COLUMN
【SDGs 就活】世界トレンドから紐解く、サステナブルな成長企業の見つけ方
Z世代の皆さんは、幼い頃から環境問題や社会課題を学び、サステナビリティへの意識が高い人も多いでしょう。そのためか「就活でSDGsを軸に企業を選びたいけれど、本気で取り組んでいる企業を見つけるのが難しい」という声を聞きます。本記事では、表面的な企業PRとしてではなく、事業でSDGsに貢献する成長企業の見極め方と、編集部厳選の3社をご紹介。日本の課題と世界トレンドを知り、自分らしい企業選びの視点を鍛えましょう。
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そのサステナビリティは本物か?SDGsに積極的な日本企業の現状
この記事の読者の多くは、サステナブルな活動をしたいと考え、就活でもSDGsを意識して企業を探していることでしょう。SDGsネイティブと言われるZ世代の多くはサステナビリティへの意識が高く、学情の調査では25卒の約半数が「仕事選びにおいてSDGsを意識している」と回答。一方、帝国データバンクの調査によると、日本でSDGsに積極的な企業も約半数でした。
なお、SDGsの基本(17の目標)や、企業がSDGsに取り組む理由について復習したい人は、以下の記事をお読みください。
SDGsってなんで知らなきゃだめなんですか?
日本企業の約半数がSDGsに積極的となると、そこからどうやって絞ればいいのでしょうか? 「SDGs 企業」で検索すると、有名な経済メディアによるSDGs企業ランキングがいくつか出てきますが、それらを鵜呑みにするのではなく、あなたの視点や価値観に沿って選ぶ必要があるでしょう。
なぜなら、既存調査の多くは対象が東証プライムなど大企業に偏っていたり、一般消費者の認知度で測っていたりと、ほぼ会社知名度の高い順番やラインナップの傾向があるからです。また、各調査の項目・評価方法には、調査する側の意向や価値観が反映されています。
従って編集部のオススメは、企業規模や業界にとらわれず、「SDGsのなかでも自分が注目する目標や課題に取り組んでいて、共感できるかどうか」で判断すること。例えば「17目標のうち、自分が重視している目標に取り組む企業を探す」というのも一つの手法でしょう。
さらにもう1つの偏りに注意する必要があります。それは前述のSDGsに積極的な日本企業の約3割が、全17目標のうち「8. 働きがいも経済成長も」に注力と回答したように、取り組みが偏っていること。背景には何があるのでしょうか?
入山 章栄氏(経営学者で早稲田大学ビジネススクール教授)は、「多くの日本企業において、サステナビリティは本質的な取り組みがされないまま、PRに利用されている」と指摘しています。
さらに入山氏は、サステナビリティ経営が進んでいる欧州企業は新しいビジネスモデルを創造し、成長につなげる戦略性がある。事業基盤である環境や社会を維持するために長期視点でイノベーションを起こしていくことこそがサステナビリティ経営である※1 と述べています。
※1 出典:PwC Japan【入山章栄氏と考える】サステナビリティと企業成長を両立させる方法
皆さんも、「その企業は本業でSDGsに取り組んでいるか、取り組みにおいて独自技術や革新性があるか」に注目してみてはいかがでしょうか。
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SDGs達成度が後退した日本の深刻な課題
とはいえ、自分が共感したり見極めたりするためには前提知識が必要です。まずは日本全体の現状と課題を把握しておきましょう。
国連持続可能な開発ソリューションネットワーク(SDSN)が公開した、持続可能な開発報告書2023によると、日本のSDGs達成度は163か国中21位で4年連続でランクを落としました。特に目標5(ジェンダー平等)、12(生産・消費)、13(気候変動対策)、14(海洋資源)、15(陸上資源)、17(実施手段)について深刻な課題が残っているとされています。
上記を見て、皆さんはどのように感じましたか? 既に達成済みだと思っていた項目もあったのではないでしょうか。いずれにしても「日本の重要な課題や深刻な課題に取り組んでいるか?」といった観点で企業を見るのも、一つの方法ではないでしょうか。
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世界的メガトレンド:気候変動対策と生物多様性
次は世界の潮流を学びましょう。SDGsは世界共通の目標であり、政府や企業は国内実施のみならず、国際的な取り組みや協力が必要だからです。世界のSDGsトレンドは何か? 直近では「気候変動ソリューション」が成長しており、さらに次の世界的メガトレンドは「ネイチャーポジティブ(生物多様性)」と言われています。
気候変動ソリューション成長の背景には、温室効果ガスの主要排出国が掲げる2050年カーボンニュートラル(脱炭素社会)を目指す取り組みや原油価格の上昇もあります。そして脱炭素や脱原油依存の手段として、自然エネルギー、電気自動車、スマートビルディング(建物IoT化)などへの投資やイノベーションが促されています。このように、気候変動問題への挑戦が世界のグリーン産業成長を牽引し、経済と環境の好循環を生み出すカギとなっているのです。
気候変動ソリューションの次の大きな潮流は「ネイチャーポジティブ」です。ネイチャーポジティブの日本語訳は「自然再興」で、生物多様性の回復を指します。「生物多様性を含む自然資本 ※2の損失を食い止め、2030年までに自然を回復軌道に乗せる」という目標が2023年3月に閣議決定され、日本での取り組みが始まりました。
ネイチャーポジティブが必要な理由は、私たちの社会や経済が自然の恵みなくして成り立たないためです。世界のGDPの半分以上に相当する44兆ドルが自然資本に依存しているにも関わらず、生物多様性や生態系がもたらす機能は世界中で劣化が加速し続けており、今の地球はネガティブな状態にあります。このままでは人類の暮らしは持続し得ないと、IPBES ※3は報告書で警鐘を鳴らしています。
気候変動と生物多様性の損失は、先ほどご紹介した日本の深刻な課題にも該当しています。環境省は、2030年に国内で45兆円〜105兆円のネイチャーポジティブによるビジネス機会がもたらされると試算。ネイチャーポジティブ経済という新しい市場ができて、あらゆるテクノロジーが交差する領域になると予測しています。
またForbes JAPANの取材によると、経団連の西澤氏は、大きな機会が生まれる分野として食料や土地・海洋利用、インフラ・建設、エネルギー・採掘の3つを挙げ、自然資本に依存度の高い分野でビジネス化に挑戦していく必要があると述べています。
脱炭素・気候変動対策がそうであるように、生物多様性もビジネスインキュベーションのテーマとなる可能性がありそうです。SDGsに取り組みたいならば、黎明期のこの新市場で挑戦する企業を探さない手はないでしょう。
※2 自然資本:人々へ便益をもたらす、再生可能および非再生可能な天然資源(植物、動物、空気、水、土、鉱物等)のことで、自然環境は社会経済を支える資本の一つという捉え方。
※3 IPBES(イプべス):生物多様性と生態系サービスに関する動向を科学的に評価し、科学と政策のつながりを強化する政府間組織。
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インパクトスタートアップや編集部注目の3社
世界のSDGsトレンドを踏まえつつ、日本の深刻な課題に取り組んでいる企業を探していきましょう。しかし1社ずつ見に行くのは多忙な就活生には非効率的。そこで参考になるのが、経済産業省が主催する「J-Startup Impact」です。
経済産業省ではこれまで、イノベーションの担い手であるスタートアップへの官民一体での支援を目的に「J-Startup」プログラムを運営してきました。ちなみにGoodfindを運営する当社(スローガン株式会社)もJ-Startupに選定されたことがあります。J-Startupについて詳しく知りたい方は、以下の記事をお読みください。
スマニューに続け!「スタートアップ日本代表」徹底解剖
一方で2023年より、潜在力の高い「インパクトスタートアップ」に官民一体で集中支援を行うJ-Startup Impactを新設、ロールモデルが期待される30社が選定されました。インパクトスタートアップとは、社会的・環境的課題の解決や新たなビジョンの実現と、持続的な経済成長をともに目指す企業のことで、注目されはじめています。
評価項目の1つである「社会的インパクト向上を目指す取り組み」に関する手法の確立やノウハウの普及は初期段階にあるそうですが、応募企業や選定企業・選考理由は参考にしていいのではないでしょうか。
そして、ここからは日本が抱える重要・深刻な課題に取り組む【編集部注目の3社】を注目ポイントと共にご紹介します。
【再生可能エネルギー、気候変動対策、循環型社会】
環境課題解決のため前人未到の事業開発を続けるプロ集団
株式会社レノバ
エネルギー変革を通じた社会的課題解決をミッションに掲げ、再生可能エネルギー発電事業や脱炭素ソリューションの開発に取り組む。日本とアジアにおける再生可能エネルギーのマルチ電源開発・運営に特化した日本で唯一の独立系上場会社。
【注目ポイント】
本業を通じて日本の深刻な課題である「化石燃料の燃焼によるCO2排出量」対策に貢献すべく、具体的に「2030年までに1,000万tのCO2削減」を目標に掲げています。また、洋上風力・地熱といった、日本でもイノベーティブで社会的期待の高い発電所の開発にチャレンジし、政府方針である再生可能エネルギー比率向上にも貢献を目指すなど、貢献目標の大きな企業です。
出典:レノバ公式HP
26卒エントリー
25卒エントリー
代表インタビュー記事 マッキンゼー出身社長が語る、 地球規模の課題に立ち向かう事業家になる術
【生物多様性、森林、海洋等の環境保全】
自然資本保全や環境課題解決に挑戦するNEXTユニコーン
株式会社TBM
2011年創業のスタートアップ。創業当初から「100年後でも持続可能な循環型イノベーション」をビジョンに掲げ、プラスチックや紙の代替となる革命的新素材「LIMEX」をはじめ、環境配慮型の素材開発・製造販売、資源循環を促進する事業を運営。
【注目ポイント】
J-Startup Impact選定企業でもあるTBM社は、日本の深刻な課題である「12. つくる責任 つかう責任」を起点に、「海の豊かさを守ろう」「陸の豊かさを守ろう」など計8つの目標への貢献や取り組みを通じてSDGsにコミット。事業⾃体がSDGsに貢献できるものですが、さらに専任のサステナビリティ部⾨を設置し、新製品開発やイノベーションのヒントとしてSDGsを活⽤しています。
出典:TBM公式HP
【ジェンダー、気候変動対策等】
社会課題「解決する側」をサステナブルな体制で支援するソーシャルベンチャー
株式会社ボーダレス・ジャパン
「ソーシャル・ビジネスで世界を変える」ことを目指し、社会起業家が集うプラットフォームカンパニーとして2007年設立。気候変動、貧困、教育など、様々な社会課題に対して、世界13カ国・51事業を展開。社会起業家およびソーシャルビジネスを次々と世に送り出し、より大きな社会インパクトを共創している。
【注目ポイント】
「世の中に一つくらい社会起業家のための会社が必要」と考えた田口一成氏が創業した、社会課題を解決する「ソーシャルビジネス」しかやらない会社。ノウハウや資金、人材を共有し合うコミュニティを持ち、創業した起業家は売上1%を拠出する側にまわり資金循環で次の起業家誕生を支える「恩送り」の仕組みなど、会社のあり方もサステナブルです。
出典:ボーダレス・ジャパン公式HP
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理念・パーパスに共感できる注目企業を見つけ、社会課題解決を
SDGsに本質的に取り組む企業の探し方とオススメ企業、いかがだったでしょうか。冒頭でお伝えした通り、メディアのランキングの元となる各調査や評価・算出方法には偏り・バイアスがあります。もちろん、この記事にも筆者やGoodfind College編集部の価値観や思い入れが含まれていることでしょう。
今回のテーマに限らず、就活ではあらゆる情報や周囲の意見を鵜呑みにせず、できるだけ一次情報を取りに行くことが、あなたらしく熱中できる環境・キャリアを探す第一歩となります。そして、自分で得た一次情報と世界・社会トレンドとを往復しながら、自分なりの観点で企業を見極めることが肝心です。
SDGsの達成期限は2030年ですが、皆さんのキャリアはその後何十年も続きます。 SDGsの取り組みだけではなく、「より長期的な企業の存在意義であるミッションやパーパスに共感できるか」もお忘れなく。
この記事を参考に、皆さんが世界のトレンドや国の政策などにアンテナを張った上でご自身の企業選びの軸を持ち、その先に社会によりよい変革(ソーシャルインパクト)をもたらすキャリアを踏み出せることを願っています。
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