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INTERVIEW

障がいを理由に仕事を縛りたくない。なぜ制限を設けずキャリアを追求できるのか

入社後、怪我によって車いす生活になった日本たばこ産業(JT)の富樫剛さん。就活時はやりたいことが明確ではなかったものの、入社後に負った障がいと向き合い続けた経験を強みに、キャリアの軸を見出して活躍しています。なぜ、JTでは障がいの有無に関係なくキャリアを追求できるのか。JTの職場環境や障がいのある社員のリアルな働き方・キャリアに迫りました。


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話し手

富樫 剛

富樫 剛

日本たばこ産業株式会社(JT)
人事部 安全衛生/健康経営担当

SECTION 1/5

就活軸は「キャリアの幅広さ、海外、人」

⸺富樫さんがどのように入社先を選んだのか、就職活動について教えてください。

富樫:海が好きで、大学院では海洋環境工学を専攻していましたが、就職活動は専攻と完全に切り離して考えました。志望業界はもちろん、やりたいことも明確ではありませんでしたが、各業界の主たる企業へ足を運んでいるうちに、自分の中で3つの軸が定まりました。

1つ目は入社後のキャリア選択の幅広さ、2つ目は海外の人と一緒に働くことができるか、3つ目は一緒に働きたい「人」がいるかです。

⸺3つの軸を全て満たしていたのが、JTだったのでしょうか?

富樫:そうですね。1つ目の軸に関して言えば、仕事を通じて、自分がやりたいことや得意なことを見つけていきたい。入社時点でこれという特定のキャリアを決めることはできないと考えました。

自身の適性や志向を理解したうえでキャリアを考えていきたかった私にとって、JTでは専門性を高めるキャリアだけでなく、様々な経験を積むキャリアも選べるので、希望を叶えやすいと思いました。

また、JTは130以上の国と地域で事業を展開しているため、担当業務によっては海外の人と働くチャンスもあります。そして、説明会や選考過程で社員の人柄に触れ、「この人たちと一緒に働きたい」と強く思うようになりました。

⸺技術系総合職(当時)※1で入社されて、最初の配属先では何を担当されましたか。

富樫:神奈川県小田原市にある工場※2で、たばこ製造の品質管理業務を担当しました。製造に関する技術的改善だけでなく、一緒に働く皆さんがもっと働きやすくなるように、モチベーション向上やコミュニケーション活性化を目的とした企画を考える仕事にも携わることができました。これらの業務を通じて、人と向き合う仕事に関心を持ち、面白さを感じ始めていました。

そんな矢先、3年目の夏に休暇で訪れていたハワイで、車いす生活のきっかけになる怪我をしてしまったのです。

※1 技術系総合職(当時):富樫氏の入社時は新卒採用で技術系総合職という枠があったが、現在は「総合職」の中で、営業、製造、調達、R&D、スタッフ業務というカテゴリに分かれている。

※2 小田原市にある工場 :2011年3月末に生産終了、廃止。

SECTION 2/5

障がいを負っても同じ職場に復帰できた理由

⸺車いすでの職場復帰に向けて、JTの方々とはどのようなお話や準備をされましたか。

富樫:入院先の病院に、産業医と上司が毎週来てくださり、車いすを使った状態でも問題なく働けるように、必要なことを一緒に考えてくれました。

当時は、職場に車いすを使用している人がいなかったため、試行錯誤を繰り返しながら、職場内を車いすが通行できるかシミュレーションを行ったり、通勤時の負担を軽減する対応を検討してくださったりしました。

退院前に外出許可が出て職場に行った際は、みんなが「やっと戻ってきたか!」と明るく出迎えてくれて。私が「すみません、怪我しちゃいました」と素直に言い出せる雰囲気をつくってくれて嬉しかったことを思い出しました。一日も早く出社したいという思いが強くなりましたね。

⸺怪我をしてから、どれくらいで復帰されたのですか?

富樫:半年後です。幸いなことに、怪我をする前と同じ内容の仕事に就かせてもらうことができました。このように仕事に復帰できたひとつの理由として、私が車いすになってもできることを、会社と自分の間で共有できたことも大きいと思います。

SECTION 3/5

「できます」と言い続けた結果、上司から言われた一言

⸺実際に職場復帰されてから、困ったことや悩んだこともあったのではないでしょうか。

富樫:職場には無事に戻れたものの、やはり入社当時に思い描いていた夢や憧れが叶えられなくなってしまったと、復帰当初は歯がゆさを感じました。周りのみんなが普通にできることを自分はできないのだと感じることもあり、悔しくて悔しくて仕方がなかったです。

そのような悔しさからか、「たとえ車いすになっても何でもやれるんだ」ということを証明したくて、どんな仕事でも「ひとりでできます」と言うようにしていました。振り返ると、強がって無理をして、自分をよく見せようとしていたと思います。

⸺できる仕事の質や量が、怪我をする前と変わらないことを証明したかったのですか?

富樫:そうだと思います。しかし、それが間違っていることに数年後に気付きました。別の部署に異動した際、上司からこう言われたからです。「ひとりで何でもできるのが良いわけではなくて、お客様にとって一番良いことを実現するのが仕事なんだ。仕事でより大きな成果をもたらすために、周りに頼ることは恥ずかしいことじゃない」と。

私は突然言われた言葉にハッとしてショックを受けましたが、同時に嬉しくもありました。「車いすになった自分が、周りの人の力を借りることは決して自分が弱いわけでも悪いわけでもない。車いすであろうがなかろうが、より大きな成果をもたらすためにどうするかが大切なんだ」と、初めて気づき、理解できたからです。

それからは素直に周りの力を借りて、より良い結果を目指して日々仕事を進めるようになり、これが私のキャリアの転機の一つとなりました。

⸺周りの力を借りることで、より良い結果をもたらせた具体的なエピソードをお話いただけますか。

富樫:例えば社内研修プログラムを作る際に、周りの力を借りたことが成果につながりました。

自分で一通り情報収集を行い、そのうえで組み立てたプログラム案をもとに、論理的に考えることが得意な人にストーリーを補強してもらったり、以前に似た研修を受けたことがある人の意見を聞いたりしました。自分にはない知見や経験のある人に相談し、一緒に作り上げることで、自分とは異なる視点が入り、より充実したプログラムを作ることができました。

自分が良いと思っているものは、自分の物差しでしか考えられません。周りの力を借りることで、自分ひとりでやるよりも、さらに良いものが作れることを体感しました。

SECTION 4/5

向き合い続けたから「自分の経験は価値ある個性」だと思える

⸺就活時の富樫さんは「入社後に仕事をしながらやりたいことを見つけたかった」と伺いました。現在ご自身は、何を軸にキャリアを歩んでいるか教えてください。

富樫:これまでの仕事を振り返ると、私のキャリア軸は「一緒に働く誰かのために何かをすること」だと思います。

これまで共通して「人」と関わる部署で経験を積み、やりがいや面白さを感じてきました。それと同時に、人のことを一生懸命考え、人という観点で何かを実行することにより「自分だって会社に貢献できることもあるんだ」という実感を得ることもできました。

これは、JTという会社が障がいの有無にかかわらず、誰もが同じように働くことができる環境であり、そこで自分なりに思う存分チャレンジさせてもらえた結果だと思います。

⸺障がいがキャリアの妨げになったり、働く中で困ったりしたことはなかったですか?

富樫:もちろん、階段を上れない、高い所にあるものが取れないといった、車いすの自分がどうしてもできないことがあるのは事実ですが、どれも私にとっては些細なことです。

それよりも、自分には自分にしかない経験、具体的には、自分の障がいと向き合い続けてきたからこそ気づいたことや得たことを持っているのだから、それを仕事に活かそうと考えるようになりました。

例えば、以前所属した多様化推進の部署では、「自分が直接多くの人と接することで、多様性の一つの形を知ってもらう良いチャンスだ」と考えていました。健康経営を担う現在の部署では、「失ってから健康の大切さに気づいてほしくない」という経験から抱いた思いを持って、ひとりでも多くの人に自身の健康と向き合ってもらうように働きかけています。

欲張って言うと、自分が社内で積極的に動きまわることにより、車いすを使っている人や障がいのある人へのイメージを、少しでも変えるきっかけになるのではないかと思っています。

正直に白状すると、自分の障がいをポジティブに捉えるまでにはかなりの時間がかかりましたが、正面から障がいと向き合い続けてきたことで、こうした「私のオリジナルな経験は価値あるものだ」と今は認識できていて、これこそが私の個性であり強みだと思っています。

SECTION 5/5

障がいを理由に「できない」なんて言いたくない

⸺車いすで働く上で、特に意識していることや工夫されていることはありますか?

富樫:車いすを使っているからというわけではありませんが、思ったこと、伝えたいことを適切に言葉にして伝える言語化能力は非常に大切だと思っています。

例えば、一言で障がいと言っても多様で、自分のように足が動かせない方もいれば、目や耳に障がいを持っている方もいらっしゃる。もちろん身体的な話だけではありません。加えて、できること・できないことをはじめとした、本人の障がいに対する認識もさまざまだと思っています。

だからこそ、まずは困っていることや配慮してほしいこと、触れてほしくないことを自己認識して、次に周りへ理解してもらうために言語化する能力が重要であると伝えたいのです。

私個人の経験として、障がいと向き合うタイミングは人生で何度かあると思っています。その一つが就職活動ではないでしょうか。このとても大切な機会に、自身の障がいと真摯に向き合い、相手に伝えたいこと、伝えたくないことを認識したり言葉にしたりすることがきっと大きな助けになるのではないかと思っています。

ただ、こうやって言うのは簡単なのですが、とても勇気がいりますし、パワーも必要です。私個人としても素直に皆さんを応援したいですし、少しでも力になれたらと思っています。自身と向き合って、言葉にして相手に伝えることで、自分とぴったり合う会社を見つけることや、就職後の企業側の配慮にもつながると信じています。

⸺ずばり、障がいのある人にとってJTはどのような環境だと思いますか?

富樫:障がいの有無に関係なく、誰もが同じように働ける環境ですし、何より「JTで働くというなかで、障がいを理由に自分の実現したいキャリアを諦めてほしくない」のです。

これは、障がいのある人に配慮した職場の設備が整い、「ありのままの自分」を重んじる社風があり、個性や多様性を尊重する社員がいるJTだからこそ、実現できるチャンスがあると思っています。

実は私自身、車いす生活になった当時は、海外出張に行くことを諦めていました。しかし、それは私が「車いすでは行けない」と考えていただけであり、のちにJTIのスイスのオフィスに出張することができました。

もしかすると、障がいがあるからできないと思っていることの大半は、障がいが本当の理由ではないかもしれません。ひとりでできないのであれば、周りの人に助けを求めればいいからです。先ほど述べた、「決してひとりでやることが全てではない」と認識することで、仕事の幅はどんどん広がります。

⸺ハード面、ソフト面が整っているからこそ、誰もが同じように働ける環境があるとわかりました。障がいのある人は、JTでどのようなキャリアを歩めますか?

富樫:障がいのある社員は、さまざまな分野で活躍しています。今後入社する皆さんには、私を含む先輩社員たちが歩んだキャリアに囚われることなく、ご自身の実現したいことを見つけて、新たなキャリアをどんどん切り拓いてほしいです。

願わくば「できないこと」ばかりに目を向けるのではなく、「自分ならば何ができるか」に向き合い、自分らしいキャリアづくりに思う存分チャレンジしたい方、ぜひ一緒に働きませんか?

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