EVENT REPORT
事業家キャリアの羅針盤。「仕組みの上で踊る人にはなるな」

新市場を切り拓く気鋭の経営者たちが、事業家としての原点や、事業を「つくる側」になるための成長環境について熱く語りました。登壇したのは、91万社超が利用するプラットフォームをはじめとした連続的な事業立ち上げで急成長を遂げているkubell取締役COOの福田 升二氏、レガシー産業の変革に挑み、新卒事業家も多く生み出しているBizDevカンパニー・Speee代表の大塚 英樹氏、企業経営の意思決定を効率化・高度化するビジネスを展開し、累計100億円の資金調達を果たしているログラス代表の布川 友也氏の3名です。異なるバックグラウンドをもつ3名の経営者が、事業家を目指すあなたの未来を照らす示唆を贈ります。
※2025年2月11日に開催した「Goodfind Shapers Tokyo2025」第2講演の採録記事です。
【謝礼あり】読後アンケートご協力のお願い(計6問・所要時間1〜2分)
SPONSORED BY 株式会社kubell(旧Chatwork)、株式会社Speee、株式会社ログラス
話し手

福田 升二
株式会社kubell
取締役 兼 上級執行役員COO

大塚 英樹
株式会社Speee
代表取締役CEO

布川 友也
株式会社ログラス
代表取締役CEO
SECTION 1/5
商社、学生起業、投資銀行…事業家になるまでの軌跡
⸺新産業を切り拓いている経営者の皆さんに本日はお越しいただきました。最初にお三方がどのようにして事業家になられたのか、これまでのキャリアと経緯をお聞かせください。

kubell 福田:私は最初から事業家を目指していたわけではありませんでした。社会において事業を多数創出する人々の優秀さを知り、メガベンチャーへ転職して以降、様々な事業に触れることで、事業家としての能力を身につけることができたという感覚が近いです。
私が新卒入社したのは2004年で、本格的に普及し始めたITで何か面白いことができないかと思い、積極的にIT投資をしていた伊藤忠商事に入社しました。IT産業が盛り上がる中、仕事の中で事業づくりをする多くの人たちと会い、今後伸びる領域で事業を創出する人が圧倒的に優秀であり、そのような経験がなければビジネスパーソンとして成長することはできないと感じたのです。
そこで、成長領域でサービスを展開していたエス・エム・エスに転職。SaaSの事業など、多様な事業に触れることができました。私が在籍していた7年の間に会社が10倍以上に成長したこともあって、戦略策定や採用を含めた事業・組織運営を行う機会に恵まれ、事業家としての能力を身につけることができました。
そこからkubellにジョインしたのは、日本企業の99.7%を占める中小企業のマーケットにおいて、たくさんの事業を創出できるのではないかと面白さを感じたからです。様々な理由からビジネス効率が悪いために参入企業が少なかったこのマーケットを開拓し、自分の力を社会のために活かしたいと考えるようになりました。
Speee 大塚:私は幼い頃から経営者になりたいと思っていました。経営者だった家族の影響で起業家の本を読み漁り、幼い頃に憧れていた人はセブン&アイ・ホールディングスの鈴木 敏文さんやイトーヨーカ堂の伊藤 雅俊さんでした。友達少なそうですよね(笑)
通常、一つの企業の中で、1〜2回イノベーションを起こすことができれば歴史に残るような素晴らしい会社と言えるのですが、今挙げた企業は、イノベーションの数が尋常じゃないんです。共通するのは、消費者データを活かしてトライアンドエラーを繰り返し、とにかく打席に立つ数が多い点です。
世の中のブームや画期的な消費者体験は、このような熱心な事業家がデータを分析し様々に企画を練り上げてつくったものなのではないかと考え始めたら、社会というのはビジネスの集合体だと感じるようになり、世界の見方が一気に変わりました。事業家は社会創造に携われる。そう感じてさらに学生時代も本を読み続けました。
ただ、様々な事業家の功績に触れる中で憧れが強すぎるあまり、起業の一歩をなかなか踏み出せなかったんです。しかしディー・エヌ・エーの南場 智子さんのような、とてつもない熱量の起業家たちに出会い、お話を聞く中で感化され、「自分もそうなりたい」と主体性を持って前に進めるようになりました。そして、大学在学中の21歳でメディア関連事業の会社を起業し、譲渡後に25歳でSpeeeの代表となりました。
ログラス 布川:私は「日本を良くしたい」という想いがきっかけでした。幼少期の1999年頃、私はシンガポールに住んでいました。当時チキンライスを食べようとすると一食200円程度でしたが、今は900円、高級料理店なら2000円はします。シンガポールの物価の伸びは、日本を追い越しているんです。何が言いたいかというと、日本ほど低成長の国は少ないのではないかということです。
慶應義塾大学を卒業後、新卒でSMBC日興証券の投資銀行部門に入ったのですが、そこでも悔しさを感じる2つの経験、出来事がありました。新卒ではM&A業務に携わり、外資系ファンドに日本の企業を売却する支援をしていたのですが、私は日本の優れた企業が他国の成長エンジンとして組み込まれていくような悔しさを感じてしまったのです。
2点目は、新卒入社後、アメリカに留学していた大学時代の友人に会った時に「日本に未来はないと思っているから、アメリカの企業に就職する」と言われたことです。日本で就職する予定の皆さんもこの言葉にどこか悔しさを感じませんか?
日本を良くするためには、日本発の企業を急成長させて、グローバルで稼ぐ企業にしていくしかないと考えています。そんな野心からスタートアップを創らなければと強く思った私は、事業の種を探す中で、すべての企業の根幹である「経営管理」を高度化するという事業にたどり着き、ログラスを創業しました。
SECTION 2/5
事業を「つくる側」になっておくべき理由とは?
⸺お三方のお話からも、日本や社会を変えたい、世の中をより良くしたいと考えた時に事業家という道があることがわかります。就活生の皆さんが新卒入社後、事業に何かしらの形で携わる機会は多くあると思いますが、お三方のように事業を自ら「つくる側」になる必要性があるのはなぜでしょうか。

ログラス 布川:突然ですが、皆さん小学校の時にフラスコに入った二酸化マンガンに過酸化水素水を入れて酸素を発生させる実験をしたことがありますよね。私の中で事業をつくるとは、フラスコを作ったり、過酸化水素水を注いだりすることだと思っています。
過酸化水素水をビジネスモデル、二酸化マンガンを経営者や社員の方々と仮定すると、優秀な経営者や社員が存在すれば早く酸素は出ます。ただフラスコが割れたり、そもそも過酸化水素水がなかったりした場合、酸素は発生しません。どれほど良いビジネスモデルがあり、優秀な人材がいたとしても、単体では価値を発揮することはできないということです。

事業をつくるというのは、これらを適切に組み合わせることで仕事をつくり、社会に価値を提供する仕組みをつくること。AIをはじめ今後新しい技術が出てきた際、仕組みをつくり、過酸化水素水を注ぐことができる人になっているのかどうかで人生は大きく変わります。
漫画『ONE PIECE』で例えるなら、ルフィという、仕組みをつくる側になるのか、冒険の後半に加入する船員になるのかという違いです。起業をする人が偉いと言いたいのではありません。自分が人生の主人公でいたいという想いが強い方は、ぜひ事業をつくる側を目指してほしいと思います。
Speee 大塚:布川さんは理系的なメタファーで説明してくださったので、私は文系的なメタファーで説明したいと思います。事業家としてのキャリアを歩むと、多くのことを「変数」として認識できるようになるため、つくる側になることをお勧めしたいです。
例えば、成熟した歴史の長い企業で、ある制度が存在したとします。その制度は一体何世代前の先輩が作ったのか、そもそも変えられるものなのか多くの人がわからず、「定数」だと捉えてしまうんです。大したことない会議で、その時の都合に合わせて1回作ってみただけかもしれないのに。皆さんも部活やサークルで、そんなルール、ありませんでしたか?
一方、ベンチャー・スタートアップでは新しい市場を開拓し、前例のない業務に携わることが多く、制度や決まりそのものが存在しなかったり、あったとしても、誰がつくったのかがバイネームでわかるため、多くのことを「変数」として捉えられるようになります。「ここは当たり前ではなく、変数なのでは?」と気づくことができれば、事業を「つくる」思考ができているということ。多くのことを「変数」として認識できる力は事業家となることで育まれる素養であり、社会にイノベーションをもたらす力なのです。

kubell 福田:私も大塚さんがおっしゃるように「変数」に注目しています。
今の日本は、AIの普及や終身雇用の崩壊など、これまで「定数」だと考えられていたものが、どんどん「変数」になっています。当たり前だと思われていたものが当たり前ではなくなる中、既存の仕組みに依存できなくなる世界がきっとくるはずです。
そうした「変数」が増えていく中で仕組みを作り上げる力は、皆さんがこれからの社会で生き抜くために圧倒的に重要です。なぜなら、そのような仕組みを作り上げる力こそが、既存の枠組みにとらわれず、新たな価値を生み出す発想と実行力、つまり事業を創造し、成長させていく力の源泉となるからです。これから社会人になる全ての人が、仕組みを作り上げる力を身につけておいた方がいいと思っています。
SECTION 3/5
最短で事業家キャリアを歩むために必須なこと
⸺それでは実際に事業家になるために新卒では、どのような環境を選べばいいのでしょうか?
kubell 福田:環境を選ぶ際に圧倒的に重要なのは「アプローチの自由度があるか」です。目的や目標だけが与えられ、その達成に向けて自分で自由に、試行錯誤しながらたどり着ける環境が必要です。
手取り足取り教えてもらえるような、型にはまった環境では、仕組みの上でただ踊る人になってしまいます。そうではなく、自ら仕組みを作らせてもらえる会社に身を置くべきだと思います。我々のようなベンチャー、スタートアップは、常に変化が起きる環境の中で、既存の枠組みにとらわれず、柔軟に仕組みを再構築できる環境にあり、これがまさに成長環境につながっていると思います。
Speee 大塚:今の福田さんのお話に100%同意で議論の余地はないと私は思います。さらに「渾身の試行錯誤」をしている、様々な種類の人材の近くで働くことが必要だと思います。世の中には「この人、本当にすべてを変数として捉えているな...!」という、まるで怪物のような人がいるんですよ。そんな人の近くで働くと、強い影響を受け、「自分にもできるかもしれない」と心に火がつきます。
加えて年齢も重要です。若い時に「変数」の概念を理解しないまま年齢を重ね、出世を最優先に据えた思考にシフトしていくと、試行錯誤の意義や価値に気づくことができなくなってしまいます。「渾身の試行錯誤」の重要性をピュアに理解できる若いうちに、そうした環境に身を置くべきだと思います。
ログラス 布川:学生の皆さんには、まずは自分でビジネスをやってみてほしいと思います。ビジネスの本質は「サービスを売り、原価を差し引いた利益を得る」ことです。例えば、メルカリでせどりをするというようなことでも構いません。そうした小さなことからやってみて、PDCAを回せる環境をつくってみる。それが、お二人もお話していた仕組みの上で踊るキャリアではなく、自分で仕組みをつくるキャリアを歩み始める最初の一歩になると思います。
一番良いのは学生起業することだと思いますが、次点で、新卒で新規事業にアサインされ、事業づくりの地力をつけさせてくれる企業に行くことをお勧めします。

SECTION 4/5
学生から「起業の際のアプローチ方法は?」「コンサルに行こうと思うが起業もしたいと思い...」
編集部:対談では、学生起業や、起業を目指す際のファーストキャリアの選択に関して参加者からの質問に答える場面もありました。
学生(早稲田大学):学生時代に起業する際、学生視点でどのように課題を見つけ、アプローチしていけばいいのかポイントを教えてください。
Speee 大塚:学生のうちは自分の中でアクチュアルな課題がないことが難しいですよね。私の場合は、若いからこそ課題を発見できる領域というのを大切にしていました。例えば、学生の頃はガラケーが広まり始めた時期だったので、ガラケーに関するデータ分析をして企業や有名なマーケターにお話をすると、真剣に聞いてもらえました。
新しい市場が勃興するタイミングでは、若い世代がいち早くそこに参入することで、その市場がより拡大してきたという歴史があります。そうした新市場がどこで生まれるかを知るために、私は上場企業の分析もたくさんしました。アクチュアルな課題を見つけにくい時はデータ、ファクトを析出し、のめり込める場所を見つけるというのが、一つの方法だと思います。
学生(京都大学):将来起業したいと思っています。一方で、優秀で就活においても成果を出した人が行く場所はコンサルだと思っており、新卒ではコンサルに行こうと考えています。起業家を目指す場合、新卒でどのような選択をすればいいか、考えをお聞かせください。
kubell 福田:自分の中でまず決めたほうがいいのは、時間軸ですね。2〜3年以内に起業したいのであれば、なるべく早く起業に向けて動いたほうがいいと思います。5〜10年後や、あまり時間軸を据えていないなら、必要なスキルを身につけるために様々な選択肢がとれるでしょう。
コンサルか事業会社かというのは、ほぼ価値観の違いだと思います。ファクトとして捉えたほうがいいのは、コンサル出身、事業会社出身で起業している人、それぞれのメリットデメリットが必ず存在するということです。ただ、唯一の正解はありません。起業を目的としたキャリアの最適解は人によってそれぞれ異なります。いろんな人に話を聞きながら、皆さんスタンスをとって話しをされると思うので、それはファクトではなく話半分で聞きながら、どれが正しいのか自分の中でみつけていく作業が大切だと思います。
ログラス 布川:様々な選択がある中で迷ってしまうかもしれませんが、私は「なんでコンサルに行くんですか」と思ってしまいました(笑)。すぐに起業したほうがいいのではないかと思います。むしろコンサルに行くと、起業するときに崖を飛び降りるような気持ちになるかもしれません。コンサルで30代だと2000万円ぐらいの収入があるところから、事業家になると年収200万まで下がる、みたいなことがありますからね。もし家族がいたら、その選択ができる方は少ないかもしれません。
Speee 大塚:すでにクレバーな大人たちのアドバイスをたくさん受けたと思いますが、私はその質問の正体は「自分はコンサル的なものをやっぱり選びたい。でもかっこいいと思う大人たちは、起業をやたらと推している。この折り合いをどうつけたらいいかわからないから、背中を押してほしい」ということではないでしょうか。
考えを深めるときの助走としては、とても正しいことだと思いますので、安易に答えを出さずに深く練り上げていけばいいんじゃないかと思います。そうするうちに、自分の中で本当の意志が湧き上がって、他人の意見を求めなくてもいい境地に至る気がします。

SECTION 5/5
選考倍率の高いサマーインターンを開催
⸺これまでの議論や質疑応答を通して、多くの人が新たな気づきを得たのではないでしょうか。では最後に、就活生の方へメッセージとサマーインターンの紹介をお願いします。
ログラス 布川:ログラスではCFOや経営企画ポジションのクライアントにソフトウェアを提供し、経営の意思決定をサポートしています。インターンは、経営データを分析して事業の課題を設定し、経営シミュレーションを行い、事業を2倍に伸ばすための提案を事業会社内の経営企画として振る舞いながらやっていただくプログラムです。
3日間で事業分析の基礎から学び、事業会社ならではの、自らが当事者として解像度高く事業を理解し、人材やリソースが不足する中でも圧倒的な結果を出すビジネスストラテジーを生み出すというインターンです。
ログラスでは新卒3期生の数名を採用するために全ての採用活動を実施しており、選考倍率は100倍近くになることを見込んでいます。定員は各日10~15名という少数ですが、奮ってチャレンジしていただきたいと思います。
【27卒向け ログラスサマーインターン】
Speee 大塚:Speeeでは、変革の進まないレガシー領域の課題解決に心血を注いでいて、中核的な課題を見つけるためにディープダイブして産業理解をし、それに対してどのような事業で解決し、この国に変容を起こしていくかということを熱心にやっています。
インターンは、そうしたSpeeeの取り組みを体験してもらえるような2種類のプログラムを用意しました。事業づくりを体感できる「BizCam」と組織作りを体感できる「ENJIN」です。「BizCam」では業界の本質的課題に向き合い、実際に事業アイデアを作り上げてもらいます。「ENJIN」では、新しい価値を生み出す事業を発展させるには、どのような組織であるべきなのか、考えてもらいます。限られた条件の中ですが「渾身の試行錯誤」を一緒にしていくインターンになっていますので、興味のある方はぜひ参加していただきたいです。
kubell 福田:kubellでは、日本の労働人口の約7割を占める中小企業で働く人々のAI活用支援やDXを行っています、導入社数91.5万社、750万ユーザーを超えるビジネスチャットツール「Chatwork」の基盤を活かして、ビジネスチャットに留まらず、経理や労務、総務、採用、Web制作といった業務を巻き取りDXを推進するBPaaS領域をはじめ中小企業をターゲットに据えた新規事業の創出に力を入れています。
サマーインターンのテーマは「中小企業の課題を探り、“DX”を用いて課題解決プランを立案せよ」です。社会的課題の一つ「DX」に正面から取り組むことで、実践的なスキルや思考力を身につけることができます。選考通過率は数%という難易度の高さですが、実は面接では志望動機やガクチカなどはほとんど聞かないので、自己分析を深める手段としても選考にチャレンジしていただければと思います。
【27卒向け kubellサマーインターン】
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