COLUMN

【ベンチャー100社の資料公開】30代CxOを目指すための「本気のキャリア論」

ビジネスシーンで活躍する経営者たちは、どのような経験を積み現在のポジションに就くに至ったのでしょうか。今回は、ベンチャー企業への転職支援に特化したエージェントサービス「Goodfind Career」から、CxOキャリアの解説記事をお届け。実際にベンチャー100社のCxOを分析し、就任までのルートや、求められるスキルについて徹底的に考察しました。多くのビジネスパーソンとベンチャーを支援してきたプロの目線から、CxOを目指すためのキャリアを学びましょう。経営者を本気で目指したい方、必見です。

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CxOってどんな人?100社調べてみた

日頃、Goodfind Careerでキャリアの相談をいただくなかで多いのは「ベンチャー企業でCxO※1や役員になりたい」というものだ。ベンチャーの役員やCxOが「どのような経歴なのか」については、企業プロフィールを見れば一目瞭然だ。しかし、その一方で、実際にそのようなキャリアを歩むためには、どのように考え、選択すればよいのか。その質問に対する汎用性のある答えが、世の中に存在しているとは言い難い。

※1 CxO:CEO、CFO、COOといった、Chief ◯◯ Officerの総称。

今回、「30代CxOを目指す『本気のキャリア論』―CxOリアル転職エピソードから学ぶ、狂気とカオスの中で勝ち抜くコツとは?」というイベントに登壇したので、その際に話した内容を記事として残そうと思う。


CxOキャリアを分析すべく、業界に偏りがなく、フェーズとしても一定の網羅性がある母集団として、東洋経済から2020年8月に発表された「すごいベンチャー100」を用いた。

実際に経営陣の経歴を研究するのに使用したファイルも以下にて公開しようと思う。これを眺めているだけでも純粋に面白いし、ベンチャー役員のCxO、という漠然としたイメージも解像度があがってくる。

※もし資料に誤り等ございましたら、「career-ask@slogan.jp」までご連絡いただけますと幸いです。

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求められるビジネス能力はどのように定義できるか?

CFOやCTOなど、専門能力がわかりやすいキャリアについては、そのキャリアパスやケイパビリティ(能力)を定義しやすい。一方で、COOのようなビジネスサイドのキャリアとなると、そのケイパビリティの一般化が困難になる。それはなぜか?

プロノバ・岡島悦子さんのnoteにもあるように、経営ボードメンバーに求められるケイパビリティは5つある。

■経営チームに必要な能力(ケイパビリティ)

5種類あるが必ずしも1:1対応でないので5人が必要とは限らない。その意味で()書きのCxOの所にはCOO? などと記載している。

➀歩く理念体現者(CEO)

同社が実現したい世界観、同社の創出付加価値実現方法を、発信し続ける人。未来仮説、顧客の痛み、業界の歪み等がありありと見えていて常人が無理と思うことこそにチャンスがあると信じる人。

②事業戦略開発者(CSO?)

ビジョンを実現するため、同社の強み(技術力、営業力、顧客基盤、ブランド等)を駆使した経営戦略を構築し、ビジネスモデルを構築する人。中期経営計画、予算策定者。

③組織戦略開発者(COO?)

事業戦略を実現するために必要な組織能力を規定し、最適な7S※2を設計し、不足分の組織開発をする人。事業戦略の実装環境を整備し、各部署のKPIを決定し、支援、モニタリングし、P/L責任を持つ人。

④経営資源調達者(ヒト)(CHRO?)

組織戦略実装に必要な人材を内部外部調達する人。

⑤経営資源調達者(カネ)(CFO?)

事業戦略、組織戦略実装に必要な資金を調達する人。主に資本市場と対話し、株主、株主候補の期待感・納得感を醸成する人。上記をモニタリングして、ステイクホルダーに説明責任を果たす人。

出典:『【経営チーム能力】ベンチャー企業にこそ優秀なCOOが必要?』| 岡島悦子note

※2 7S:7Sとは、企業戦略における、幾つかの要素の相互関係をあらわしたもの。マッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱した。ソフトの4S ①Shared value (共通の価値観・理念) ②Style(経営スタイル・社風) ③Staff(人材) ④Skill(スキル・能力)と、ハードの3S ⑤Strategy(戦略) ⑥Structure(組織構造) ⑦System(システム・制度)に分かれる。(参考:7Sとは・意味 | グロービス経営大学院

ビジネスサイドの役員・CxOのケイパビリティを定義しづらいのは、CEO/起業家の強み・ケイパビリティの個人差が大きいからだ。学生起業家もいれば、還暦が近いベンチャーの大御所もいる。それほどに起業家の保有する能力には幅がある。

「創業メンバーに必要なケイパビリティ」ー「起業家のケイパビリティ」=「他の経営メンバーに求められるケイパビリティ」

なので、企業のNo.2になるようなCOOなど、ビジネス側の役員に求められる能力にもバラツキがでる。これが、一般化しづらい理由だ。

SECTION 3/5

5通りの登用パターンを分析

とはいえ、一般化できません! 個別解です! といったら、大ブーイングなので、可能な限りの一般化を試みてみる。

まず、CxOや役員になるための登用パターンは5通りある。ここでいうCxO・役員とは、取締役、執行役員、CxOというタイトルのある方、一部VPoE(Vice President of Engineer)という肩書も拾える限りで分析の対象として拾った。なお社外取締役は、分析の対象から外している。

①共同創業

起業家、経営者と一緒に共同創業するケース。1人目の社員として入社するケースもこれに含んだ。

②職能、専門能力

既存の役員に足りない専門性を補填するために登用するケース。

③社内昇進

社内での実績が評価され、CxO・役員に登用されるケース。

④業界経験者

特定の業界に強いパイプや、業界経験を持つ人物を登用するケース。例えば、SaaSプロダクトを、大手の金融機関に導入していきたいが、新規でテレアポして顧客獲得するのも難しいので、金融業界のキーパーソンをボードメンバーに迎え入れるなど。

⑤M&A

企業を買収し、その買収先の経営者・役員が買収元の企業の役員に登用されるケース。

もちろん、はっきりとタイプ5! と割り切れないケースもあるが、入社年度や、役員就任時の時期、経営者の経歴などから上記を分類した。

「すごいベンチャー100」に掲載されている企業には289名のCxO・役員が存在するが、そこからCEO・代表取締役を除いた182名の登用パターンは、下記の通りだ。

さらに、そこからビジネスサイドのCxO・役員の登用パターンに絞ってみると下記のとおりになる。

まあ、当たり前なのだが、「共同創業」することでCxOになる、という割合が高い。ただ、締めくくりが「よし、じゃあ起業しよう!」では、あまりにも乱暴な結論である。

気になるのは、後者のグラフの「②職能、専門能力:29.3%」「③社内昇進:9.8%」だ。「④業界経験者:7.6%」については、そもそも業界のキーパーソンなので、出来上がったキャリアだ。「⑤M&A:2.2%」にしたって、買収される前にも経営者だったので、あまり参考にならない。

なので、起業や共同創業でもしない限りは、「どうやって職能、専門能力を獲得するか?」「どうすれば社内で役員まで昇進できるのか?」が多くのベンチャーパーソンの関心事になる。

SECTION 4/5

じゃあ、どうしたらCxOになれるのか?

経歴はネット上にある。しかし、どうキャリアを考えて転職先を選んだのか。入社してからどのように社内での信頼を獲得したのか。そんな実際の物語は、オンライン上には落ちていない。そこで、「どうやって職能、専門能力を獲得したのか」「どうすれば社内で評価され、役員まで昇進していったのか?」を実際にインタビューして回った。

セールスやマーケティングなど職能のバックグラウンドや、出身業界も考慮しながら複数人にインタビューをした結果、そして僅かばかりの私の経験もあわせて、共通して見えてきたことがあった。プラベートな情報もあるので、具体的なことはここに書くことは難しいが、それは多少なりとも下記のような経験や、環境があったということだ。

  1. 経営者・起業家との相性の良さ
  2. 経営トップと自分のあいだに誰がいるのか
  3. イシューとの出会い
  4. バリューチェーン全体への職能の拡張
  5. ラーニングモンスター
  6. コミットメントの瞬間

1. 経営者・起業家との相性の良さ

職能と経験を獲得するためには、当たり前だが出来ないことに手を出さなければならない。そして、それはストレスが高いことだ。

では、なぜそれでも頑張るのか、頑張れるのか。その大きな理由の一つが起業家、経営トップとの相性の良さだ。この人と一緒なら頑張りたい、その動機は馬鹿にできない。

経歴が優れているから、優秀そうだから。それも大事かもしれないが、人間性を無視してはならない。本当に会社の経営がヤバくなったとき、その人と一緒に乗り越えたいと思えるかが重要だ。

2. 経営トップと自分のあいだに誰がいるのか

いくら頑張ったって、自分と同じ専門性を持っているメンバーや役員がいるなら、あなたがCxO・役員にあがれる可能性は低い。なので、あなたの出自やコアな職能がボードメンバー(もしくは上位階層にいる既存社員)と被っていないかは確認したほうがよい。

ロールモデルとして、見て学ぶには良い環境かもしれないが、その会社で追い抜く(もしくはスイッチする)には、そこそこの労力と運が必要になってくる。

3. イシューとの出会い

キャラが被っていないとはいえ、入社後すぐに役員登用されるケースは稀だ。なので、三千人将になるのに「函谷関の戦い」が必要だったように、頭角を表す戦場が必要だ。

それは経営や事業にとっては重要だが、まだ未着手なイシューとの出会いだ。企業としては大事なのだが、まだ誰も気づいていない、専任がいない、そんな課題と出会うことだ。売上をあげる、そんなことは誰だってわかっている。問題はその構造だ。集客が問題なのか、チャーンレートが問題なのか。いま目の前にあるビジネスを開花させるイシューは、まだ議論のテーブルに上がっていないかもしれない。さあ、イシューに目覚めよう。

4. バリューチェーン全体への職能の拡張

特定のイシューへの取り組みをきっかけにバリューチェーン全体に土地勘を広げていくことが大切だ。CxO・役員を目指すというわけなので、少なくともセールスやマーケティングなどの機能単位で全体感がなくてはならない。

インサイドセールスからセールス全体へ、セールスからセールスファネル全体へ「何に取り組むべきか」をビジネスの全体像のなかから、ボトルネックを発見して除去できるようにならなければならない。そのプロセスのなかで、事業・組織への当事者意識が広がり、結果として職能が拡張していく。

5. ラーニングモンスター

良質な課題に出会っても解決できなければ意味がない。イシューを見つけたなら、解くしかない。バリューチェーン全体に働きかけるためにも、担当領域の外にフィードバックするためには、最低限の共通言語がなくてはならない。

そこで大事なのは学習だ。誰しもが驚くようなインプット、学習期間を過ごしている。「海外の書籍まで読み尽くした」「SEOを勉強するために、自分でメディアをつくった」など、テーマは様々だが、期待を上回るパフォーマンスを発揮するには、兎にも角にも一線を画した学習の化け物になるしかない。

さっさと腹をくくり、ページをめくろう。手を動かそう。すぐに問題は解けないかもしれない、ただ学ばなければ一生解けない。

6. コミットメントの瞬間

誰しもが、卓越した成果を上げるとき、そこには覚悟を宿している。ただ問題は「どうすれば覚悟が定まるか」だ。多くのケースでは、覚悟は与えられたり、逃げ場がなくなってマインドがセットされたり、そうやって受動的に育まれることも多い。なにか分かりやすい転機があったり、きっかけとなるエピソードがあったりしたらラッキーだ。

それは事業のピボットや、資金調達のタイミングかもしれないし、誰かの離職かもしれない。会社が大きく変化していくタイミングで、自分に逃げ道をつくらないことだ。そうするためには、言葉に出して、経営者に届けてみるといい。大事なのは、心に決めることじゃない、環境を変えることだ。

トップに対して啖呵を切れば、もうやるしかなくなる。そうすると朝起きる時間も変われば、日々の過ごし方も変わってくる。仕事のゴールが強制的に変わったからだ。覚悟が定まらなければ言霊にするといい。周囲の環境もゴールに向けたものへ自然と変わっていくだろう。

SECTION 5/5

次なる人材輩出企業はどこか?

こうやって多くのCxOや役員の経歴を調べていくと、「人材輩出企業」とはなにか? ということを考えてみたくなる。注目すべきは、時代ごとに企業の顔ぶれが変わっているということだ。

90年代:リクルート、インテリジェンス、アンダーセンコンサルティング

00年代:楽天、サイバーエージェント、サイバード

10年代:グリー、ディー・エヌ・エー

20年代:SaaSマフィア??

どこかが廃れていくというよりは、急成長する新産業から、新しいリーダーたちが生まれているということである。少しずつ、SaaS界隈出身の起業家たちが頭角をあらわしていることに、今後は注目が集まっていくのではなかろうか。

とはいえ、変わらないカルチャーのようなものはある。フランスに住めばよい絵が描ける、アメリカにいけば夢をつかめると思えるように、起業家や経営人材を育てる会社の空気のようなものは存在する。

今回リストを眺めていて驚いたのは、ABEJA出身のCOOの多さだ。100の中の2名だが、母集団の少なさから考えると、驚異的な確率なんじゃないだろうか。きっと、よい経営メンバーのもとには、よい経営人材が育つ環境がある。またガイアックス、エス・エム・エスのマフィアたちも依然として骨太だ。上場したアデュッシュ、大型調達を実施したフォトシンスをはじめ、今回のリストにもガイアックス出身者が名を連ねる。エス・エム・エスは、マフィアのマフィアまで登場している。エス・エム・エス出身者が創業したホワイトプラス出身の役員。なんと孫の代まで血を継いでいる。そんな系譜もいつしか研究してみたい。

さてさて、どんどん長くなってきたので、そろそろまとめに入ろう。

  • ボードメンバーのケイパビリティは5つ
  • ビジネスサイドのCxO・役員のケイパビリティは起業家に依存する
  • 「共同創業」でないなら、「尖った専門能力を磨いて」「社内昇進」を目指す
  • 6つの環境や方向性を意識してキャリアを歩むこと

キャリアはどこまでいっても「個別解」かもしれない。ただ、少なからず共通する方向性や道筋はあるように思える。それはベンチャーというカテゴリーでも同様だ。ベンチャーのCxOを目指すみなさまへ、これが僅かばかりでもお役に立てば幸いだ。


※本記事は、2020年10月にGoodfind Careerより公開された、「【ベンチャー100社の資料公開】30代CxOを目指す『本気のキャリア論』」(note掲載記事)を加筆修正、転載したものです。

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