でない情報は3秒で忘れてしまいますし(笑)、生物としてそのようなバイアスを持っていることを認識しておくことは重要だと思います。

伊藤:受け取る側のバイアスは、まさに「確証バイアス」のことですね。よくある事例でいうと、高い偏差値の大学出身だからこそ内定を得られる有名企業に入社すべきだ、という前提を置き、有名な難関企業を目標にロックオンして、その会社に関する良い情報しか受け入れないことなどでしょうか。例えば、外コンは就活市場において人気がありますが、入社することを正当化するために、他の選択肢やマイナスの情報は受け入れず、外コンを支持する情報ばかり集めて固執してしまうという学生の方は、多くいらっしゃいますね。

伊藤:世の中が急激に変わっている今の時代、周りが良いと言っていることをそのまま信じこんで、バイアスにより思考をロックしてしまうのは、あまりにリスクが大きいことだと思います。バイアスを取り除くのは難しいことではありますが、それをメタ認知※3して考慮に入れられることが重要ですね。

※3 メタ認知:自分自身が行っている行動や思考などを対象として、客観的に認知している状態をいう。

Section

4

| 5

バイアスに振り回されないためには

──バイアスを取り除いた意志決定を行うためには、何をすべきなのでしょうか?

伊藤:まずはバイアスについて学ぶことが重要だと思います。確証バイアスやハロー効果など、バイアスの種類を勉強しておくと、自分の思考の癖に気づきやすくなりますよね。

List of cognitive biases (May. 30, 2020, 10:57 UTC). In Wikipedia: The Free Encyclopedia.」 をもとに作成

また、自分の意見を客観視して批判的に考えてみることも、良い訓練になると思います。普段から何かを考える際に「その意見にはどのような反論が出ると思うか?」「その反論についてどう思うか?」と自問自答する習慣を付けておくと、自然と自分の意見にこだわりを持ちすぎず、別の視点から考えることができるようになると思います。

織田:反対意見に対する受容性を高めるのは重要ですよね。ビジネスの現場でも、批判も含めて議論することで、古い価値観を捨てた新しいものやアイデアが生まれます。オープンマインドな状態で意見を素直に受け入れて、柔軟に思考できることは必須スキルだと思いますが、人間にはエゴもあり、なかなか難しいです。しかしできる社会人ほど反対意見や批判をアドバイスとして受け入れているので、是非学生のうちから鍛えてほしいですね。

Section

5

| 5

不確実な状況だからこそ、気楽に、客観的に考える

──最後に、学生の方へメッセージをお願いします。

織田:私からはもっと気楽に考えましょう、ということをお伝えしたいです。これから多くの経験を積む中で自分の考え・やりたいことはいくらでも変わります。また、今回の新型コロナのような社会的な変化もたくさん起こります。その度に、そもそも自分が何をしたいのか? を考えていくことになるでしょう。不確実な世界で、新卒入社の会社だけで人生が決まるということはないですし、もっと50年、60年というスパンで働くことを考えると、肩の力を抜いて、少々気楽に考えてもいいのではないかと思います。

伊藤:大転換のタイミングだからこそ、フラットに客観視することの重要性を強調したいと思います。自分の頭にこびりついている古い価値観をいかにアンラーニングするかが、より良いキャリア選択を行うためにも、仕事で成果を出すためにも大切です。

そこで必要となるのは、フィードバックを貰える力です。自分が間違っている可能性があるという姿勢を持ち、相手からフィードバックを得られるということもスキルの一つだと思います。指摘してもらえる状態でいる、そしてそれを受け取れることは、一生使える、強い武器になるはずなので、今から身につけてもらえると良いかと思います。

話し手

伊藤 豊

伊藤 豊

スローガン株式会社 代表取締役社長
1977年栃木県生まれ。2000年に東京大学文学部行動文化学科心理学専修課程卒業。日本アイ・ビー・エムを経て、2005年にスローガン株式会社を設立し、2006年よりGoodfindの運営を開始。その後、キャリア分野のサービス以外にも、FastGrowやTeamUpなどメディア・SaaS分野での事業を展開。
織田 一彰

織田 一彰

スローガン株式会社 共同創業者・エグゼクティブフェロー ケイ・コンサルティング株式会社 代表取締役 名古屋大学 客員教授 バンドン工科大学 客員講師
名古屋大学博士課程(数学専攻)からアンダーセン・コンサルティング(現・アクセンチュア)にて戦略コンサルタントとして日本と米国で活動。帰国後独立し、シリアルアントレプレナーとなり多くの上場・M&Aを経験。Goodfind立ち上げ後はシンガポール国立大学、インド理科大学院、バンドン工科大学などアジア国のトップ校で多数の起業講座を開催。

執筆/編集

石原 有紗

石原 有紗

Goodfind College 編集部
横浜国立大学理工学部卒。情報工学を学ぶもビジネスの面白さに取り憑かれ、4年の夏に院進を取りやめ就活。スローガンに入社後、エンジニア向け新サービスの立ち上げを経て現職。