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COLUMN

データ戦略が競争力に直結する時代。デジタル対応力の高い企業の見分け方

皆さんは就職活動の中で、企業の成長可能性をどのように見極めていますか?業績やビジネスモデル、市場の分析が一般的ですが、本格化するデジタル時代の到来を前に「データの利活用に成功しているか」という観点を持つことをおすすめします。そこで本記事では企業のデータ活用の現状と課題、そして成果をだすためのポイントなどについて、企業の最前線で活躍するデータサイエンティストにお話を聞きました。

SPONSORED BY アフラック生命保険株式会社

話し手

松田 康隆

松田 康隆

アフラック生命保険株式会社
デジタルイノベーション推進部
デジタル技術支援課

SECTION 1/6

データを制す企業がビジネスを制す

企業の経済活動を取り巻く外部環境が大きく変化している昨今。企業選びにおいて「激動の時代を生き抜いていける会社なのか」という点が気になる人は多いでしょう。UberやAirbnbのようなディスラプターが既存の産業構造や業界ルールを書き換えている中で、多くの企業で課題となっているのがデジタルを活用したイノベーションの推進です。イノベーションの鍵となる要因はさまざまですが、今回はその中でも「データの利活用」という点に着目しました。

IBMが世界の13,000名以上の経営層に対して実施した、データの利活用についての調査結果(注1)から、データの利活用と企業の競争力の関連性を読み解くことができます。同調査では「データからの価値創出能力」と「データ戦略と事業戦略の融合度合い」の2つの軸で企業を評価し、その評価に応じて企業のデータ・リーダーシップを「先導者」「探求者」「推進者」「始動者」の4つの型に分類しています。

そのうち最もデータの利活用が進んでいる「先導者」の企業群は、データ活用を始めたばかりの「始動者」の企業群と比較して、売上成長率・収益性・イノベーション力・企業変革力という点で一貫して競合他社を凌駕した成果を出しているという結果が出ています。「先導者」の企業群では、経営層がデータを活用するべき資産と認識しており、全社的にもデータを信頼する企業文化があります。また、データへアクセスする力・そこから洞察を生み出す力、価値を創出する力が高い傾向にあります。この結果から、データの利活用がいかに企業の事業成長やイノベーション創出を左右する重要なポイントになるかが分かるでしょう。

では、データの利活用に成功している企業かどうかを見分けるためには、どのような視点を持つべきなのでしょうか。そのヒントを得るために、外資系コンサルタントの時代から長らくデータ利活用に携わり、現在はデータサイエンティストとして活躍するアフラックの松田氏にお話を伺いました。

(注1) 出典:グローバル経営層スタディ第20版『信頼による卓越 AI/Data包摂時代のリーダーシップ(IBM)

SECTION 2/6

DXで成果をあげるアフラック・イノベーション・ラボ

──まずは松田さんご自身のキャリアについて教えてください。

大学で数学を専攻した後、公認会計士としてキャリアをスタートしました。その後外資系コンサルティング会社に移ったのですが、本格的にデータ分析業務を担当するようになったのは5~6年前からです。その頃、先進的なライブラリのオープンソース化や計算機価格の下落により、世界的に機械学習・AIブームが発生し、日本でもAIを用いた業務高度化・自動化やビッグデータ分析のプロジェクトが各社で立ち上がりました。私自身もそういったプロジェクトを担当する機会が自然と増え、現在に至っています。

──アフラック・イノベーション・ラボとはどのようなところでしょう?

アフラック・イノベーション・ラボは、社内のフィンテックや新規事業を推進するための新たな拠点として2018年8月に開設されました。人口減少・低金利といった厳しい外部環境の変化の中で、あらゆる金融機関がデジタルイノベーションを推進しようとしています。その中でも、アフラックの経営陣はデジタルイノベーションを単なるトレンドではなく長期的に取り組むべき課題と捉えており、社内でイノベーションが生まれやすい組織や文化を育むためにラボを開設しました。既存のビジネスや仕事の進め方に縛られないように、あえて本社機能がある新宿から離れた、スタートアップやITベンチャーが多く集まる渋谷エリアに拠点を置くなど、イノベーション創出の文化と組織を作るためにさまざまな工夫がされています。

同時に、アフラックの有する膨大なデータをサービス向上に有効活用するべく、データサイエンティストチームが発足しました。現在は社内のデータに限らず、外部データも組み合わせて、様々なビッグデータの分析やモデリングのプロジェクトを進めています。分析領域は大きくマーケティング関連と保険商品・給付関連の2つに分類され、私は主に前者を担当しています。

──具体的に、どのようなデータ分析に取り組んでいるのでしょうか?

一例として、お客様への最適な提案商品の推定モデルが挙げられます。アフラックでは、全国各地の代理店に所属する募集人(注2)がお客様との接点を持ち、保険商品を販売しています。どのお客様に電話をしてアポイントを取り、どのような商品を提案するかという判断は、これまでは各募集人の経験値に依る部分が大きかったんです。そのため、新しく募集人になった人や担当エリアが異動になった募集人が既存顧客リストを渡されても、「誰に何を提案すべきかわからない」というケースがありました。

それでは人が育たず知見も蓄積されづらいため、最適な提案商品をお客様別に推定する機械学習モデルを開発しました。これは、アフラックに蓄積された膨大な契約データやイベントデータを学習し、「こんなニーズがあるから、この商品を提案するとお客様に喜んでいただけそう」ということを予測するモデルです。このモデルのアウトプットを現場で活用することで、新人募集人でも自信をもって商品を提案することができますし、お客様も個別のニーズにより合った商品提案が受けられます。各ステークホルダーにとってメリットが大きい取り組みであり、積極的に推進されています。

(注2)募集人:保険募集人。生命保険や損害保険を販売する人のこと。

SECTION 3/6

データの利活用がうまくいく会社/いかない会社

──現職での経験に加え、前職でもコンサルタントの立場からあらゆる会社のデータ分析に携わってきた松田さんが考える、データ利活用がうまくいく会社の共通項があれば教えてください。

戦略観点ではデジタルイノベーションの正しい位置づけ、業務観点ではビジネスプロセスのアジャイル化、加えてインフラ観点では全社的なデータ整備が挙げられます。

まず戦略レベルで、デジタルイノベーションを目的ではなく手段として捉えているかが非常に重要です。デジタルイノベーション施策の失敗例としてありがちなのが、「とりあえず何かやろう」という方針で他社事例や海外事例をかき集め、総花的に案件を開始してしまうことです。会社の課題解決への貢献を評価しないまま案件を継続した結果、実運用に乗る前に案件が頓挫・終了してしまうケースは珍しくありません。デジタルイノベーションの取り組みを開始すること自体が目的化してしまうと、当然ながら実質的な成果からは遠ざかってしまいます。

アフラックのデータ分析チームでは、ビジネス部門の課題・ニーズを丁寧に分析して案件を企画することで、定量的・定性的に効果が期待できる案件を絞り込み、そこに集中的にリソースを投下する戦略をとっています。これにより企画と効果の結びつきを明確化するとともに、効果を発揮するまでの時間を短縮できます。

──データ自体に価値があるのではなく、データ分析が収益や課題解決に活かされて初めて意味があるということですよね。現場レベルで手段が目的化しない為に重要なポイントはありますか?

業務観点で重要なのが、“アジャイル”なビジネスプロセスです。デジタルイノベーションの取組は、顧客ニーズや外部環境の変化による、開発仕様の変更や優先順位の変化が常に発生します。よって、状況を正しく認識し、企画内容をクイックに転換できる状態を維持しなければなりません。そのためにはユーザである各ビジネス部門や代理店と緊密に連携し、プロダクトに対するフィードバックを受けるサイクルを短期的に繰り返す体制になっていることが重要です。

アフラックのデータ分析チームで開発を行う際には、「スプリント」と呼ばれる1~2週間の短いサイクルで計画を更新し、日常的にビジネス部門からのフィードバックを受けて軌道修正をしていくアプローチをとっています。これにより無駄な開発や要件違いを未然に防止し、効果に直結する作業に集中することができます。

──最後の全社的なデータ整備というのは、どういうことでしょうか。

一般論として、デジタルイノベーションの取り組みにおいてデータサイエンティストが価値を発揮するうえで、データの整備状況は極めて重要なポイントです。例えば、あるビジネス部門がExcelで毎月帳票を作成しており、その帳票内のデータの分析をデータサイエンティストチームに依頼したとします。その際にファイルのレイアウトが統一されていなかったりデータ定義が曖昧だったりするため、そのデータの前処理だけで大幅に時間を奪われたり、適切な分析が実施できないというケースが多いです。

また、過去に大規模な合併やシステム統合の歴史がある会社の場合、データの形式が統一されておらず網羅的な分析ができないこともあります。こういった問題はDX部門だけでの対応には限界があり、IT部門やビジネス部門も巻き込んだ全社的な取り組みが必要となるため、短期的な解決は困難です。その点、アフラックは過去の契約を含む各種データがしっかりと保存・整理されており、入社時に驚いたのを覚えています。そのおかげで、ストレスなくスムーズに分析業務を始めることができました。

SECTION 4/6

当事者として関わることで、より成果につながるデータ分析へ

──コンサルティング会社の方がより多くの企業のデータに触れる機会があると思いますが、松田さんはどうしてアフラックへ転職されたんですか?

一番の理由は、事業会社の立場でデータ分析に取り組みたかったためです。前職ではお客様先で仕事をしていましたが、外部コンサルである以上、3か月や半年といった短期間で支援を終えなければいけないことがよくありました。長期にわたるプロジェクトに継続的に関与し、腰を据えて課題解決に取り組みたいという思いが強くなりました。

また、コンサルティングを受ける側の立場を経験したことがなかった私は、仕事をする中で「本当にお客様の利益や、事業の長期的な成長につながる提案を考えられているのだろうか」「コンサルタントの都合を優先した提案をしていないだろうか」という課題意識を抱くようになりました。

確かにコンサルタントとしてさまざまな業界のお客様を支援できたことは自分のキャリアにとって素晴らしい経験でした。しかし、このまま事業会社側の悩みや課題感覚を実感できないままキャリアを積んでいくのはよくないと思い、転職を考えました。

──働いていて、どんな時にデータサイエンティストの仕事にやりがいを感じますか?

お客様への価値提供に直接的にインパクトを与える案件では、やりがいを感じやすいです。例えば、先ほどのマーケティング関連分析の例だと、データ分析を通じてお客様に適切な商品の選択肢を届けることが可能になります。保険について常に考えている人は少ないので、「本当はこの年齢・タイミングで医療保険に入っておいた方がいい」とか、「似たような状況の人の大半は加入しているのに自分は加入していない」といったことはお客様自身では必ずしも気付くことができません。

そこに私たちのデータ分析やモデルを活用することで、募集人を通じて正しい情報を提供し商品を提案することができ、ひいてはお客様の人生に対してポジティブな影響を与えることにつながります。これは当社のブランドプロミスである「『生きる』を創る。」にも直結する価値であり、データサイエンティストとしてこうした実感を持てる瞬間は今まであまりなかったのでやりがいを感じています。

──どんな仕事でも自分の付加価値が発揮できて、それを実感できたら嬉しいですよね。

また、アフラックの場合は、データ分析チームと他部門の連携を重視しているので、現場の課題認識にマッチする付加価値の高いモデルの構築がしやすい環境にあると思います。ビジネス部門との信頼関係を構築できると、様々なデータや現場での事例を提供してもらうことができ、それが別の課題解決に役立つ等、継続的に付加価値を発揮することができるようになります。

SECTION 5/6

データの量と独自性は分析のネタの宝庫

──データサイエンティストとして企業を見る際に、どんな点に注目されていますか?

扱うデータの魅力は重要です。私の場合、データ量の多さは興味をかきたてられるポイントでした。アフラックは業界最大手として2400万件超の契約を保有しており、お客様の属性情報やご契約情報の項目は2000を超えます。それらの社内データに加え、外部データも積極的に取得・活用してデータ分析を行っています。

データの種類が多いとその分発見も多いです。また、1~2万件のデータなら汎用のパソコンで簡単に処理できますが、2400万件となるとそれに対応したシステムやインフラ技術が必要になってきます。そういった技術も活かしたいと思っていたので、データ量の多さはモチベーションにつながりましたね。

──量だけでなく、保有しているデータの独自性という点でも面白そうですよね。

そうですね。アフラックのように2400万件を超えるがん保険や医療保険を中心としたご契約がある生命保険会社は少なく、大型の医療機関ですら持っていないような情報も社内に蓄積されています。また、外部の企業や自治体・研究機関などとの協業により研究を行うケースもあります。

分析するデータ自体が興味深いこともそうですが、独自性の高いデータを分析することで、世の中にまだ存在しない知見を発見したりモデルを開発するチャンスがあることもデータサイエンティストとしては嬉しいことですね。

SECTION 6/6

企業の保有するデータと活用力に注目しよう

データ戦略における企業の優位性を考えた時に、一般的には「歴史が長く規模の大きな企業こそ、データを大量に保有していて競争優位である」というイメージがあるかもしれません。しかし、松田氏の話を踏まえると必ずしもそうではない事が伺えます。

データ利活用が進んでいる会社とそうではない会社とでは、企業戦略におけるデータ活用の位置づけ、現場の業務体制、データの整備状況、データそのものの価値という4つの点で大きな違いがありそうです。

冒頭に紹介したIBMのレポート結果の中で、日本の経営者の回答傾向にフォーカスするとさらに面白い事実が浮かび上がります。世界と比較して、日本企業の回答者の実に3/4はデータ活用において最も重要となるユースケース開発ができていないと回答しているのです。また、ユースケース構築時に重要となるデータ収集・利用・共有状況や、データサイエンスに精通した組織や人材の整備という点でも世界に比べて低い数字が出ています。(注3)

多くの企業がデータ利活用に苦戦する中、アフラックのように明確な成果を出している企業は日本ではまだ少ないようです。だからこそ保有するデータの質やその保有状況、データ利活用に対する経営陣や現場社員の考え方という点に目を光らせることで、その企業が「データの時代をサバイブしていけるかどうか」を判断できるのではないでしょうか。

(注3) 出典: 「グローバル経営層スタディJapanレポート データ活用戦略の一般原理 顧客・企業・エコシステムをめぐるデジタル空間の価値転換」(IBM)

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