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INTERVIEW

外資コンサル志望の東大生が気づいた「合理的でないもの」の価値とは

就活を始めたばかりの皆さん、「周りのみんなが受けている人気の難関企業をとりあえず受ける」ような就活をしていませんか? そんな就活に異を唱えるのがJTの藤長氏。東大理系院生として、戦略コンサルや外資マーケ職などを見ていた同氏が「社会に非合理性を残すことの大切さ」に気づき、それを叶えるために選んだ道とは? Goodfindのセミナー講師が、就活生の目線に立って聞きました。

SPONSORED BY 日本たばこ産業株式会社

話し手

藤長 郁夫

藤長 郁夫

日本たばこ産業株式会社(JT)
たばこ事業本部R&Dグループ RRP開発センター主任

張田谷 魁人

張田谷 魁人

スローガン株式会社
Goodfindセミナー講師 兼 選抜コミュニティ責任者

SECTION 1/5

就活初期に戦略コンサルや業界トップ企業を見ていた理由

左:JT藤長氏、右:Goodfind張田谷

張田谷:藤長さんはいつから就活を始めて、最初はどのような企業を見ていましたか?

藤長:修士1年の夏前から始めて、外資戦略コンサル、外資メーカーのマーケ職、日系メーカーの経営企画職、財閥系大手ディベロッパーや経済産業省などのインターンに参加しました。最初は、いわゆる業界トップの企業や人気職種を意図的に受けていましたね。

張田谷: なぜ、そのような企業を見ていたのですか?

藤長:「社会の構造を知った上で、どの立場からキャリアを始めるかを見極めよう」と考えたからです。「立場」とは主に業界と職種のことで、例えば「モノづくりから世界を面白くしたい」と考えていたとして、コンサルタントとして外部から産業や事業の方向性と仕組みづくりにコミットするのか、メーカーの中でコミットするならば、どの職種で最も自身の興味と価値を最大化できるのか、といった観点で社会を知りたいと思っていました。

そのためには各業界におけるアイデアがモノやサービスになってエンドユーザーに届くまでのバリューチェーンを俯瞰して捉え、各業界の潮流を知る必要があります。また業界トップの人気企業には選ばれし魅力的な社員が在籍しているはずなので、そういった人に学ぼうとも思っていました。もちろん、アカデミアの研究者として、産業に対して外部から基礎研究やシーズ創出にコミットするというキャリアも考えました。

張田谷:なんとなくトップ企業や有名企業を受けている学生もいますが、藤長さんには「社会の構造を俯瞰する」という目的があったのですね。

SECTION 2/5

就活で気づいた「頭脳明晰な合理主義者にはなりたくない」自分

張田谷:各業界のトップ企業を見る就活をされてみて、いかがでしたか?

藤長:戦略コンサルのインターンでは、夏から秋の早期内定を狙っている参加者に圧倒されました。私は彼らほど準備をしていなかったこともあり、彼らの議論レベルの高さやその再現性には心の底から感心しました。ただそれと同時に、「自分は彼らのように、頭のキレる合理主義者になりたいわけではない」と気がついたのです。

張田谷: 確かに、夏頃までのコンサル志望の学生は「頭が良いこと自体が価値である」「きれいに整理してケースを解けることが優秀さだ」といった誤解から、ロジックですべてを考えようとしがちです。「合理主義者にはなりたくはない」とは、ロジカルすぎる人にはなりたくないということなのでしょうか?

藤長:研究者なので方法論としてのロジカルシンキング自体はシーン次第では最も重要であると考えているのですが、合理性に関しては、過度に追求することの先に「他者と同質化することへの危機感」を覚えたのです。選考のグループワークにおいて、合理的すぎる人がリーダーになると「理解が遅い人は悪、成果を出さない人は悪」という雰囲気になるようにチームが排他的で画一的になってしまう傾向も感じました。

これは就活に限らず、部活や研究室、会社や国といった組織でも起こっていることではないでしょうか。なんとなく、そういった人が同質化していく環境に自分が所属することへの違和感を覚えた記憶があります。

張田谷:選考のGD(グループディスカッション)でも、きれいなわかりやすい正解を探そうとすればするほど、意見に鋭さや独自性がなくなっていきます。

藤長: 私もそのように感じました。合理性のみを追求する人材は同じような解を導きやすいため、同質化しがちです。従来の資本主義社会は経済合理性から意思決定をするシステムで成り立っていたのかもしれませんが、現在では効率や目の前の利益追求だけではなく多様性を尊重する、持続可能な社会が志向されています。そのような、お金が価値交換をきれいに媒介してくれていたシステムが変わりつつある社会の中で、合理的な判断しかできない人材は陳腐化してしまうのではないかと思いました。

また、合理的になりすぎると「あいつはわかっていない」とすぐ他人に評価を下したくなります。しかし「わかっているか・わかっていないか」というのは、判断する人の持ちうる視点や知識量に依存するため、簡単に判断出来ることではありません。「無知の知」を知り、合理性の中にも余白を残すことや他人の余白を発見して受け入れることが、多様性社会の構築のために一番大切なのではないかと思っています。

ただ、私は合理主義者を否定するわけではありませんし、JTにも合理的な人はたくさんいます。例えばGDの場であれば、合理的な人は議論の前提や意見のまとめ方などを、発散が得意な私に教えてくれます。合理と非合理は互いに力を合わせると強いですよね。合理的な議論の枠組みがあるからこそ、非合理的なアイデアが効果を発揮します。

張田谷: 合理的な人を認めてはいるものの、「自分はそうありたくない」と感じられたとのことで、非常に面白い視点だと思いました。インターンに参加してみて、他にはどのようなことに気がつきましたか?

藤長:社会を俯瞰する機会を得たことで、2つの就活軸が見えてきました。

藤長: 1つめは「超合理的な社会に、非合理的な人間臭さを残したい」というものです。一つの正解や正義を振りかざしたくないため、仕事でも非合理的な考えや遊び心を大事にする立場でありたいですし、そんな自分自身が生きやすくなるためにも、人が生まれながらにもつその人らしさが持続される社会を構築したいと考えました。

また各業界のバリューチェーンを俯瞰した結果、「具体的に何かを生み出す現場で、サイエンスを用いてイノベーションを起こしたい」という2つめの軸になる想いが湧いてきました。

あくまでインターンに参加しての私見ではありますが、コンサルティングや経営企画、マーケティングは数字集めや管理・分析の業務が多く、新しい概念を作り出すことはできても、形にするまでの舵取りをするのは難しいのではないかと感じました。

そこで、私はだれかの作った概念を机上で扱うような抽象的な仕事を行う職種ではなく、現場で具体的にモノ・サービスを作り出しながら、それを一般化させてナレッジにするような、抽象と具象の手触り感がある職種でキャリアを始めたいのだと気がついたのです。そして何より、現場や技術を知らずに、真に新しい概念は作れないだろうと考えるようになりました。

軸が明確になった後は、抽象的な概念を具体的なモノに落とし込み、逆に多様かつ複雑な自然現象を普遍的な知識や理論に昇華させる、研究開発職に狙いを定めて就活を進めることに決めました。

SECTION 3/5

「将来、一番自分がどうなっているかわからない環境」を選んだ理由

張田谷:今までの話を踏まえて、藤長さんはなぜJTを選ばれたのでしょうか?

藤長:JTとは、Goodfindで見つけた「J-CAD」というコミュニティで出会いました。JTの元執行役員の米田さんや当時の採用担当の方と対話をするうちに、この人たちと働けば無知の知を認知し続け、良くも悪くもオトナにならずに知的好奇心を持ち続けることができると確信しました。

研究開発職として具体的に商品や技術と向き合いながらも、たばこや嗜好品の価値といった解のない抽象的な問いに向き合うJTでは、「抽象と具象を行き来する」という、私にとっての哲学を追求できる環境だと思ったのです。

張田谷:明確になった2つの軸とJTは、どのような点で合致していたのですか?

藤長: 1つめの「非合理(人間臭さ)を残す」という軸については、だれかの合理性と別のだれかの合理性の間に空いてしまう隙間を人間臭さで埋めるような仕事ができると思いました。具体かつ現実的な業務としては、非喫煙者と喫煙者の共存のための橋渡し役として、時代の変化に合わせた新製品開発や、相互理解のコミュニケーションづくり、行政との対話などの幅広い活動を行えることが魅力的でした。

またJTは、会う人会う人の人間性がいい意味でばらばらで、社員が同質化されていないと感じました。そのため「多様な合理性をもっている人たちの中で、自身の人間臭さで隙間を埋め合って生きていけばいいんだ」という感覚を、先輩社員に会う度に強く持てたことも魅力的でした。

藤長:2つめの「サイエンスを用いてイノベーションを起こしたい」という軸に対しては、大学院で医工学や科学技術政策を学んでいたこともあり、「多様性社会を支える考え方である“well-being”が、その手段の一つであるヘルスケアの過度な合理化により“must-being (あるべき姿)”を押し付けるものとなってしまうことに警鐘を鳴らし、健康意識の原点をJTで探り、人のもつ健康意識や欲求を満たしながらバランスする“well-being”をデザインしたい」と思いました。

“well-being”の掲げる精神面/社会面における健康状態の基盤になる身体面の健康はもちろん重要ですが、たばこをはじめとした嗜好品の研究開発を通じて、「一見して非合理的なモチベーションを保つことによる心の健康」のための余白を、社会に残せるような取り組みを実践したかったのです。

また何より「将来、自分がどんな人物になっているのか」が、どこもある程度はこの会社に入ったらこうなるなと予想できるなかで、一番想像がつかなかったのがJTであり、不確実性を楽しむ自分のワクワク感が入社の決め手となりました。

JTに入社すると言うと周りの人たちは「なんでJT?」と必ず聞いてきました。なぜ私がJTを選んだのか、はたまた、それ以上に私自身の思想に興味を持ってもらえるようになりました。

これは一つの発見ですが、コンサルに入社していたら、周りの人からは「へぇすごいね!」としか言われなかったような気がします。自分が何者で何を考えているのかを周りの人に興味を持ってもらえることはやはり嬉しいことですし、その問答を通じて常に自分がなぜ今ここにいるのかを問い直すことができます。

SECTION 4/5

人間らしさを大切にし、ひとの心を豊かにする会社

張田谷: 入社後はどのような仕事に携わっていますか?

藤長: 現在は研究開発を行う部署で、RRP(Reduced-Risk Products:喫煙に伴う健康リスクを低減させる可能性のある製品)のデバイス開発をしています。商品企画系の部署と一緒に作り上げたコンセプトを科学的なことばや具体的な技術に落とし込みプロトタイピングをするような仕事から、JT Internationalのグローバル機能を介して世界中の市場のニーズを睨みつつ、求められるタイミングに合わせて着実に開発完了を目指す仕事まで、製品開発サイクル上のさまざまな段階の仕事を経験させてもらっています。

ひたすら形にすることを求められるハードな日々ですが、喫煙に対する逆風が強くなり続けている時代において、お客様の喫煙体験におけるリスクを下げつつも、お客様に「これだ!!」と満足してもらえる体験を届ける上で重要な役割を任されており、やりがいと責任を感じています。逆風が吹き荒れ、振りかざす正義のないカオスな状況でこそイノベーションは生まれると考えているので、常にワクワクも感じています。

またJTでは、たばこビジネスで培った知見を他のモノやサービスに展開して、広い意味での嗜好品化をさせようという試みが随所に見られます。嗜好品の捉え方は人それぞれですが、私は「人が自分らしくいられる時間そのもの」と捉えており、例えばサウナで過ごす時間も私にとっては嗜好品です。

JTにはサウナが好きな社員が多いのですが、加熱式たばことサウナって学術的に親和性が高いと感じていて、というのも加熱式たばこの設計において重要な要素である熱の伝わり方は物理学的にたった3種類しかなくて・・・(以下略)。デバイスの中でのたばこの温め方を極めればサウナをもっと楽しめるようになりますし、逆もまた然りだと思うんです。将来的にはJTにサウナ事業部を創ってみたいという妄想をしています。

張田谷: サウナと加熱式たばこの親和性とは面白い観点ですね。そんなJTは、中の人から見てどういう会社ですか?

藤長:JTは、ひとの心の豊かさを保とうとしている企業であり、たばこはその手段の一つだと思っています。意外に思われることも多いのですが、社内には非喫煙者も大勢います。JTの社員にとって重要なのは「たばこが好きか嫌いか」ではなく、多くの人は「ひとが自分らしく過ごせるひとときや、それを保つための嗜好品の価値」を大切にしています。そして「自分にとってのたばこのようなもの(愛すべき人間臭さ)」を表現しようという人が集まっている会社だと思います。

SECTION 5/5

みんなに人気の場所ではなく、自分にしか見えない景色を見に行こう

張田谷:最後に、就活を始めたばかりの学生のみなさんへメッセージをお願いします。

藤長:私も大学までは、レールに乗ってラベルを獲得する “ブランド重視の人生” を送ってきました。しかし就活を契機に、「レールから外れない優秀さだけの人生は面白くないし、レール上の人生は果たして誰のものなのだろう? 」という疑問を抱くようになりました。

不確実性の高いカオスな時代にレールに乗り続けることは、安定ですらないかもしれません。レールに乗って誰かが見た景色を見に行くのではなく、自分が初めて歩む道の先にある景色の不確実性を楽しめるかが、もっというと今から踏み出す一歩一歩をいかに楽しめるかが、大切なのかもしれません。

また、きれいに就活軸を決めて合う・合わないを判断していっても、最後はリスクを負って1つの道を選ぶ決断が必要になります。最後もし迷ったら、他人の目には非合理的に見えたとしても、最も自分をよく表す「自分臭さ」を真摯に嗅ぎ分け、自分にしか見えない景色を見に行ってみるのも一興です。そのような「自分臭さ」を見つけて、自分らしく全力で走れるフィールドに立ってもらえたらと思います。

編集:

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