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EVENT REPORT

「軸なんていらない」自分に合う企業の見つけ方・後編

「仕事力を鍛えるには社風の合う会社を選ぼう」「内定するのは優秀な人ではなく合う人」 ――30年以上に渡って新卒採用を見てきた元JT人事部長 米田氏と、Goodfind/FactLogicなどで1万人以上の学生のキャリアを支援してきた野島氏。2名の採用のプロが明かす採用の裏側。前編に続き、後編です。

SPONSORED BY 日本たばこ産業株式会社

話し手

神谷 なつ美

神谷 なつ美

日本たばこ産業株式会社(JT)
事業企画室採用研修チーム次長

米田 靖之

米田 靖之

元JT執行役員R&D責任者

野島 繁昭

野島 繁昭

J-CAD企画責任者

SECTION 1/5

内定後こそ社風を確かめるチャンスだ

──神谷:「優秀そうな人ではなく合う人が内定している」というお話でしたが、少し視点を変えて。例えば、ある学生が戦略コンサルとJTの内定を持っています。双方の企業が「君はすごくうちに合ってる」と学生に言う。どこの会社もプロ面接官ならば「合う・合わない」で見ているはずなのに、社風の違う会社で謎にカニバる。なぜ社風の異なる企業が同じ学生に内定を出すのですか?

JT神谷氏

米田:企業側の視点をお伝えすると「他の学生よりはあなたはうちの会社に向いてるよ」とは言えますが、「あなたにとってうちの会社が一番向いている」かどうかは、面接官にはわかりません。

正直なところ、企業がほしい学生が重なるというのは、ある程度は起こり得ることなんです。なので、企業からどう言われたとしても、結局は学生自身が「自分が合う」と思う方を選ぶことが大事ですね。

──神谷:学生側が自分で選ぶのが大事だとして、なぜ学生は社風がまったく違う2社で迷うのですか?

米田:ほとんどの学生は「どうやって自分に合う会社を見つけたらいいか」を教わってないので、多くの学生がイメージだけで人気企業を志望するからです。ただ、応募が集中する人気企業ほど学生と社員をなかなか会わせられません。そうして外から見えたイメージで「この会社はなんとなくよさそう」と学生が思っているケースでは社風が違う企業同士でカニバることがあります。

私の経験上は、学生が実際に社員と会ってちゃんとコミュニケーションをとっていればそういうカニバリはあまりないですね。

SECTION 2/5

自分に合った企業を見つける秘策

──神谷:ところで、面接で社風は感じられるのでしょうか?

野島:実際、学生からすると内定までは受かることに必死で、内定までの過程で面接官としっかりコミュニケーションをとるのは結構難しいですよね。OB訪問といっても選考要素もあったりして。内定をとるまでは緊張の連続で、相性はわからないかもしれません。内定までいくとフラットに社員と会わせてもらう機会を交渉して、徐々に相性がわかってくるとは思いますが。

Goodfind講師 野島氏

米田:社風を感じるために「3人と会う」というのは面接じゃだめなんです。ちゃんと相互にコミュニケーションをとってないとダメ。なぜなら多くの企業の面接というのは、社員が学生に質問をする一方通行で、学生からは自由に質問ができないからです。

社風を感じるには学生が社員に何でも聞ける機会が必要です。でも現在の一括採用のシステムでは、3人の社員とコミュニケーションをとる機会を持つのはなかなか難しいですね。

──神谷:では、社風を感じるために学生はどうしたらいいですか?

米田:内定をとった後に、学生から人事に連絡する手があります。その際注意することは、複数内定があるときに「他の内定がある」と言っていい会社と、言っていけない会社があることです。誓約書を書かせるような会社は「他の内定がある」とは言ってはいけない会社です。

前者の場合「Aという企業と御社とで悩んでいるんですが、よく理解した上で決めたいので、あと3人社員さんと会わせてくれませんか?」と言えば、大抵は会わせてくれます。問題は後者。他の内定があると言っちゃいけない会社に対しては頼み方に気をつける必要がありますが、基本的には前者と同様に「よく理解した上で入りたいので」と頼みます。それでも会わせてくれない会社は、社員を大切に考えていない可能性が高いのでやめておいた方がいいかなというフィルターにもなります。

ただ、選考中や初期の段階で人事に頼んでも社員に会わせてくれません。というのも大企業だと数千人単位で応募が来るからです。ただ、内定した瞬間から無理を聞いてもらえます。内定をとるまでが山登りで言うと五合目。そこから複数内定があるのなら、ちゃんと各社の社員に会っていくことです。

野島:それをやっておかないと10月の内定式でこんなはずじゃなかったとなります。実際今年も誰もが知ってる有名企業の内定者で迷っている学生がいて、相談されました。内定先が有名企業すぎて内定が嬉しくて舞い上がっちゃう気持ちはわからなくもないですが、喜ぶのは1日くらいにして、その後、冷静になって、いま米田さんがおっしゃったような対応をすることが大事ですね。

神谷:フィーリングと言いますか、社風が合うかどうかの直感のようなものは、JTでもすごく大事にしています。私たち人事は、私たち自身もたくさん学生との対話の場を持ちますし、他の社員と会ってもらうお手伝いもしています。

米田:有名企業の話が出ましたが、その中でいい会社の順位をつけようとしても絶対にわかりません。よっぽどのブラック企業でない限りはみんないい会社だからです。いい会社かどうかの偏差値はみな同じ60くらいですが、社風はみな違い平面に広がって分布しているイメージです。だから「いい会社」を探しにいくのではなくて、「合う会社」を探しにいくことが大事です。

野島:相性が対局にある会社が、ある意味その人にとってブラック企業なのかもしれませんね。自分はめっちゃ働きたいのに残業だめだよと言われるとか。逆に、早く帰りたいのにまだ終わってないでしょと言われる、というような。

米田:例えば大手広告代理店の代表的な2社でも、A社とB社では社風は全然違います。片方の人にとっては逆にいくと合わなくて面白くない。そんな感じです。

SECTION 3/5

「志望理由や軸」を聞かれたらどうする?

──神谷:とはいえ、面接官が見ているものは、相性の他にも色々あると思うのですが。たとえば、軸とか。面接で「志望理由は?」とか「就活の軸は?」と聞かれたときに、どう答えたらいいのでしょうか?

米田:面接のコツとして学生に伝えていることがあります。「最初礼儀、後本音で回答」です。先程お話した通り、素人面接官にあたると典型的な質問をされがちです。例えば「うちの会社に入って将来何したいの?」という質問。本音で答えると、「実際に仕事をしたことがないため、仕事のことがまだよくわからず、実のところ入社してやりたいことは今の段階ではわかりません」となります。

しかしそう本音で答えると、質問にまともに答えていないととられてしまい、落ちる可能性が高くなります。こういう典型質問対策として、今の就活生は企業のホームページなどで事前に調べて想定問答を用意しておき、それに基づいて回答することが多いですね。しかし当然ながら仕事はやったことがないので、面接官から見ると、その回答は穴だらけです。そのため更問で突っ込まれるとだんだんしどろもどろになってしまいます。

そこで「後本音」の技を覚えておく。最初は礼儀として、その企業について事前に調べたことを基に話しておいて、そのあとに「ただ、まだ仕事したことないので実のところよくわかりません。今の自分のレベルではで力が全然ないので、まずは力をつけないといけないと思っています」という風に本音を付け加える。そうすると更問で何が来ても怖くない。最後に本音で答え終えた場合、更問の回答はその場で考えても答えることができます。

SECTION 4/5

なんでうちの会社がいいの?と聞かれたら?

──神谷:なんでうちの会社がいいの?と聞かれた時の技はありますか?

米田:「なんでうちの会社がいいと思ったの?」への答えは、さらに高等テクニックがあります。さっきの「本音」で答えると、「お会いした御社の社員の方が合うと思いました」になる学生が多いと思います。ただ、それをいきなり言うと落とされるケースがあります。なぜか。面接官は「どこの企業でも使える、使いまわしのできる答え」を嫌がるからです。

なので「最初礼儀」で答える。「同じ業界でも御社はこうなので、こういう点がいいと思います」などと言って、その上で本音を出していくんです。

「最初はそれで志望していましたが、就活でいろいろな会社を見ていくうちに同じ業界でもこんなに違うんだと感じるようになりました。いろいろ見た中で、御社の社員の方にお会いして一番自分に合う会社だと思いました」と言う。ただそこで止めちゃうとどういう目に遭うかと言うと、面接官から「仕事って遊びじゃないんだけど、合う人のいるところに行けばいいって、なんでそれでいいの?」と突っ込まれて、答えに窮してしまいます。

ただ、先程のエッセンスを理解できていると、そこですかさず、「仕事はまず力をつけることが重要だと思います。力をつけるためには自分で頑張りつづける必要があると思っていますが、頑張り続けるには、合う・合わないがすごく大事だと就活をやっていくなかで感じるようになりました」と言うと、面接官もそれ以上突っ込んでこないと思います。こいつなんかよくわかってるなと。それ以上突っ込みようがないですし、そこまでいくと本音の世界になってくるので、聞かれたことにその場で考えても答えられるようになります。

さらに具体事例があると説得力があるので、例えば「先日御社の〇〇さんにお会いした時に、なぜかわかんないですけど意気投合しました」と具体名を出す。最初に感覚で話すと落とされますが、最終までの過程で、企業理解もして人にも会って最後まで残ったのならば、感覚でもいいんです。「就活中にいろいろ経験、勉強してだんだんわかるようになりました」と言えば、おそらく大丈夫です。

神谷:今のはまずいですね(笑)。採用担当としても、つっこみようのない回答です…。

SECTION 5/5

つくられた志望理由よりも本音で語ろう

野島:ちょっと話もどりますけど、なんでうちの会社がいいの?と志望理由を聞いた時に3分くらい機械のように流暢に話されると「これほんとかな?」と疑ってしまいますね(笑)。

神谷:ちなみに、JTでは志望理由はあまり聞きません。用意してきた学生に対してアイスブレイク的に聞くことはありますが。素の自分や本音を出してもらった上で、相性を重視しているためです。

米田:理路整然と答えられる学生は危ないですね。自己分析や対策をやりすぎていて、本人が良い事を言おうとしてなくても、もう事前に準備した答えで頭が凝り固まっていることがあります。スラスラ答えちゃうと、逆に面接での評価が下がる可能性があります。

神谷:学生さんだけでなく、企業の採用担当の方にも、米田さんのおっしゃるプロ面接官の面接方法や視点を広めていただいた方がいいですね。

学生のみんなにとっては、冒頭の話の通り、仕事の力がつくように頑張り続けるためには社風が合う会社に入るのが大事です。そのためにはネットの情報やイメージではなくて、実際に社員に会って社風を感じることが必要です。自分らしさを出して、素直な自分で合う会社を見つけてほしいなと思います。

JTの面接も、そこを大切にしています。作られた自己PRや志望動機ではなく、素直な自分を出してほしい。素の自分がJTに合うと思えるなら、入社すればよいし、違うならしなくてもよい。でも実は素直な自分を自分で知っているかは難しいので、自分自身を見つめなおすお手伝いをしたいと思っています。なので、とにかく就活ではたくさん社員に会ってみてほしいです。

編集:

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