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INTERVIEW

医療はどう変わる?国の課題をビジネスで解決する視点

感染症との闘いで一層注目を集める医療・ヘルスケア業界。実は医療機関だけでなく、製薬をはじめ様々な企業で構成される巨大産業です。医療費の肥大化という国家レベルの課題を抱える一方で、オンライン診療や予防医療といった、新たなサービスが次々と生まれ、ビジネスとしての伸びしろも秘めています。
本記事では、仕組みが見えにくい医療・ヘルスケア業界をビジネスの観点で捉え、製薬業界の事例も紹介します。社会課題をビジネスチャンスとして捉え、成長する業界の動向と、そこでのキャリアについて学びましょう。

SPONSORED BY 株式会社エム・シー・アイ

話し手

Y.M

Y.M

株式会社エム・シー・アイ
マーケティングリサーチ事業部 グループマネージャー

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2040年に市場規模100兆円と見込まれる、医療・ヘルスケア産業

編集部:万人に関わり、私たちの健康を支える医療。日本では国民皆保険制度によってすべての国民が公的医療保険に加入し、自分が受診する・しないに関わらず義務として健康保険料を納めており、文字通り国民全員に関わるものです。まずはそんな医療・ヘルスケア業界の現状と課題 から見ていきましょう。

■ 医療・ヘルスケアとは何を指すのか?
本記事では「医療」は医療機関での診断・治療や薬局調剤医薬品など公的保険が適用される国民医療費の範囲とし、「ヘルスケア」は公的保険外の保健医療サービスの産業群(ITを活用した健康管理、健康増進・予防サービス、生活支援サービス等)と定義します。

■ 国が直面する社会課題・医療費の増加
厚生労働省によると、日本の国民医療費は約44兆円(2019年度)。毎年1兆円を超える規模で増えており、2025年度には約54兆円に達する見込みです。

そのうち65歳以上(高齢者)の医療費が約6割を占め、また年齢構成別の前年度比で最も増えている(※1) ことが示す通り、人口の高齢化が医療費の増加要因の一つです。 とりわけ75歳以上の後期高齢者の医療費増加が影響しています。

また、必要のない受診や重複受診による医療の非効率性や、医療技術の高度化による高額な治療も、医療費が増える要因とされています。

■ 2040年問題
そんな日本の医療領域に立ちはだかるのは「2040年問題」です。医療費は2040年には67兆円になると予測されるなか、日本の総人口は約1億人まで減少するのに対し、高齢者(65歳以上)の人口が約4,000万人と、全体の4割に達します。

生産年齢人口(15~64歳)約6,000万人に対して4,000万人の高齢者を抱えるため、現役世代1.5人で高齢者1人を支える計算となり、国民医療費を含む社会保障制度の破綻が危惧されています。

出典:総務省統計局「人口推計」をもとに作成

■ 2025年までに約30%成長する、ヘルスケア市場
次にヘルスケア領域を見てみましょう。政府推計に基づく試算では、日本のヘルスケア産業の市場規模は2016年には約25兆円でしたが、2025年には約33兆円に30%超も成長するとされています。また、みずほ銀行調査部の資料(※2)によると、医療とヘルスケアをあわせると2040年には100兆円超の市場規模となる見込みで、現在の日本の国家予算に相当 します。

※1 出典:厚生労働省(令和元年)「国民医療費 結果の概要」
※2 出典:みずほ銀行 産業調査部(2020年)「ヘルスケア~医療のパラダイムシフトを見据えた日本のヘルスケア産業のとるべき方向性~」

SECTION 2/6

医療費抑制が、成長機会と新産業を創出

このように医療は深刻な課題と新たな可能性を併せ持つ分野ですが、大きな課題がある分野にはビジネスチャンスが生まれるものです。医療も例外ではなく、財政を圧迫する医療費の抑制を目的に、国が様々な取り組みに乗り出し、ビジネスを後押ししています。

例えば2016年以降、医薬品の価格を下げる取り組みをおこなったり、病気の予防対策・健康管理サービスを中心とした次世代ヘルスケア産業の創出を掲げたりと、国をあげて公的保険外のサービス成長を促進しています。 (※3)

また、オンライン診療やウェアラブルデバイスから得るデータの活用など、医療へのデジタル活用が進みつつあります。しかし、業界全体としてはデジタル化は遅れており、各医療現場や医療経営・各種医療サービスにおいて大きな伸びしろはいまだ残されています。

今後、デジタル活用サービスが浸透すれば、生産性の向上による医療費の削減はもちろん、在宅医療が普及したり、医療従事者や看病する人の負荷が軽減したりと、医療者と患者双方にメリットが生まれます。

そのような取り組みもあり、医療・ヘルスケア産業では現在イノベーションが進み、医療×ITを中心に企業の参入も増え、業界全体として成長を続けています。

※3 出典・参考:経済産業省HP掲載資料「ヘルスケア産業政策について」  

SECTION 3/6

製薬のマーケティングで進む、戦略的デジタル化

編集部:前述のように、医療・ヘルスケア業界は急成長している産業であるため、就職先として選択した場合に、大きなチャンスが待っている業界だと言えます。その理由は大きく二つあります。

一つめの理由として、医療・ヘルスケアは、高齢化社会を生きる我々にとって欠かせないものであり、公的保険外の予防や健康増進サービスには大きな伸びしろがあるため、新たな市場をつくる挑戦ができるからです。

二つめの理由は、専門性が高く質の高いアウトプットが求められるため、個人が成長する環境として適しているからです。医療に関わる製品やサービスは、人の命に関わるため、精度の高いアウトプットを出し続ける必要があります。

また、多くの場合国の承認が必要で、研究開発や製造はもちろん、マーケティングや販売においても厳しい法規制やガイドラインがあります。そのため若いうちから専門性を高めながら経験を積んで、市場価値の高い人材を目指すことができます。

さまざまな領域のある医療ヘルスケア業界のなかでも特に注目されているのが、医療業界において最も影響力があると言われ、文系理系を問わず様々な人が活躍する製薬業界です。

ここからは、製薬業界に特化したマーケティング支援企業である、エム・シー・アイ社で15年以上の業界経験を持つY.M氏に、業界の動向や業界でのキャリアについて伺い、また同社が業界で担う役割についてもお話いただきました。

Y.M

株式会社エム・シー・アイ(以下、MCI)

マーケティングリサーチ事業部 グループマネージャー

就活では早く成長できる環境を重視して企業を見た結果、20代から大きな裁量を持てるMCIに惹かれ、創業期の2007年に新卒入社。医療・ヘルスケア業界に特化したマーケティングリサーチコンサルタントとして、世界的な大手製薬企業を顧客としたプロジェクトに複数従事。顧客への課題ヒアリングから、医療現場での調査分析、戦略立案、提言まで一気通貫で担う。現在は、顧客の課題解決に最前線で関わりながら、担当部門の業績と組織のマネジメントも担っている。

──製薬業界について伺う前に、MCIが担う役割や立場について簡単に教えてください。

Y.M:MCIでは製薬企業を顧客として、マーケティングリサーチ事業とデジタルマーケティング事業を行っています。MCIの役割は、医療の発展と患者様や一般生活者のQOL向上に貢献するために、医療現場と製薬企業の間に生じる情報のミスマッチをなくすことだと考えています。

──コロナ禍で一気に注目を集めた製薬業界の動向について教えて下さい。

Y.M: まず、コロナ禍以前の状況からお話しします。製薬業界では後発医薬品の浸透や新薬開発の難易度上昇、さらに日本国内に限って言えば、国による医療費抑制策の中で薬価 (※4)を引き下げる動きが続けられているため、より効率的なマーケティング活動を行うことが重要な経営課題となっています。

また、マーケティングの重要性自体に変わりはありませんが、コロナ禍の到来により、マーケティング活動のデジタル化がさらに進みました。

従来は、MR(医薬情報担当者)と呼ばれる製薬企業の営業担当者が医療機関へ直接訪問し、情報収集・提供をしていましたが、医療機関からの訪問自粛要請もあり、オンライン上のコミュニケーションやITを活用した活動に変化してきています。

この動きは、より効率的にリアルタイムで情報を届けたいという製薬企業のニーズに合致しており、今後も加速していくでしょう。

※4 薬価:医療用医薬品(医師が処方する医薬品)の公定価格のこと。公的な医療保険が適用される医薬品の価格は、すべて国(厚生労働大臣)が決めているため、病院や診療所で使われる薬の価格は、製薬会社が自由に決めているわけではない。

SECTION 4/6

10兆円市場の意思決定を支える

──MCIは医療業界の中でも製薬業界に特化されていますが、製薬業界ならではのビジネスチャンスは、どのようなところにあるのでしょうか?

Y.M: まず、医療における薬の役割はとても大きく、今後もその重要性は変わらない点にあります。金額としても(2019年度)国内の医療費約44兆円のうち、医薬品の費用は約10兆円を占めています。(※5)

医薬品は、ドラッグストア等で自ら購入できる一般用と、医師から処方される医療用に分類されますが、MCIは製薬業界で約9割を占める医療用医薬品の市場に特化しています。

※5 出典:厚生労働省 「医薬品・医療機器産業実態調査(令和元年度)」をもとに作成

Y.M:製薬企業は巨額の資金と時間を投資して新薬を開発し、世界的な規模で販売しており、私達もそのような大手グローバル企業を主な顧客としています。

また、製薬業界では業界規模に対する意思決定者の人数が他の業界と比較すると少ないため、一人の意思決定者の与える金額規模がより大きくなります。

「どの薬を処方するか」という医薬品選択の意思決定者は国内に約30万人いる医師である事が多く、これは、他の10兆円弱の市場があるといわれる家電市場やアパレル市場など個人で使用する一般消費財と比較して、圧倒的に少ない人数で10兆円もの市場の意思決定を行うということです。

そう考えると、MCIが支援する医薬品のマーケティングの成否が与える影響の大きさを、ご想像いただけるのではないでしょうか。

SECTION 5/6

真に適切な薬を、必要とする人に届けるために

──製薬のマーケティングを通じて、具体的にはどのような価値を生み出しているのでしょうか。

Y.M:私たちの事業の提供価値は、直接的には製薬企業の医薬品販売・開発の支援です。それは「医療従事者の皆さまに対して、必要な人に必要な情報を必要な時に提供すること」であり、「患者様や一般生活者に対して、より良い治療を早く届けること」につながっているとも言えます。

薬の販売課題の解決も、製薬企業の支援を通して患者様に価値提供ができている仕事の一つです。例えば、新しく販売開始したものの、なかなか処方が進まない薬があるとします。その場合、何が障害になって処方が進んでいないのか?なぜそれが障害になっているのか?どうすればその問題を解決できるのか?をアンケートやインタビューを行うことで調査し、分析します。

そこで得られた情報をもとに販売戦略を描き、製薬企業をサポートしていきます。そして、その戦略を実行した結果を検証する効果測定のプロジェクトや、そこからさらに次の戦略を描くためのプロジェクトと、どんどん次のテーマへとつながっていきます。

──なぜ、製薬業界においてマーケティング支援に対するニーズが高まっているのですか?

Y.M:現代は医療が高度化し、治療法や薬の選択肢も増えているため、たとえ優秀な医師であっても全ての薬の情報を常に熟知しておくには限界があります。製薬企業にとっても、医療現場に貢献したい想いを持っていても、自社単独での情報の提供・収集だけでは限りがあり、薬が選ばれない理由を正しく特定することは簡単ではありません。

そこで私たちが医療現場への調査をもとに、その薬が医師に選ばれるようにするための戦略を製薬企業と一緒に考えます。その結果、医師のもとに適切に情報が届き、医師が正しく薬を理解して処方が進んでいけば、その薬を真に必要とする患者さまに届けることができます。

また製薬企業の新薬開発の過程では、信頼性が高く正確なマーケティングリサーチが必要になるため、業界特化型で知見が豊富な弊社をパートナーとして選んでいただくことが多くあります。私たちのサポートを通じて新薬開発が成功すれば、これまで治療法が無かった疾患を治療できるようになったり、新たな治療の選択肢が増えたりします。

このように、私たちが薬のマーケティングを支援することで、医療現場に対しても大きなインパクトを与えることができると考えています。

MCI社内にある、各種調査に利用する専用のインタビュールーム

──製薬のマーケティングを行う面白さは、どういった点にありますか?

Y.M: 醍醐味の一つは、世界的な大手企業が持つマーケティング上の様々な課題を、顧客に深く入り込みながら、裁量を持って仕事ができるところです。MCIの顧客は世界的な大手製薬企業が中心ですが、プロジェクトの中には顧客自身でも課題そのものが曖昧な状態で相談をいただくことがあります。

ひとつの顧客を長く担当することも珍しくなく、例えば、ある一つの薬の開発段階から関わり、上市(承認された新薬の市場販売開始)前後のプロジェクトも実施して継続的に支援するような事ができます。そのような場合には、製薬企業の製品担当の方よりも長くその薬に関わることもあり、必然的にその薬のマーケティングに関する中心メンバーとして、製薬企業からも認識していただけるようになります。

二つめは、MCIだからできる医療業界への貢献があることです。私たちは世界の製薬企業トップ20社のほぼすべての企業と取引実績があり、マーケティングパートナーとなることができています。

医療における製薬業界の影響の大きさも踏まえると、製薬業界への貢献を通じて、MCIは医療や患者様のQOL向上にも大きく貢献し、影響を与えていると実感できると思います。

Y.M:一方で、医療業界のデジタル化や効率化は他の業界と比べると遅れており、私たちができることや業界の伸びしろもたくさんあるので、会社としても個人としても成長していけるのがキャリアとしての面白いところです。

──業界への影響度が高く、事業の社会貢献性が高く、少数精鋭の一気通貫で個人の裁量が大きい、という全てを満たしているMCIのような会社は稀有な存在だと感じました。

SECTION 6/6

未知の業界や社会課題を深掘り、働く動機を見つけよう

──業界の変化の中で、MCIの事業はどのように変わっていくのでしょうか?

Y.M: 医療業界の新たな取り組みに対して、私たちもマーケティングリサーチの業務を通じて携わっています。例えば、遺伝子治療や治療用アプリ等についてのプロジェクトを行うようになりました。創業当初にはなかったようなご相談です。

そういった新しい課題に対しても当社は、医療関係者へのアンケートやインタビューを通じて医療現場の実態を把握し、医療現場で何が求められているか、どのように活用されているか、普及のための課題とその解決策は何なのか等、様々なテーマでプロジェクトを実施しています。

Y.M: また、米国最大のマーケティング企業であるオムニコムグループのネットワークを活かし、今後はより積極的に海外顧客へのサービスを拡充していきたいと考えています。医療業界特化型企業として、業界の流れを十分に理解した上で、戦略を立案し、実効性の高いコンサルティングを実施していくことは変わらず重視していきます。


編集部:今回は医療・ヘルスケア業界について、課題や成長ポテンシャル、そして製薬業界の事例を通じて学びました。公的負担もある巨大産業だからこそ、産業の成長と国の負担が表裏一体です。しかし、課題を解決することによってイノベーションが起き、古い医療から新産業のヘルスケアが生まれるような、今まさにターニングポイントにある産業であることがわかりました。

ひとりの国民の立場では将来の医療費負担は重荷ですが、社会課題をビジネスで解決する視点を持つことで、課題はチャンスに見え、業界の捉え方が変わるのではないでしょうか。「社会課題をビジネスチャンスとして捉える視点を持って、企業や業界を見てみよう」と思っていただけたら幸いです。

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