INTERVIEW
グローバルチームで挑む製品開発のリアル。その苦労とやりがいとは
「さまざまな人のアイデアが混ざりあう環境で、良いものづくりがしたい」。そう考え、多様性豊かなグローバル企業で開発職に就きたいと考える学生は多いと思います。JT R&Dグループは2019年にグローバルで組織を統合し、今ではおよそ50以上の国籍のメンバーが協業して研究開発を行っています。今回は、JT R&Dグループで働く社員にインタビューを実施。別々のバックグラウンドを持つ2名のそれぞれの視点から、国境をこえてグローバル環境で製品開発をする苦労と醍醐味に迫ります。
SPONSORED BY 日本たばこ産業株式会社
話し手
杉田 修平
日本たばこ産業株式会社(JT)
Global Tobacco Business R&D
Grzegorz Piatowicz
Japan Tobacco International(JTI)
Global Tobacco Business R&D
SECTION 1/5
世界中から技術者が集う環境
——まず、お二人はそれぞれどのような開発に携わっているのか教えてください。
杉田:私は大学卒業後、電機メーカーに入社し、バッテリーの開発を担当していました。そして5年ほど前、ちょうどJTグループ(以下、JT)がPloom TECH※1を日本市場に投入したばかりの頃、バッテリー分野に強い人材を求めていたJTに転職しました。入社後はR&Dグループに配属され日本で勤務した後、2年間香港に出向し、今はまた日本に戻ってきています。
JT初のグローバルモデルであるPloom X※2開発にも携わり、最近は新たなRRP※3デバイスのためのバッテリーを開発しています。グローバルモデルを生み出すために海外の部署とも議論する必要があり、少なくとも週に2、3回は国外のメンバーとのミーティングがある環境で働いています。
グレッグ:私はポーランドの出身で、大学では制御工学を専攻していましたが、在学中にバッテリー分野に興味が湧き、ドイツの大学院に進学。この分野を専攻して博士号を取得しました。その後、自動車業界(ドイツの自動車メーカー、スイスの自動車用電子機器メーカー)に就職し、バッテリーとそのモニタリングの研究に携わった後、3年ほど前にJT International(以下、JTI)に転職しました。
JTIを選んだ理由はいくつかあります。1つ目は、自分の専門性を自動車から電子機器の領域に広げたかったから。2つ目は、JTIはヨーロッパで非常に評判がよく、トップクラスに働きやすい会社であると知っていたから。そして3つ目は、自動車産業で働いていた際に知った、5Sやリーン生産方式といった高品質の製品を生み出す日本の生産方式を、日本企業であるJTで学びたいと思ったからです。
今はジュネーブオフィスに在籍しており、RRP※3デバイスに使用するバッテリーについて、より効率的で信頼性が高い電力供給・貯蔵システムを開発するプロジェクトのリーダーを務めています。バッテリーそのものだけではなく、デバイス内のリキッドやたばこ葉を加熱するための効果的な発熱方法、バッテリーからヒーターへどのように電力を送るかといったエネルギーマネジメントなど、開発の範囲は多岐に渡ります。
RRP※3の開発技術や、その土台となる電子工学の習得はJTにとって新たな挑戦です。もちろん杉田さんのいる日本のチームとも緊密に協力していますし、世界中の外部のエンジニアリング会社とも連携しながら、常に新しい知見を得ています。
※1 Ploom TECH:JTが2016年より販売している加熱式たばこ
※2 Ploom X:JTが2021年より販売している高温加熱型の加熱式たばこ
※3 Reduced-Risk Products:喫煙に伴う健康へのリスクを低減させる可能性のある製品
SECTION 2/5
グローバルなものづくりに必須のコミュニケーション力とは
——想像以上に国内外が連携して開発を進められているのですね。
杉田:今年のはじめに日本国内と海外のたばこ事業が統合され、たばこ事業の本社機能はジュネーブに移転しましたが、実はR&Dグループはいち早く、2019年に統合しました。今では、レポートラインに日本人でない方が入ることもよくあります。数人で会議をしていると、全員バラバラの国籍を持つ人が集まった、なんてこともあります。「グローバルで多様性豊かな環境」と言うと良く聞こえますが、実際は結構大変なこともありますよ。
昨年発売の、JTとJTIが共同で開発した初のグローバルモデル製品であるPloom X※2の開発にあたっては、国内外の多くの部署と連携する必要がありました。デバイスの安全や品質に関する規制は各国で異なっており、それぞれの国で認可される機器を設計するために、JTIと密接に連絡を取り合わなければなかったのです。そういった難しさはこれまでに経験したことがありませんでしたし、この環境ならではの難しさがあったように思います。
グレッグ:開発のやり方もそうですが、相互理解を深め、効率的にコミュニケーションを取れるようになるまでにも大きな壁がありましたよね。似た文化を持つ者同士で働く際は、多くの説明や指示をせずとも自分の期待通りに物事が進むことが多いでしょう。しかし、多様性豊かでグローバルな環境で働く際には自分の常識は通用しないこともあります。
例えば、レストランでコーヒーをオーダーすることを想像してみてください。ジュネーブで頼むと、私好みのエスプレッソのような小さめのものが出てくることが多いです。でもここがアメリカだったらどうでしょう?もっと量が多く薄めの、いわゆるアメリカンコーヒーが出てくると思います。
一緒に仕事をする中でもこういったことが往々にして起こるので、何がほしいか、何を期待しているかをはっきりと説明する必要があります。細かい説明をしなければいけないことは、仕事を進める上で非効率的だと思われかもしれません。しかし、それぞれの思いや考えをきっちりと伝えることによって、これまではできなかった多角的な検討が可能になり、チーム全員が誇りを持てる優れた製品を開発することができるのです。
杉田:特に「空気を読む」「察する」文化がある日本人は、ハッキリ説明することが苦手なことも多いですよね。
グレッグ:そう感じることはありますね。私はポーランド人なので、異なる意見を持っているときや実現できないと考えたことにはハッキリ「No」と言うことにあまり抵抗がありません。
でも日本人は同じような場面で、「それは良いと思うのですが、ちょっと難しいですね」なんて言うこともありますよね。日本の文化を知っていれば「No」という意味だとわかるのですが、最初私は「『No』でないならできるのだな」と思ってしまい、うまくいかないこともありました。
杉田:私もこの環境で数年働き、多くのプロジェクトで「ああでもない、こうでもない」と議論する経験を重ねることで、やっと率直なコミュニケーションを取るようになりました。文化的な違いを乗り越えてやっと、真の信頼関係を築けたように思います。
——聞いていると、とても大変そうだなと感じました。
杉田:確かにいろんな苦労はありますが、それでもグローバルチームでやる意義や面白さはとても大きいです。JTグループ全体にある技術やリソースを集約することで、これまで以上に良いものをスピーディに生み出せている実感がありますし、自分が生み出したものが日本のみならず、世界中で販売されていることに大きなやりがいを感じています。
グレッグ:多様なメンバーが集まって取り組むことに意義がありますよね。多様性豊かな環境でオープンに話し、説明し合うことを意識することで、さまざまなアイデアが重ね合わさります。そうしてより良いものを開発することができたときには、やりがいもひとしおです。
SECTION 3/5
技術者として、人として成長できる環境
——そのような環境で仕事をしていると、得られる成長も大きいのではないでしょうか。
杉田:そうですね。ものづくりのアウトプットだけではなく、自分のマインド、能力など多くの面で成長することができていると思います。
まず、今お話したようなコミュニケーションの壁を乗り越えることで、人として成長することができました。日本では、英語に苦手意識を持つ学生も少なくないと思います。私もJTに入社するまでほとんど英語を話せませんでしたが、海外赴任やグローバルチームでの経験を経て、今では英語で会議をしていますし、自分の感情的なことも含め、伝えたいことを抵抗なく発信できています。そして様々な国から来た多様な仲間と同じ目標に向かって切磋琢磨することで、その人の考え方を認めることや、コミュニケーションの取り方もうまくなったと感じています。
加えて、JTでは他チームとのさまざまな連携が多く、研究開発者としての視野も大きく広がりました。
例えば何か新しい開発を始めるときは、ユーザーの嗜好やインサイトを分析しているマーケティンググループと連携します。「このような技術や製品を開発してほしい」と依頼が来ることもありますし、「ユーザーは何を求めていて、何を開発すべきなのか?」「仕様はどうあるべきか?」といったコンセプト部分から議論することもあります。
また、これから世に出す技術や製品を保護するため、知的財産を担当するメンバーとも頻繁に会話をしています。RRP※3の開発では熾烈な競争が繰り広げられているので、技術を保護し、他社に奪われないようにすることは、会社にとっても非常に重要なのです。
前職でも研究開発をしていましたが、ここまで他チームと緊密に連携することはありませんでした。大変なこともありますが、このような連携で多分野の知識を得ることができたと感じています。
グレッグ:私は技術面はもとより、チームやプロジェクトのマネジメント、コミュニケーションといったソフトスキルを大きく向上することができました。
まず、プロジェクトリーダーとして、開発の方針を定め、メンバーの仕事を管理する力が身につきました。私を含めある程度経験を積んだエンジニアは何かを作る際、完璧なアウトプットを目指しがちなのですが、プロジェクトの予算や時間は限られているため、無理に進めるとメンバーに過大な負荷が掛かってしまいます。そうなると当然、チーム全体の効率やモチベーションが下がり、あまり良いことはありません。JTでの経験を積むうちに、まず必須要件を定義し、優先度の高いものから作っていくことで、メンバーがパンクしないよう心がけられるようになりました。
また、生み出した技術を社内で効果的に共有し製品化に結び付けるスキルも、私が大きく伸ばすことができたものの1つです。技術的には素晴らしいものであっても、製品化されなければ意味がありません。技術的なことは専門性が高く難しい内容ですから、そういったことを専門性が異なる同僚やマーケティング担当にわかりやすく説明できることは、ビジネスパーソンとしてもエンジニアとしても非常に重要です。
加えて、相互にオープンなコミュニケーションを図る基本的な姿勢は、この会社で得られたスキルの中で最も習得が難しく、重要なものだったと思っています。皆さんも、何かわからないことがあったとき、プライドが邪魔をしてわかったふりをしたり、周りに「そんなことも知らないのか」と思われるのを恐れて正直に言えなかったりした経験が一度はあるのではないでしょうか。
しかし開発では、疑問や不安を正直にメンバーに伝える必要があります。皆の理解が深まれば、お互いの知恵を出し合って解決策を見つけ、プロジェクトをうまく進められるようになるからです。「わからない」と言うことを、弱さを見せることのように感じる人もいるかもしれませんが、そうではありません。開発が成功する要因の半分は、相手に自分が思っていること、考えていることを何でも共有できる信頼関係にあると思っています。
SECTION 4/5
チャレンジを認め合う文化
——自分をさらけ出して話し合えるか、フラットに意見を言えるかどうかは、会社の風土にもよりますよね。
グレッグ:そうですね。JTには互いを認めあえる人が集まっており、社員を支えるサポートも充実しています。その文化や仕組みは他社と比べても洗練されていて、会社全体の雰囲気が良く、自分らしく働くことができると感じています。
JTでは、上司や仲間に課題や懸念を気軽に相談することができます。相談すると、誰もが真剣に耳を傾け、力になろうとしてくれます。周りを助けることで会社全体がより良い環境になり、周りも自分も成果も挙げやすくなるという認識が浸透しているからです。
また、会社として社員をサポートする仕組みも多くあります。出張や海外赴任では、会社のサポートのおかげでとても充実した時間を過ごすことができますし、社員が暮らしを大切にできるような支援の一つとして、最近では男性の育休取得も当たり前になってきています。
杉田:ちなみに私も来月から数ヶ月、育休をいただきます。
そして本当にどの拠点でも、コミュニケーションは取りやすいなと思います。私は都内の拠点である墨田R&Dセンターにいるのですが、他プロジェクトや品質管理、知的戦略を扱うメンバーも同じフロアにいて、良い連携ができています。
また、上司が若手の意志を尊重し、責任ある重要な仕事を任せてくれるのも、JTの優れた文化の一つです。JT初のグローバルモデルであるPloom X※2の開発にも、入社数年の私が関わらせてもらうことができましたし、海外とのビジネス経験どころか海外出張の経験もあまりない私に、香港赴任を経験させてくれました。このようなストレッチアサインはさほど珍しいことではなく、社歴や年齢に関わらず、チャレンジングな仕事を与えられる、厳しくもありますが、モチベーションがあがる環境だと思います。
JTはいわゆる日系大手で、思い切ったチャレンジはしにくいと思われがちですが、想像以上の思い切ったアサインや、挑戦機会を与えてくれる会社です。社員の希望やチャレンジしたい気持ちを認めて、その人のキャリアに正面から向き合ってくれるのが、JTの本当に良いところだと思います。
SECTION 5/5
日本だけでなく、世界中のお客様に貢献する
——最後に、学生の皆さんにメッセージをお願いします。
グレッグ:世界には数億人のたばこを吸われる方がいると言われており、私たちの開発により世界中のお客様に商品をお届けすることができます。そして、たばこを吸われない方に対してもたばこ製品の使用以外で何かしら貢献できると信じています。多くの人にとって有益なものをつくるということはとてもやりがいがあります。
また、JTにはアジアやヨーロッパで海外生活を送る機会が多くありますし、英語や異文化を学び、人間的にも成長できる環境があります。より多くの学生に、JTへの就職を検討してほしいですね。
杉田:仕事の時間というのは、人生の中で大きなウエイトを占めており、自分の成長を実感できれば、飽きることなく毎日楽しく働けると感じています。JTには、自分でチャンスをつかむ機会がたくさんあるので、意欲的な学生の皆さんに、是非入社を検討してほしいですね。
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