INTERVIEW
時間を生み出すインフラを創る。ひたむきに人の役に立つことを望んだ起業家の挑戦
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少子高齢化により労働人口の減少が進む日本。このままでは、いま企業で行われている業務の担い手がいなくなり、企業活動が停滞していく……。そんな課題に対して、企業が本当に成し遂げたいことに使える時間を生み出す、「未来へつながる時を生む」という志を掲げるのが株式会社TOKIUM(トキウム)です。創業からこれまでに生み出してきた時間は「930年」。そんなTOKIUM代表の黒﨑賢一氏から、学生起業の背景と、いかに日本を変えるのか伺います。
※本記事は2025年春発行『Goodfind Magazine #39』の特集企画「Goodfindが選んだ 日本を変える企業」に掲載予定です。
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SPONSORED BY 株式会社TOKIUM
話し手
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黒﨑 賢一
株式会社TOKIUM
代表取締役
SECTION 1/6
未来へつながる時を生む「社会インフラ」を創る
⸺まずはTOKIUMが日本のどのような課題にアプローチしているのかについて教えてください。
黒﨑:我々が対峙している課題は、労働人口の減少です。少子高齢化によって日本の労働人口は、2050年には現在の約70%の5,275万人になると見込まれています ※1。このままでは多くの企業で、成長に必要な業務に人材を投下できなくなってしまうでしょう。
この課題解決には労働生産性の向上が必要です。そこでTOKIUMは「支出管理プラットフォーム」を通じ、我々の志である「未来へつながる時を生む」ことを目指しています。
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前提として、支出管理に大きく関わる、経理を担当する部署はすべての会社に存在します。多くの経理部は、会社の意思決定に関わるような付加価値の高い仕事に時間をかけたいと考えていると思いますが、様々な煩雑な業務が山積しているため、それができない環境にあります。TOKIUMはその要因となっているような業務を「支出管理プラットフォーム」を通じて全て引き受け、集中処理することで、より良い世界を志す人々が付加価値の高い業務に集中できる時間を生み出そうとしているのです。
我々はこの支出管理プラットフォームを、電気や水道と並ぶような社会インフラとして展開しようと考えています。まだまだ遠い道のりではありますが、サービスを通じて生み出した時間の総計は、既に930年分 ※2 に及びます。
※1 参照:総務省「令和4年 情報通信に関する現状報告の概要」
※2 創業期~2024年10月、TOKIUM試算
SECTION 2/6
震災で感じた「命は時間」
⸺黒﨑さんは学生時代に現在のTOKIUMを起業されたとのことですが、どのように創業に至ったのでしょうか?
黒﨑:元々、人の役に立つことが楽しい、幸せだと感じていました。高校の頃は、みんなで作るたこ焼きを目の前で美味しそうに食べてもらえることが嬉しくて、毎年文化祭の模擬店運営に心血を注いだり、同級生に喜んでもらえることが嬉しくて、壊れたゲーム機を修理したり。
そして19歳のときに、東日本大震災が起きました。
私は使命感から、安否確認サービスに被災者の安否情報を入力するボランティアに参加しました。そのデータベースづくりを通じて、多くの被災者やその家族に貢献できたことが誇らしかったのと同時に、感じたのは「命は時間だ」ということ。その人が自らの意志を持って使える時間を増やすことは、その人の命を延ばすことと同じくらい価値があると思ったのです。そこで、より大規模に「時を生む」という形で人の役に立とうと、震災翌年の2012年に起業しました。
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⸺創業時は家計簿アプリを開発・運営していたそうですね。
黒﨑:はい。何にお金を使うかは「時」の使い方、つまりは人生を左右すると考えました。学生起業ということで、創業メンバーとアパートの一室で、朝起きた瞬間から力尽きて寝るまで開発に明け暮れた日々は本当に楽しかったですね。何よりサービスリリースの約3年後には100万ユーザーを突破し、好意的なコメントをもらう中で、ユーザーにとって役に立つものを創ることができている喜びを感じていました。
一方で、収益化を進めることができず自分たちの生活は困窮。サービスが大規模になるほど開発費用や維持費がかさみ、赤字幅が拡大していく構造でした。
そうした中、サービスを止めたくない、仲間に十分な給料を支払いたいという思いから、私は売上を追い求めました。必死の営業活動や資金調達に勤しむ中で、社内ではドライなコミュニケーションが増え、雰囲気は悪くなっていく。さらにBtoCの家計簿事業を支えようと、急にBtoB事業に舵を切ったために、組織はばらばらになってしまいました。離職が続き、遂には創業メンバー3人を残して全員が退職。2016年に、いわゆる「組織崩壊」が起きたのです。
SECTION 3/6
お客様想いの組織で、いち早く日本を変える規模に
⸺組織崩壊した後、黒﨑さんや会社はどのように変わっていったのでしょうか?
黒﨑:組織が一枚岩になることの重要性を実感し、仲間がお互いを大切にして相互理解を深められるような仕組みづくりに努めました。併せて、採用に対する考え方も変えました。信頼し合える仲間で事業を創ろうと、経歴や能力のみでなく、その人と「コアな部分」で理解し合えるかを重視するようになったのです。
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⸺「コアな部分」とは、例えば何を見ていますか?
黒﨑:お客様想いであることと、高い目標に向かって一生懸命になれることの、2つの要素を持ち合わせていることです。
前述の通り、TOKIUMは「人の役に立ちたい」という想いから出発した会社です。目の前で困っている人がいれば、その人のためにどんなことでもしてあげたいと思う人が、当社に合うと考えています。お客様の抱える課題が、今のTOKIUMで解決できないものであっても、深く話を聞いて寄り添い、新たなサービスを検討する。それが今のTOKIUMがお客様から愛されている理由の一つとなっていますし、新たな開発やサービスづくりの原動力でもあります。
同時に、TOKIUMは社会インフラを目指している会社なので、早く日本を変えられる規模になる必要があります。そのために非常に高い成長目標を掲げており、直近5年間は毎年約2倍のペースで事業が成長しています ※3。
お客様のために社会インフラを目指すとなると、時には地味で地道な仕事にも直面します。トレンディだから、誰かに評価されたいからではなく、お客様や社会にインパクトを残したいと思う方でなければできない仕事だと思います。
※3 2019年5月期〜2024年5月期のCAGR(年平均成長率)は94.2%。
SECTION 4/6
「支出」を未来へつながる意味あるものに変革する
⸺組織や事業は変わったものの、家計簿事業から一貫して「支出管理」に注力していますね。そもそも支出管理とは、企業にとってなぜ重要なのでしょうか?
黒﨑:多くの企業は売上に重きを置く傾向にありますが、企業活動の結果は「売上-支出」で計算される「利益」です。利益幅を広げるためには支出を減らすことも必要なのです。
そしてTOKIUMでは、支出を減らすだけでなく、支出を未来につながる意味あるものへと変えることにチャレンジしています。支出にはその企業の意志が宿り、どうお金を使うかは、会社の強みや企業哲学の源泉となり得ます。皆さんがアルバイトで稼いだ1万円で、書籍を買って勉学に励むのか、友人と居酒屋に行って親交を深めるのかで、得られる効用がまったく異なるのと同じことです。
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⸺まさに「お金の使い方は人生を左右する」ということですね。ではTOKIUMはどのように日本企業の支出を変えようとしていますか?
黒﨑:TOKIUMではこれまで、経費精算や請求書受領、文書管理など、支出に関わる様々な業務を電子データ化することで、企業の支出管理業務を効率化してきました。その過程で蓄積された膨大なデータを、会社全体・社会全体で共有し、支出を最適化できるフェーズに入っています。
自分たちに最適な会食のお店はどこか、一番売上に跳ね返っている人的資本投資は何か……これまで「なんとなくの感覚」や「個人のナレッジ」として眠っていた情報を支出データから読み解き、広く活用してもらう。そのことで、より良い支出ができる企業が増え、結果的に、世の中に良い飲食店や人的資本投資のサービスを提供する企業が増えていくと考えています。
SECTION 5/6
AI時代、本質的な課題解決のための「人力」導入
⸺TOKIUMの強みの一つは、SaaSだけでなく人力のオペレーションを組み込んだ「IT×人力」だと聞きます。ITやAIで何でも解決しようとしているこの時代に、なぜ「人力」を使うのでしょうか?
黒﨑:結局、ITやAIで解決できることはまだ限られているからです。例えば「洗濯」は、洗濯板を使っていたところから、自動洗濯機、ドラム式洗濯機が登場し、どんどん便利になってきているものの、「洗って良いものか確認して洗濯機に入れる」「洗濯物を畳む」といった作業は、まだ人の手で行っていますよね。
支出管理もオンラインツールは発展してきているものの、そもそも書類の多くが紙でやり取りされていることから、業務の自動化が難しい状況にあります。加えて、支出管理は1円の誤差が問題になる世界ですが、今のAIではレシートの入力を100%正しく行うことができません。
そこでTOKIUMは、人が行うべき部分は専門のオペレーターがIT・AIを駆使しながら集中処理することで、本来お客様側で人力でおこなっていた業務までをもお任せいただけるようにしています。ITやAIはコモディティ化が進み、どの企業が持つ技術も大差ないこの時代に、あえて人力という独自のリソースを持つことは、TOKIUMにしか解けない課題を解決する武器にもなっています。
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⸺お客様の役に立つことを一番に考えるからこそ、手段にこだわらない。それがTOKIUMのとり得る選択肢をも広げているのですね。
黒﨑:その通りです。また「人力」の導入は、遊休資産化している労働力の活用にも一役買っていると考えています。企業が大都市圏に集中する一方、地方には仕事の選択肢が少ないため、例えば子育て中の方や、立ち仕事が難しい方の働き先が限られ、労働力が遊休資産化してしまっている側面があります。
そうした中、現在TOKIUMのプラットフォームを使う2,500社以上の支出管理業務を支えているのは、全国にいる約2,000人のフルリモートオペレーターです。一口に「支出管理」と言っても様々な作業が絡み合っている業務を、作業A、作業B、作業C……と小さな作業単位に分解し、各オペレーターが分業して処理することによって、全体の生産性を高めることができています。副次的ではありますが、地方に暮らす方の労働生産性の向上と、遊休資産化している労働力の活用にも貢献できていると考えます。
SECTION 6/6
自己成長を最終目的にしないことで、成長できる
⸺TOKIUMは今後、支出管理の他にも領域を広げていかないのでしょうか?
黒﨑:現状、その予定はありません。というのも、支出管理は、ソフトウェアの世界を飛び越え、様々な要素技術を複合的に組み合わせなければ実現できない難題だからです。
TOKIUMが目指すのは、お客様の組織や業務構造を変えるほどに「時を生む」、社会インフラになることであり、現状その水準には程遠い。支出管理に課題が山積しているならば、中途半端に他の領域にリソースを分散させるよりも、社内の才能を結集して支出管理の課題を解ききった方が、お客様、ひいては社会への提供価値を大きくできると考えています。
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私は1人の人間が同じ時間で成し遂げられることには限りがあると思っています。どんな環境でも、日本を変えるプロダクトを何十個も作れるわけではありません。
それならば私は、いまいちなものをたくさん作る人生よりも、ものすごく大規模な投資で、私が死んだ後にも残り続ける社会インフラをたった一つ作る人生を送りたいと思って、支出管理領域の変革に全力を注いでいます。
⸺そんなTOKIUMで、新卒社員はどのように成長できますか?
黒﨑:共に事業を創る仲間として年次を問わず仕事を任せており、現在副部長以上の役職者の3〜4割は新卒出身者。新卒4、5年目から部長を担っている方が複数人いて、多ければ20人程をマネジメントしています。また新規プロダクトに関わる機会もあり、例えば、日本経済新聞にも取り上げられた新規プロダクトの責任者を担ったのは、元営業トップセールスの新卒5年目社員でした。
ただ正直に言うと、私は皆さんに自己成長を目的にしてほしくないと思っているんです。
もちろん今TOKIUMにいる社員一人ひとりが、スキルを身につけたい、責任者を担いたいといった成長への思いを持っており、その実現を心から応援しています。しかし自己成長を目的にすれば、業務上で選択を迫られた時、お客様にとって最適な方ではなく、自分が成長できる方を選択してしまいかねません。だから最終ゴールは必ずお客様に置くべきだと思っています。
そして学生起業で何も持たない状態から事業を創ってきた私の経験上、その方が結果的には成長できるとすら考えています。お客様の役に立つことが目的となれば、必要ならば開発、営業、マーケティングなど、部署の垣根を越えた力を身につけざるを得なくなるものです。
TOKIUMは目指す世界観に向けて走り始めたばかりの会社ですので、今後の会社の姿も、個人のキャリアも、社員一人ひとりの努力と選択によってどうとでもなり得るような、伸びしろと可能性が広がっています。不確実性が高いからこそ面白いと思える方と共に、未来へつながる時を生み出していければ幸いです。
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