COLUMN
【Goodfind創業者】優良成長企業の見分け方
これから始まる長いキャリア。皆さんにとっての「良い会社」はどこに注目して探せば良いのでしょうか。事業内容?売上?経営陣の経歴?──どれも正解ではありません。本記事では、14年間にわたり多くの企業をみてきたGoodfind創業者の伊藤が、真の優良成長企業を見分けるヒントをお伝えします。
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本当の意味での「良い会社」は意外と少ない?
世界一の投資家と言われるウォーレン・バフェット氏の言葉で「愚か者でも経営できるビジネスに投資をしなさい。なぜなら、いつか必ず愚かな経営者が現れるからだ」という言葉があります。彼は投資先の企業に求める条件の一つに、「経営者が愚かでも崩れないほどの参入障壁(経済的な堀)が高いこと」を挙げています。
しかし、自分が働く先である企業と投資先としての有望な企業とは必ずしも同じではありません。財務的なパフォーマンスは申し分なくとも、働く場所としては逃げ出したくなる会社もあるでしょう。
「良い会社」の捉え方は様々ありますが、皆さんの時間を投じるべき「優良であり、かつ成長している企業」は思っているほど多くはありません。個人的には、大企業、中小企業など規模を問わず、全体の1割も存在しないと思っています。今回は皆さんに、就職先を決める前に知っておいて欲しい、優良成長企業を見抜くポイントをお伝えします。
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多額の資金調達=高成長とは限らない
まず優良成長企業の前提条件としてみるべきは、「そもそも、その企業が成長しているか・今後成長しそうか?」という点です。皆さんも衰退している企業よりは成長している企業で働きたいと考えるでしょう。その企業が成長しているかどうかの判断自体はそう難しくなく、説明会やWebで既に目にしているであろう社員数や売上の伸び率などを調べれば、比較的傾向はつかめると思います。
売上ではなく社員数の伸びだけで判断する場合は注意が必要です。ここ5、6年は日本でも大型投資が珍しくなくなり、「創業3年で10億円の資金調達」や「創業7年目で総額100億円を超える資金調達を完了」などのニュースもよく目にします。毎年のように大型の資金調達をしている企業は、一見、事業に将来性があり成長しているから資金調達を実施しているように思えるでしょう。
しかし実は、売上が伸びておらずキャッシュフローが回っていないがために、たびたび資金調達を繰り返しているというケースもあるのです。そのため、「資金調達額=企業の成長率が高い」と安易に考えないほうが安全です。
背景にあるのは、以前と比べると日本国内においても数十億円規模の資金調達が可能になったことです。2000年あたりを起点に、多くのインターネットベンチャーが興され、東証マザーズも開設されました。
このベンチャー企業の第一世代を創った人たちがEXIT※︎1して、エンジェル投資家やシリアルアントレプレナーとなり、第二世代・第三世代につながる投資家・起業家の層が厚みを増してきています。そうしたエコシステムの充実とともにスタートアップに資金が向かうような流れが拡大してきました。
※1 EXIT:創業者やファンドが株式を売却し、利益を手にすること
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才能の獲得にどれぐらい貪欲か
成長している企業ならどこでも良いかというと、そうではないでしょう。成長はしているが働く社員は不満だらけでハラスメントも横行。そんな職場は嫌ですよね。成長しているという事実に加え、「優良である」という要素も重要になります。ただ、その企業が優良であるかどうかについては、成長企業のようにわかりやすい尺度で表すのは難しいです。その中で敢えて挙げるとしたら、優良な企業は共通して次の要素を含んでいると考えています。
- 年齢や経験に関係なく人材に期待している
- メンバーに多様性・流動性がある
- 奥行きの深い世界観・価値観を掲げている
世の中には、優秀なのは経営者だけで、現場には優秀な人材は必要ではないという企業が意外とあります。一部の優秀な人が経営を担い、現場はとにかく仕事を回すだけの人でいいという経営思想を持っている経営者がいるのです。そういう企業にやる気のある新卒が入社すると、活躍する機会がなかなか巡ってこないことになり、とても不幸です。
例えば、「有名な外資コンサルティングファームに内定してる学生が御社に入りたいと言ってきたら、どう思いますか?」と経営者に聞くとします。若い才能に期待している企業であれば、「もちろん採用したいですよ」となるでしょう。しかし、中には「そういう人がうちに来ても、任せる仕事はないし、すぐやめちゃいそうだね。コンサルファームに行った方がいいんじゃないですか」なんて言う経営者も実は多くいます。
つまり逆に言えば、優秀な新卒を採用することに積極的な会社は、それだけ新入社員や若手への期待が大きく、年齢や経験に関係なく活躍のチャンスを掴める可能性も高いと言えるでしょう。
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中途採用や若手の採用を継続しているか
次に、「多様性のあるメンバーを採用しているか?」ということにも、着目してほしいと思います。
ここ数年、政府の成長戦略としても企業に中途採用を積極的に行うよう促しているにもかかわらず、未だに中途採用を全く実施しない企業は意外とあります。中途採用をしない企業は、企業風土に流動性がなく、モノカルチャーになる可能性が高いです。
中途採用を行わない理由として、中途採用した人がカルチャーフィットしないというのを挙げる企業がありますが、それだけ社会とズレた会社であると自ら宣言しているようなものです。そうやってメンバーが固定されて入れ替わらないと、だんだん世の中とズレてくるケースが多いのです。
卑近な例にすぎませんが、社内の飲み会の幹事は必ず店の地図を紙に印刷して人数分用意することになっている会社。今はスマホで簡単に調べられるのに、それが会社の風習だからという理由で若手にもずっと続けさせているのは社会とズレていますよね。そして、それが非効率だと上の世代に指摘できない風土自体もダメだと思います。
メンバーに大きく流動性があり、新しい人がどんどん入ってくるような企業では、世の中に合わせて環境が常にアップデートされていきます。この観点で言えば、平均年齢が40代を超えてくると、若手人材が相対的に少なくなって健全に環境変化が起こっていない状態である可能性が高く、危険信号かもしれません。
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追求したいと思える世界観をもっているか
最後に、今現在の事業内容よりも、「奥行きが深く、追求しがいのある世界観・価値観をもっているか?」ということが重要です。
事業内容は拡張したり進化していくものですし、現時点の事業はマーケットに合わせて入りやすいエントリーの仕方をしているに過ぎない可能性もあります。大切なのは、その先にあるつくりたい社会像や生み出したい価値についての考え方・ビジョンを持っているかどうかです。
さらに、企業は優秀な人材を巻きこみながら成長していく必要があるので、「実現したいミッションがあり、その壮大なミッションを叶えるための手段として今はこの事業を手がけている」という形で事業計画を説明できる企業の方が、メンバー募集の観点でも有利でしょう。そして抽象度の高いミッションを明確に掲げることの効用は、その企業の成長性に影響を及ぼすだけでなく、メンバー一人ひとりがそのミッションに共感することでより意欲的・主体的に働くことができるということにあると思います。
つまり、その企業の事業内容に興味があるかないかではなく、あなた自身がその会社のミッションを本気で追求したいと思えるかどうかが重要なポイントなのです。
例えば、看護師の人材紹介サービスの会社があるとします。もしその会社が「看護師紹介会社」と自己定義していても、なかなか多くの人に働きたい会社と思ってもらいにくいかもしれません。しかし、「人手不足に悩んでいる病院に看護師を紹介することで、医療の地域間格差を是正する会社」と定義すると、意義に共感したより優秀な人材が集まる可能性が高まります。
さらには、「医療を改善して病気で苦しむ人を一人でも減らす社会」という世界観まで提示できれば、実現に必要な事業展開に奥行きが出ますし、働くフィールドとしての魅力も高まります。そして当然のことですが、このミッションを言葉のレトリックとして額縁に入れて飾るだけではなく、経営者をはじめとしたメンバー一人ひとりが本気で追求していることが肝心です。
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一番確実なのは、会社の中に入って観察すること
今回お伝えしたポイントは、あくまでこれまでの私の経験から感じたことなので、必ずしもすべての人・企業に当てはまるわけではなく、機械的に項目を洗い出しマルバツをつけて判断するための観点でもありません。
データを調べたり説明会で話を聞いたりした上で、最終的に大切にして欲しいことは、実際に会社の中を見せてもらい、自分の目で確認することです。特に、ベンチャー・スタートアップなどの、Web上で得られる情報があまり多くない小さな会社に入るときには、入社前に「インターンとして働いてみたい」と言って会社の中に入り、雰囲気を感じてみることをおすすめします(それで断られるなら、会社の中身を見せたくない理由があるか、もしくは、そもそもあなたを採用したいとそれほど思っていないかのどちらかかもしれません)。
本記事が、これから始まるキャリアのファーストステップとなる大きな決断を控えた皆さんにとって、優良成長企業を見極めるための一助となれば幸いです。
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